272 / 297
260『ミカンの枝』
しおりを挟む
銀河太平記
260『ミカンの枝』 胡盛媛中尉
「そうか……そういえば、日本語で考える方が楽かもしれない……」
目覚めた森之宮殿下には「あなたは日本人なのですよ」ということだけを伝えた。
乗っていた内火艇から救助され、目覚めた時は周囲が中国語を話していたので、殿下は自然に中国語で受け答えされたらしい。完ぺきな北京語だったので輸送船の乗員は漢明人に違いないと、北京語で応対した。
衝突の衝撃で壊れてしまったハンベは日本製の高級品。漢明で日本製の高級品を使っているのは党幹部か政府の要人、あるいは財閥のトップクラス。そういう者たちはも普段は漢明製を使っているんだけど、ごくプライベートな時は日本製に付け替える。日本製は漢明の情報カメラやハンベには反応しないからね。
むろん警察や情報部とかの官憲や幹部級の軍人は日本製でも読み取れるハンベを持っているけど、輸送船は民間の船なのでそういうハンベを装着している者はいないし、船にも、そういう装置は無い。
「林(リン)さんはどうして分かったんですか?」
額面通りに庭仕事を始めた林さんに聞いてみる。
「戦前、閣下が軍人だったころにね、日本の皇族のお相手をしたことがあるんだ……その時の皇族の方の雰囲気に通じるものがあって、船のAIに調べさせたらドンピシャ。放っとくと他の乗員も気づいてしまうんで、すぐに大統領府に知らせたというわけさ」
ウウ……林さんはなかなかの人物だ。軍や宙警察にではなく大統領府に連絡するなんて。
「軍や宙警に通報しても船の修理代は出ないしね。この航海で定年だからうっちゃっておいてもよかったんだけど、それじゃ、後任の者も会社も困っちまうから……それに、乗員の中には火星のマッパ病を気に掛ける奴もいたし、火星のマス漢は漢明の政府よりも信用がおけない……あ、このミカンは摘果しないと」
パチン パチン
「あ、実が付いてますよ!」
林さんは、立派な実の付いているミカンの枝を惜しげもなく切っていく。
「こっちに小さい実がついてるのがあるでしょ、こっちの方がもっと美味しい実がなるんだよ。そこに栄養を送ってやるために、この程度のは摘んじゃうだ。枝にだって水分も栄養もいっちゃうから、枝ごとバッサリとね……」
パチン
「それ、もらってもいいですか?」
「いいよ、ジャムにでもする?」
「アハハ、そういうの苦手だから、殿下のお部屋に活けて差し上げようと思います」
「ああ、それはいい。柑橘系は気分をリラックスさせて脳神経にもいいというからね」
「はい、理屈は分かりませんけど、いい香りは、きっと体にもいいです」
「ハハ、お母さんのお仕込かな?」
「あ、わたしに母はいません」
「え?」
「父が孤児だったわたしを引き取って育ててくれたんです」
「あ、ごめん、余計なことを言ってしまったなあ」
「いいえ、では、頂いていきます」
「自分も後でお部屋に行くよ」
「はい」
殿下にお見せすると、こんなやりとりになった。
「もう一つ思い出しました」
「え、何をですか(°꒳° ) ?」
「僕はミカンが大好きな日本人だったようです(^_^;)」
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
260『ミカンの枝』 胡盛媛中尉
「そうか……そういえば、日本語で考える方が楽かもしれない……」
目覚めた森之宮殿下には「あなたは日本人なのですよ」ということだけを伝えた。
乗っていた内火艇から救助され、目覚めた時は周囲が中国語を話していたので、殿下は自然に中国語で受け答えされたらしい。完ぺきな北京語だったので輸送船の乗員は漢明人に違いないと、北京語で応対した。
衝突の衝撃で壊れてしまったハンベは日本製の高級品。漢明で日本製の高級品を使っているのは党幹部か政府の要人、あるいは財閥のトップクラス。そういう者たちはも普段は漢明製を使っているんだけど、ごくプライベートな時は日本製に付け替える。日本製は漢明の情報カメラやハンベには反応しないからね。
むろん警察や情報部とかの官憲や幹部級の軍人は日本製でも読み取れるハンベを持っているけど、輸送船は民間の船なのでそういうハンベを装着している者はいないし、船にも、そういう装置は無い。
「林(リン)さんはどうして分かったんですか?」
額面通りに庭仕事を始めた林さんに聞いてみる。
「戦前、閣下が軍人だったころにね、日本の皇族のお相手をしたことがあるんだ……その時の皇族の方の雰囲気に通じるものがあって、船のAIに調べさせたらドンピシャ。放っとくと他の乗員も気づいてしまうんで、すぐに大統領府に知らせたというわけさ」
ウウ……林さんはなかなかの人物だ。軍や宙警察にではなく大統領府に連絡するなんて。
「軍や宙警に通報しても船の修理代は出ないしね。この航海で定年だからうっちゃっておいてもよかったんだけど、それじゃ、後任の者も会社も困っちまうから……それに、乗員の中には火星のマッパ病を気に掛ける奴もいたし、火星のマス漢は漢明の政府よりも信用がおけない……あ、このミカンは摘果しないと」
パチン パチン
「あ、実が付いてますよ!」
林さんは、立派な実の付いているミカンの枝を惜しげもなく切っていく。
「こっちに小さい実がついてるのがあるでしょ、こっちの方がもっと美味しい実がなるんだよ。そこに栄養を送ってやるために、この程度のは摘んじゃうだ。枝にだって水分も栄養もいっちゃうから、枝ごとバッサリとね……」
パチン
「それ、もらってもいいですか?」
「いいよ、ジャムにでもする?」
「アハハ、そういうの苦手だから、殿下のお部屋に活けて差し上げようと思います」
「ああ、それはいい。柑橘系は気分をリラックスさせて脳神経にもいいというからね」
「はい、理屈は分かりませんけど、いい香りは、きっと体にもいいです」
「ハハ、お母さんのお仕込かな?」
「あ、わたしに母はいません」
「え?」
「父が孤児だったわたしを引き取って育ててくれたんです」
「あ、ごめん、余計なことを言ってしまったなあ」
「いいえ、では、頂いていきます」
「自分も後でお部屋に行くよ」
「はい」
殿下にお見せすると、こんなやりとりになった。
「もう一つ思い出しました」
「え、何をですか(°꒳° ) ?」
「僕はミカンが大好きな日本人だったようです(^_^;)」
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「日本人」最後の花嫁 少女と富豪の二十二世紀
さんかく ひかる
SF
22世紀後半。人類は太陽系に散らばり、人口は90億人を超えた。
畜産は制限され、人々はもっぱら大豆ミートや昆虫からたんぱく質を摂取していた。
日本は前世紀からの課題だった少子化を克服し、人口1億3千万人を維持していた。
しかし日本語を話せる人間、つまり昔ながらの「日本人」は鈴木夫妻と娘のひみこ3人だけ。
鈴木一家以外の日本国民は外国からの移民。公用語は「国際共通語」。政府高官すら日本の文字は読めない。日本語が絶滅するのは時間の問題だった。
温暖化のため首都となった札幌へ、大富豪の息子アレックス・ダヤルが来日した。
彼の母は、この世界を造ったとされる天才技術者であり実業家、ラニカ・ダヤル。
一方、最後の「日本人」鈴木ひみこは、両親に捨てられてしまう。
アレックスは、捨てられた少女の保護者となった。二人は、温暖化のため首都となった札幌のホテルで暮らしはじめる。
ひみこは、自分を捨てた親を見返そうと決意した。
やがて彼女は、アレックスのサポートで国民のアイドルになっていく……。
両親はなぜ、娘を捨てたのか? 富豪と少女の関係は?
これは、最後の「日本人」少女が、天才技術者の息子と過ごした五年間の物語。
完結しています。エブリスタ・小説家になろうにも掲載してます。
底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~
阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。
転生した先は俺がやっていたゲームの世界。
前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。
だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……!
そんなとき、街が魔獣に襲撃される。
迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。
だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。
平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。
だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。
隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

H.I.S.A.H.I.T.O. みだりにその名を口にしてはならない小説がある。
あめの みかな
ファンタジー
教会は、混沌の種子を手に入れ、神や天使、悪魔を従えるすべを手に入れた。
後に「ラグナロクの日」と呼ばれる日、先端に混沌の種子を埋め込んだ大陸間弾道ミサイルが、極東の島国に撃ち込まれ、種子から孵化した神や天使や悪魔は一夜にして島国を滅亡させた。
その際に発生した混沌の瘴気は、島国を生物の住めない場所へと変えた。
世界地図から抹消されたその島国には、軌道エレベーターが建造され、かつての首都の地下には生き残ったわずかな人々が細々とくらしていた。
王族の少年が反撃ののろしを上げて立ち上がるその日を待ちながら・・・
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる