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243『怪我人治療と蜂形ドローン』
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銀河太平記
243『怪我人治療と蜂形ドローン』孫大人
テムジン部隊の馬は先祖から受け継いできたリアル馬だ。
巡行速度25キロ 最大戦速65キロ 航続距離45キロ
軍用的表現をすれば、まあ、こんなところで並の馬と変わらず。大方の軍隊で使っているオートホースの足元にも及ばない。
だが、テムジンの馬にはブースターが付いていて、瞬間的には150キロを超える速度が出る。馬の運動神経と連動させているので、高速移動や方向転換をしても馬に負担はかからならない。馬は自分の意識と力で飛んでいると思っている。近接戦闘ではOH(オートホース)でも太刀打ちできないだろう。
敵は、易々と接近して撃つなり切るなり自由に攻撃できるが、攻撃した瞬間にテムジンの馬は目の前から消えてしまう。
実際はブースターを使って数メートルから十数メートル、馬との呼吸が合っていれば百メートル以上を瞬時に移動。敵からは消えたように見えるのだ。
敵がオートホースに乗ったロボットでも、このブースト移動を数回続ければ演算速度が間に合わずに撃破されてしまう。
テムジンは千騎余りの部下と共に、このブーストを使って西の戦場を目指している。ハルハ川のロシア軍を手玉に取ったあと、テムジンは眼前の敵が陽動であることを悟り、全軍に移動を命じた。50秒普通の並足で走らせ、残りの10秒でブーストをかける。
50秒の並足も10秒のブーストも同じ距離を駆けるので、普通のリアル馬の倍の速度が出ていることになる。
時々、テムジンは右手を上げ、手信号で最後尾の10騎に殿(しんがり)を命じる。10騎は5騎ずつに分かれ、追撃して来た敵をワイヤーで引っかけ、その都度数十騎の敵を人馬共々撃破する。敵は、その度に捜索と態勢の立て直しに追われ、なかなか追いつくことができない。
五度目にゴルジンが殿に出た時は一気に200騎も撃破して、敵は追撃を諦めた。
「なんだか自分の目で見たようね」
春鈴が馬乳酒と乾パンを配りながら冷やかす。やっと怪我人の手当てが山を越えたようだ。乾パンを配り終わって、最後の一人の包帯を巻きなおしてやっている。
「自分の目と同じだぞ」
蜂形ドローンを充電してやりながら文句を言う。
「儂だって、あのブースト馬があれば十分に付いていけるぞ」
ワハハハハ
明るい笑い声が湧き上がる。
「大人、そりゃ無理だって」
腕を吊った若いのが目をへの字にして笑う。
「儂だって、満州馬賊の頭目なんだぞぉ」
ワハハハハ
「大人、あんたの商売人としての腕は認めるよ。でも、馬にかけちゃ世界で俺たちの右に出る者はいねえよ」
「そうだよ、孫大人。ブースト馬を使いこなすのはモンゴル人でも早くて五年、普通でも八年はかかる」
「俺は十年かかったぞ」
「だから怪我が一番ひどい」
「うっせえ!」
ワハハハハ
儂は、落伍したテムジンの部下を拾いながらテムジンを追いかけている。
テムジンの部下とて万能ではない。ハルハ川で七人、途中の殿で脱落した者を二人拾った。
戦死者が八名出ている、戦死者は遺品と少しの遺髪をとって、その場で葬った。
行方不明が数名いるそうだ。おそらくは生きてはいないだろうが「死んだ」とは言わない。この点も満洲馬賊と変わらない。ただ、馬の技術については馬賊はモンゴルに敵わない。
「大人、そんなもので長距離の偵察とかできるのかい?」
「ああ、お前たちの馬といっしょさ。まあ、普通に使うなら、儂が馬に乗る程度にはできるだろうがな」
「見ていいかい?」
「ああ、同期してやるから、自分で使ってみ」
「うん」
ハンベを操作して蜂形ドローンと同期してやる。
「おお、180度の3Dだ……」
ブ~~ン
「思った方向に飛んでいく」
「ああ、見たいと念じたら固定される」
ブ~~ン
「「「「おお!」」」」
ハンベの画面が春鈴の尻のアップで固定された。
「ちょっと、どこ見てんのよ(ꐦ°᷄д°᷅) !」
バシ!
イッテエエエ(˚>ᯅ<) !
春鈴が包帯を巻き終わった腕をシバキタオシて、我々はテムジンを追いかけた。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
243『怪我人治療と蜂形ドローン』孫大人
テムジン部隊の馬は先祖から受け継いできたリアル馬だ。
巡行速度25キロ 最大戦速65キロ 航続距離45キロ
軍用的表現をすれば、まあ、こんなところで並の馬と変わらず。大方の軍隊で使っているオートホースの足元にも及ばない。
だが、テムジンの馬にはブースターが付いていて、瞬間的には150キロを超える速度が出る。馬の運動神経と連動させているので、高速移動や方向転換をしても馬に負担はかからならない。馬は自分の意識と力で飛んでいると思っている。近接戦闘ではOH(オートホース)でも太刀打ちできないだろう。
敵は、易々と接近して撃つなり切るなり自由に攻撃できるが、攻撃した瞬間にテムジンの馬は目の前から消えてしまう。
実際はブースターを使って数メートルから十数メートル、馬との呼吸が合っていれば百メートル以上を瞬時に移動。敵からは消えたように見えるのだ。
敵がオートホースに乗ったロボットでも、このブースト移動を数回続ければ演算速度が間に合わずに撃破されてしまう。
テムジンは千騎余りの部下と共に、このブーストを使って西の戦場を目指している。ハルハ川のロシア軍を手玉に取ったあと、テムジンは眼前の敵が陽動であることを悟り、全軍に移動を命じた。50秒普通の並足で走らせ、残りの10秒でブーストをかける。
50秒の並足も10秒のブーストも同じ距離を駆けるので、普通のリアル馬の倍の速度が出ていることになる。
時々、テムジンは右手を上げ、手信号で最後尾の10騎に殿(しんがり)を命じる。10騎は5騎ずつに分かれ、追撃して来た敵をワイヤーで引っかけ、その都度数十騎の敵を人馬共々撃破する。敵は、その度に捜索と態勢の立て直しに追われ、なかなか追いつくことができない。
五度目にゴルジンが殿に出た時は一気に200騎も撃破して、敵は追撃を諦めた。
「なんだか自分の目で見たようね」
春鈴が馬乳酒と乾パンを配りながら冷やかす。やっと怪我人の手当てが山を越えたようだ。乾パンを配り終わって、最後の一人の包帯を巻きなおしてやっている。
「自分の目と同じだぞ」
蜂形ドローンを充電してやりながら文句を言う。
「儂だって、あのブースト馬があれば十分に付いていけるぞ」
ワハハハハ
明るい笑い声が湧き上がる。
「大人、そりゃ無理だって」
腕を吊った若いのが目をへの字にして笑う。
「儂だって、満州馬賊の頭目なんだぞぉ」
ワハハハハ
「大人、あんたの商売人としての腕は認めるよ。でも、馬にかけちゃ世界で俺たちの右に出る者はいねえよ」
「そうだよ、孫大人。ブースト馬を使いこなすのはモンゴル人でも早くて五年、普通でも八年はかかる」
「俺は十年かかったぞ」
「だから怪我が一番ひどい」
「うっせえ!」
ワハハハハ
儂は、落伍したテムジンの部下を拾いながらテムジンを追いかけている。
テムジンの部下とて万能ではない。ハルハ川で七人、途中の殿で脱落した者を二人拾った。
戦死者が八名出ている、戦死者は遺品と少しの遺髪をとって、その場で葬った。
行方不明が数名いるそうだ。おそらくは生きてはいないだろうが「死んだ」とは言わない。この点も満洲馬賊と変わらない。ただ、馬の技術については馬賊はモンゴルに敵わない。
「大人、そんなもので長距離の偵察とかできるのかい?」
「ああ、お前たちの馬といっしょさ。まあ、普通に使うなら、儂が馬に乗る程度にはできるだろうがな」
「見ていいかい?」
「ああ、同期してやるから、自分で使ってみ」
「うん」
ハンベを操作して蜂形ドローンと同期してやる。
「おお、180度の3Dだ……」
ブ~~ン
「思った方向に飛んでいく」
「ああ、見たいと念じたら固定される」
ブ~~ン
「「「「おお!」」」」
ハンベの画面が春鈴の尻のアップで固定された。
「ちょっと、どこ見てんのよ(ꐦ°᷄д°᷅) !」
バシ!
イッテエエエ(˚>ᯅ<) !
春鈴が包帯を巻き終わった腕をシバキタオシて、我々はテムジンを追いかけた。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
朱 元尚 大佐 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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