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219『納骨の旅・6・陛下といっしょに』
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銀河太平記
219『納骨の旅・6・陛下といっしょに』ミク
そうねえ…………
恩師の納骨に合わせてお参りに来たとお話すると、少女のように小首をかしげてお考えになる陛下。
「うん、あの時は元帥と一緒に戦ってくださったから……うん、不自然じゃないわ。いっしょに参拝しましょう(^ー^)」
どこかココちゃん(心子内親王)を思わせる笑顔になって、いっしょの昇殿参拝をさせてくださった。
「今日はね、児玉元帥の命日なの」
あ……
今日は、いくつかある終戦記念日でも例大祭でもないので、なんのためのご参拝かと思った。そうだ、今日はパルス症で亡くなった(機能停止した)元帥の命日だ。
元帥の元々の体は満州戦争で死んでいるけど、ロボットのJQにソウルをPI(パーフェクトインストール)させた。そのJQボディーの元帥もパルス症で限界が来て電脳が停止。名実ともに元帥の命が終わった日なんだ。
「頑固な人でねえ、亡くなる時に記念日とかの特別な日にはしないように言い残したの。一部にはお祀りして神社を造ろうという動きもあったんだけど『児玉神社はすでにある』って封じてしまって」
「児玉神社があるんですか?」
「山口と江ノ島にね、日露戦争の時の児玉大将がお祀りしてあるの」
「あ、そうなんですねぇ」
「ご先祖でも何でもないんだけどね、そうやって煙に巻いて派手なことはさせなかった。あ、宮司さまがおいでになったわ」
御式の時の上様を忍ばせる古代衣装の宮司さんがやってくると、そこからは陛下もわたしも無言で昇殿してお参りを済ませた。
「どうかしら、お時間があるのなら元帥の記念館、いっしょにどう?」
「は、はい、喜んで!」
おしのびのご参拝なので御料車でもなく天皇旗もつけていないので、わたしのような火星人でもごいっしょできる。こんな機会はもうないだろうし、アキバは諦めて朝霞駐屯地の記念館に御同行させていただく。
「お待ち申し上げておりました」
准尉のおじさんが普通の事業服で出迎えてくれる。
事前の連絡はしてあったんだろうけど、特別な出迎えではない。上様も、よく普通のナリで学校なんかに足を運ばれるので、少しリラックスできる。
「ここで、少しお待ちください」
通されたのは基地の応接室。
靖国ではすぐに参拝できたので、ちょっと意外。
「わたしたちは、一般の時間が終わってからになるの」
「ああ、そうですね!」
今日は元帥の命日だ、人がたくさん来ていてあたりまえ。そう広くもない記念館。お忍びとはいえ、大勢の一般の人たちに混じるのは憚られるだろう。
「道隆さんはお変わりなくて?」
「あ、今は……」
月面の勤務であることやパルス病の蔓延、マス漢との紛争のことなどをお話すると、眉を曇らせる陛下だった。
「そうだったのねぇ、扶桑は将軍が正面にお立ちになるから大変なのねぇ……落ち着いたら、ゆっくりお話がしたいわ。ココのことでもお世話になったし、その時は、他の卒業生の人たちも……どうしているのかしら、大石君、穴山君、それに、テル……あら、テルちゃんの苗字はなんだったかしら?」
「あ、平賀、平賀照です。いつまでたっても子どもみたいですから、先生たちも苗字で呼ぶことはなかったですし」
「あはは、そうね。でも、いまは大科学者でしょ。最近じゃパルス病のワクチンも作っちゃったし。そうよね、ネットでも平賀博士と出ていたのにね、あなたたち、第一印象がフレッシュだから、そのまま憶えて、なかなか上書きされないわ」
「アハ、恐縮です(^_^;)」
それから、火星や月での勤務のことやらをお話して、姉崎先生の話では「そう、大変な人生を歩んでこられたのね……それをちゃんとご供養して、でも、立派で素敵な教え子をお持ちになって、少し羨ましいですね」と締めくくられた。
それから准尉さんに付き添われて、モスボールされた児玉元帥に対面。
陛下とは姉妹で通りそうな美しい姿に見惚れ、その後は宮内庁の車で予約していたホテルに送っていただいた。
あくる日、羽田からシャトルに乗って、成層圏の母船に乗るまでアキバのあたりをずっと目で追ってしまった(^_^;)。
いつか、みんなと一緒に修学旅行のやり直しができたらいいなと思って、納骨の旅が終わった。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
219『納骨の旅・6・陛下といっしょに』ミク
そうねえ…………
恩師の納骨に合わせてお参りに来たとお話すると、少女のように小首をかしげてお考えになる陛下。
「うん、あの時は元帥と一緒に戦ってくださったから……うん、不自然じゃないわ。いっしょに参拝しましょう(^ー^)」
どこかココちゃん(心子内親王)を思わせる笑顔になって、いっしょの昇殿参拝をさせてくださった。
「今日はね、児玉元帥の命日なの」
あ……
今日は、いくつかある終戦記念日でも例大祭でもないので、なんのためのご参拝かと思った。そうだ、今日はパルス症で亡くなった(機能停止した)元帥の命日だ。
元帥の元々の体は満州戦争で死んでいるけど、ロボットのJQにソウルをPI(パーフェクトインストール)させた。そのJQボディーの元帥もパルス症で限界が来て電脳が停止。名実ともに元帥の命が終わった日なんだ。
「頑固な人でねえ、亡くなる時に記念日とかの特別な日にはしないように言い残したの。一部にはお祀りして神社を造ろうという動きもあったんだけど『児玉神社はすでにある』って封じてしまって」
「児玉神社があるんですか?」
「山口と江ノ島にね、日露戦争の時の児玉大将がお祀りしてあるの」
「あ、そうなんですねぇ」
「ご先祖でも何でもないんだけどね、そうやって煙に巻いて派手なことはさせなかった。あ、宮司さまがおいでになったわ」
御式の時の上様を忍ばせる古代衣装の宮司さんがやってくると、そこからは陛下もわたしも無言で昇殿してお参りを済ませた。
「どうかしら、お時間があるのなら元帥の記念館、いっしょにどう?」
「は、はい、喜んで!」
おしのびのご参拝なので御料車でもなく天皇旗もつけていないので、わたしのような火星人でもごいっしょできる。こんな機会はもうないだろうし、アキバは諦めて朝霞駐屯地の記念館に御同行させていただく。
「お待ち申し上げておりました」
准尉のおじさんが普通の事業服で出迎えてくれる。
事前の連絡はしてあったんだろうけど、特別な出迎えではない。上様も、よく普通のナリで学校なんかに足を運ばれるので、少しリラックスできる。
「ここで、少しお待ちください」
通されたのは基地の応接室。
靖国ではすぐに参拝できたので、ちょっと意外。
「わたしたちは、一般の時間が終わってからになるの」
「ああ、そうですね!」
今日は元帥の命日だ、人がたくさん来ていてあたりまえ。そう広くもない記念館。お忍びとはいえ、大勢の一般の人たちに混じるのは憚られるだろう。
「道隆さんはお変わりなくて?」
「あ、今は……」
月面の勤務であることやパルス病の蔓延、マス漢との紛争のことなどをお話すると、眉を曇らせる陛下だった。
「そうだったのねぇ、扶桑は将軍が正面にお立ちになるから大変なのねぇ……落ち着いたら、ゆっくりお話がしたいわ。ココのことでもお世話になったし、その時は、他の卒業生の人たちも……どうしているのかしら、大石君、穴山君、それに、テル……あら、テルちゃんの苗字はなんだったかしら?」
「あ、平賀、平賀照です。いつまでたっても子どもみたいですから、先生たちも苗字で呼ぶことはなかったですし」
「あはは、そうね。でも、いまは大科学者でしょ。最近じゃパルス病のワクチンも作っちゃったし。そうよね、ネットでも平賀博士と出ていたのにね、あなたたち、第一印象がフレッシュだから、そのまま憶えて、なかなか上書きされないわ」
「アハ、恐縮です(^_^;)」
それから、火星や月での勤務のことやらをお話して、姉崎先生の話では「そう、大変な人生を歩んでこられたのね……それをちゃんとご供養して、でも、立派で素敵な教え子をお持ちになって、少し羨ましいですね」と締めくくられた。
それから准尉さんに付き添われて、モスボールされた児玉元帥に対面。
陛下とは姉妹で通りそうな美しい姿に見惚れ、その後は宮内庁の車で予約していたホテルに送っていただいた。
あくる日、羽田からシャトルに乗って、成層圏の母船に乗るまでアキバのあたりをずっと目で追ってしまった(^_^;)。
いつか、みんなと一緒に修学旅行のやり直しができたらいいなと思って、納骨の旅が終わった。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
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