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160『主席代理』
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銀河太平記
160『主席代理』メグミ
ヨイチ准尉の機動車がニッパチを乗せてブンカ―を出るのと入れ違いに、中型小型のパルスボートが数十機入ってきた。
パルスボートには、世界中のボランティア……というと穏やかに聞こえるけど、要は志願兵や傭兵が乗っている。
「うまく考えたな」
サブが「胡同首領」のヘルメットを阿弥陀にして、口を尖らせる。
その横のマヌエリトは戦闘服でありながら、全身からナバホインディアンのオーラを出しまくって腕を組んでいる。
「え、なにがぁ?」
呟いたのがマヌエリトだったら、きちんと顔を向けて「なにがですか?」と丁寧に聞いている。
「だって、ボランティアたちの入港に合わせて潜航させて気配を消したんだろう。北回りで島の西の海に出れば軽石がいっぱい浮いてるから、それに紛らせてしまう。時間はかかるけど、黒潮反流が本土の近海まで連れて行ってくれる」
ウ……さすがは周温雷が主席代理に任命しただけのことはある。
「さあ、たまたまよ。それより、中華系はあんたが任されてるんだから、ちゃんとやらなきゃダメよ、胡同首領の肩書はダテじゃないんだから」
「うっせー、オレは出迎えと連絡専門、ほら、旗のドラゴンだって指は四本だ」
「え、あ、ほんと( ´艸`)」
「笑うな! オレも詳しくは分かんねえけど、主席代理の権威はよっく伝わるんだ」
「ごめんごめん」
「サブ、ここに立て」
マヌエリトが腕を組んだまま、手前の岩を示す。
「え、ここ?」
「背が高く見える」
「え、あ、ああ」
マヌエリトの指示は一発で聞く。
支持の中身が適切だし、たいてい主席代理の自分を立ててもくれるからだ。それに、ナバホインディアン大戦士の押し出しはハンパではない。
岩の上に立ってわたしよりは高くなったサブだけど、マヌエリトには首一つ分足りない。
それでも、背後にフートン主席代理の旗、後ろにわたしとマヌエリトが控えると偉いように見える。
フートン主席の周温雷は、パルスギ鉱が発見されるとサブを主席代理に任命して島を出た。
販路の開拓という名目だけど、本心は違う。
狙いは、わたしがココちゃんを火星に避難させたことに似ている。
主席という立場を利用されないためだ。
フートンは漢明系の者が多い、漢明が島に目を付けると、最初に働きかけてくるのがフートン。
フートンは周主席がよく治めていて、良きにつけ悪きにつけ周の提案や指示が無ければ動かない。
フートンの中には、わたしから見ても漢明の息のかかった者が入り込んでいる。でも、周は露骨な妨害工作でなければ放置していた。そういうファジーというか大ようなところが信頼を得るポイントになっていた。
しかし、漢明が真正面から島に目を向け始めると、あの手この手でフートンを抱き込みにかかる。あらぬ噂も立つ。
フートンを動かしたい漢明は周を、あるいは周の名前を利用する。
そのために、周は姿をくらませた。噂では、月の裏側で金の鉱脈を掘り当てたとか、アメリカでトラックの運ちゃんをやりながら次の手を考えているとか。
「すみませんでした、メグミさん!」
汗を拭きながら及川市長がやってくる。
かくいうわたしは、市長が間に合わない場合、代わって歓迎の挨拶をすることになっていた。
マヌエリトは口下手だし、サブは調子に乗ってなにを言い出すか分からないからね。
ボランティア=志願兵の受け入れは、毎回増えてくる。
この分では、次回からはうちの社長……いや、睦仁王にやってもらわなくてはならないだろうね。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
160『主席代理』メグミ
ヨイチ准尉の機動車がニッパチを乗せてブンカ―を出るのと入れ違いに、中型小型のパルスボートが数十機入ってきた。
パルスボートには、世界中のボランティア……というと穏やかに聞こえるけど、要は志願兵や傭兵が乗っている。
「うまく考えたな」
サブが「胡同首領」のヘルメットを阿弥陀にして、口を尖らせる。
その横のマヌエリトは戦闘服でありながら、全身からナバホインディアンのオーラを出しまくって腕を組んでいる。
「え、なにがぁ?」
呟いたのがマヌエリトだったら、きちんと顔を向けて「なにがですか?」と丁寧に聞いている。
「だって、ボランティアたちの入港に合わせて潜航させて気配を消したんだろう。北回りで島の西の海に出れば軽石がいっぱい浮いてるから、それに紛らせてしまう。時間はかかるけど、黒潮反流が本土の近海まで連れて行ってくれる」
ウ……さすがは周温雷が主席代理に任命しただけのことはある。
「さあ、たまたまよ。それより、中華系はあんたが任されてるんだから、ちゃんとやらなきゃダメよ、胡同首領の肩書はダテじゃないんだから」
「うっせー、オレは出迎えと連絡専門、ほら、旗のドラゴンだって指は四本だ」
「え、あ、ほんと( ´艸`)」
「笑うな! オレも詳しくは分かんねえけど、主席代理の権威はよっく伝わるんだ」
「ごめんごめん」
「サブ、ここに立て」
マヌエリトが腕を組んだまま、手前の岩を示す。
「え、ここ?」
「背が高く見える」
「え、あ、ああ」
マヌエリトの指示は一発で聞く。
支持の中身が適切だし、たいてい主席代理の自分を立ててもくれるからだ。それに、ナバホインディアン大戦士の押し出しはハンパではない。
岩の上に立ってわたしよりは高くなったサブだけど、マヌエリトには首一つ分足りない。
それでも、背後にフートン主席代理の旗、後ろにわたしとマヌエリトが控えると偉いように見える。
フートン主席の周温雷は、パルスギ鉱が発見されるとサブを主席代理に任命して島を出た。
販路の開拓という名目だけど、本心は違う。
狙いは、わたしがココちゃんを火星に避難させたことに似ている。
主席という立場を利用されないためだ。
フートンは漢明系の者が多い、漢明が島に目を付けると、最初に働きかけてくるのがフートン。
フートンは周主席がよく治めていて、良きにつけ悪きにつけ周の提案や指示が無ければ動かない。
フートンの中には、わたしから見ても漢明の息のかかった者が入り込んでいる。でも、周は露骨な妨害工作でなければ放置していた。そういうファジーというか大ようなところが信頼を得るポイントになっていた。
しかし、漢明が真正面から島に目を向け始めると、あの手この手でフートンを抱き込みにかかる。あらぬ噂も立つ。
フートンを動かしたい漢明は周を、あるいは周の名前を利用する。
そのために、周は姿をくらませた。噂では、月の裏側で金の鉱脈を掘り当てたとか、アメリカでトラックの運ちゃんをやりながら次の手を考えているとか。
「すみませんでした、メグミさん!」
汗を拭きながら及川市長がやってくる。
かくいうわたしは、市長が間に合わない場合、代わって歓迎の挨拶をすることになっていた。
マヌエリトは口下手だし、サブは調子に乗ってなにを言い出すか分からないからね。
ボランティア=志願兵の受け入れは、毎回増えてくる。
この分では、次回からはうちの社長……いや、睦仁王にやってもらわなくてはならないだろうね。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
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