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155『邂逅する者たち・3・スロットル』
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銀河太平記
155『邂逅する者たち・3・スロットル』越萌マリ(児玉元帥)
なんだ、付いてこないのか。
パルスバイクの側車を示すと、孫大人はニヤリと笑った。
「命が惜しい」
「満州じゃ地平線の向こうまで馬を走らせた仲じゃないか」
「何十年前の話アルカ」
「そうだな、あの頃、俺は新米の中隊長。大人は西域公司の五番番頭……」
「四番番頭アルよ、それに、勝ったらグランマが一晩付き合ってくれるって話だったアル」
「そうだったのか。勝ちを譲ってやるんじゃなかった!」
「あれは、実力アル! それに、一晩付き合ってやらされたのは、超アナログな帳簿の整理だったアル」
「アハハ、そうだったな。じゃあ、今度も西之島のロジスティクスは頼んだぞ」
「任せろアル。大事なお得意様アルからなアル!」
「だから、その変な中国語はよせ」
「普通に喋ったら泣きそうだ、劉宏は簡単な相手じゃない。なんだか、今の児玉はあの北大街で会った時のようだ。あの時はほんとうに死にかけたんだからな」
「それは、孫悟兵、おまえもいっしょだ。これから漢明と付き合うには悟兵みたいな奴は欠かせんからな」
「お、おお」
「元帥、そろそろ……」
「ヨイチ、貴様は残ってくれ」
「は?」
「ヨイチは、俺とは別に仕事があるような気がする。まあ、作戦会議までには戻る」
「お気をつけて」
「ああ、俺も一人で決戦するつもりはないからな。では!」
ウィーーン
バイクのスロットルを上げる。
レトロな表現ではナナハンの倍ほどの馬力のあるバイクだが、パルスエンジンなので迫力が無い。
やはりオートホースの方が身には合っている。馬腹を蹴って瞬発。瞬発して人馬共にアドレナリンが沸騰するような感覚が懐かしい。
下方四時の方向から同型のパルスバイクが追って来る。
シュィーーーン
高度を下げて横に並ぶと、さっきブンカ―で出会ったラボのメグミ所長だ。
「どこに急いでいるのかしら?」
「あ、越萌さん」
「救急ね?」
「ええ、危篤状態のロボットのパルス半導体を交換してあげたいんですが予備が無くて……」
「負傷したロボットから部分的な移植をすれば……あ、型式が?」
「はい、ポーランド式で、漢明の……」
「戦死体から取る?」
「それよりも古いんです。敵の舟艇やパルス機に組み込まれているので、それを挑発に行きます」
「西部海岸に押し寄せてきた部隊ね」
「はい、撃破されて擱座しているものから頂きます」
「そう……分かった。南部で陽動攻撃を加えるわ。そう……三十分でいいかしら?」
「危険です! 南部は敵が集中しています、劣勢になりつつはありますが、まだまだ健康な部隊も存在しています!」
「じゃあ、強行偵察をやるまでよ!」
ブィーーーーーーン!!
つい馬のつもりになってボディーを蹴ると、思いのほかの馬力でパルスバイクは飛び出した。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
155『邂逅する者たち・3・スロットル』越萌マリ(児玉元帥)
なんだ、付いてこないのか。
パルスバイクの側車を示すと、孫大人はニヤリと笑った。
「命が惜しい」
「満州じゃ地平線の向こうまで馬を走らせた仲じゃないか」
「何十年前の話アルカ」
「そうだな、あの頃、俺は新米の中隊長。大人は西域公司の五番番頭……」
「四番番頭アルよ、それに、勝ったらグランマが一晩付き合ってくれるって話だったアル」
「そうだったのか。勝ちを譲ってやるんじゃなかった!」
「あれは、実力アル! それに、一晩付き合ってやらされたのは、超アナログな帳簿の整理だったアル」
「アハハ、そうだったな。じゃあ、今度も西之島のロジスティクスは頼んだぞ」
「任せろアル。大事なお得意様アルからなアル!」
「だから、その変な中国語はよせ」
「普通に喋ったら泣きそうだ、劉宏は簡単な相手じゃない。なんだか、今の児玉はあの北大街で会った時のようだ。あの時はほんとうに死にかけたんだからな」
「それは、孫悟兵、おまえもいっしょだ。これから漢明と付き合うには悟兵みたいな奴は欠かせんからな」
「お、おお」
「元帥、そろそろ……」
「ヨイチ、貴様は残ってくれ」
「は?」
「ヨイチは、俺とは別に仕事があるような気がする。まあ、作戦会議までには戻る」
「お気をつけて」
「ああ、俺も一人で決戦するつもりはないからな。では!」
ウィーーン
バイクのスロットルを上げる。
レトロな表現ではナナハンの倍ほどの馬力のあるバイクだが、パルスエンジンなので迫力が無い。
やはりオートホースの方が身には合っている。馬腹を蹴って瞬発。瞬発して人馬共にアドレナリンが沸騰するような感覚が懐かしい。
下方四時の方向から同型のパルスバイクが追って来る。
シュィーーーン
高度を下げて横に並ぶと、さっきブンカ―で出会ったラボのメグミ所長だ。
「どこに急いでいるのかしら?」
「あ、越萌さん」
「救急ね?」
「ええ、危篤状態のロボットのパルス半導体を交換してあげたいんですが予備が無くて……」
「負傷したロボットから部分的な移植をすれば……あ、型式が?」
「はい、ポーランド式で、漢明の……」
「戦死体から取る?」
「それよりも古いんです。敵の舟艇やパルス機に組み込まれているので、それを挑発に行きます」
「西部海岸に押し寄せてきた部隊ね」
「はい、撃破されて擱座しているものから頂きます」
「そう……分かった。南部で陽動攻撃を加えるわ。そう……三十分でいいかしら?」
「危険です! 南部は敵が集中しています、劣勢になりつつはありますが、まだまだ健康な部隊も存在しています!」
「じゃあ、強行偵察をやるまでよ!」
ブィーーーーーーン!!
つい馬のつもりになってボディーを蹴ると、思いのほかの馬力でパルスバイクは飛び出した。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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