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090『西之島銀行ですか?』
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銀河太平記
090『西之島銀行ですか?』 加藤 恵
『『『買った方が早い』』』
人が言うのならともかく、本人たちが言うのは困った。
パチパチたちのオーバーホールをやっているんだけども、あちこちガタが来ていて、本格的な修理をするとなると、けっこうな出費になる。
『西ノ島は豊かになったんだから、新型のを買って、作業効率をあげるべきだよ』
『さよう、オマツの新型は作業速度も積載量も五割り増しでござる』
『ニツビシの新型は、五体までに分裂して局所的な作業でもロスが無いアルよ。パチパチは、どう変態しても、一つの作業機械にしか変態でき無いアル』
『来月のバージョンアップでは、作業体同士の結合も可能になって、より大きな作業機械にもなれるようだし』
『『『ここは買い替えるべきだ(^▽^)/』』』
またも声が揃った。
「でも、買い換えたら、あんたたち廃棄だよ」
『うん』
『当たり前でござる』
『わたしも同志も道具ある。道具はダメになったら廃棄ある』
『『『廃棄、廃棄』』』
「もーーー」
トントン
言い返そうと思ったらラボのドカがノックされる。
モニターで確かめるまでもない、この穏やかなノックは社長だ。
「どうぞ、ロックはしてませんから」
「どうですか、パチパチたちの仕上がり具合は?」
「それが……」
いきさつを説明すると、社長は穏やかに耳を傾けてくれる。
聞いている間も「なるほど……」「そうですねえ……」と相槌を打って、時々、時代劇でしか見られないような手帳を出してメモっている。
「あ、気になるかなあ、メモを取るの?」
「あ、いえ、手書きのメモって、とてもゆかしくて」
「むかし、東大阪OS基地で世話になっていたことがあって、そのとき身に着いた習慣なんです」
「東大阪OS基地……金剛山にあったやつですね……あ、たしか天狗党が」
「ハハハ、昔の話ですよ。気にしないで、この時代に、なにかを成し遂げようとしたら、そういうこともあります」
「は、はい」
『東大阪OS基地?』
『なにアルか?』
『検索しても出てこぬでござる』
「さあ、どうしてだろうねえ」
社長は、分かっていてとぼけてる。
天狗党と関りを疑われるものは、普通のやり方では検索できない。わたしに気を遣ってくれているんだ。
「それで、話なんだけど」
「はい」
「パチパチたちも聞いておくれ」
『『『ラジャー』』』
「自動作業機械を買い替えようと思うんだ」
「え!?」
『『『それがいい!』』』
「あ、ちょっと社長」
「それについて、パチパチたちには資金管理をしてもらってはと思うんだけど」
「あ……!」
「さすがは、加藤恵、呑み込みが早いね」
そうだ、そうなんだ。
パチパチは、あまりに旧式なため、メーカーはネットサービスをとっくに終えている。
つまり、オンラインでの繋がりは、大昔のキッズスマホ程度でしかない。
つまり、オフライン同様で、並列化も、この西ノ島程度のローカルでしかできない。
つまり、外部からの侵入に強く、資金と、その情報の管理にはもってこいなのだ。
「このラボに隣接して銀行を建ててみようと思うんだ。村とフートンにもね」
「西之島銀行ですか?」
「あ、それいいね。おとぎ話めいて、僕の好みだ! うん、村とフートンにも支店を作ってもらおう!」
「それをパチパチたちに?」
「そうだ、いっそパチパチのベースをオートマ体にしてはどうだろ? 作業体は、銀行と周辺の警備係り兼営繕係りにすればいい。ねえ、どうだろ?」
ガチャガチャガチャ ドスンドスン
「もお、作業体で興奮するんじゃない、ラボの床が抜ける!」
「じゃあ、銀行設立準備の一つということで、オートマ体を大幅に改良することにして、作業体はモスボール……うん、その方向でやろう! さっそく、村長と主席にも話をしよう!」
社長は、そのままラボを飛び出していった。
わたしもパチパチも考えをまとめるダシに使われたようだ(^_^;)
ちょっと忙しくなりそう。
そして、それ以上に面白くなりそうな予感がしてきた。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
090『西之島銀行ですか?』 加藤 恵
『『『買った方が早い』』』
人が言うのならともかく、本人たちが言うのは困った。
パチパチたちのオーバーホールをやっているんだけども、あちこちガタが来ていて、本格的な修理をするとなると、けっこうな出費になる。
『西ノ島は豊かになったんだから、新型のを買って、作業効率をあげるべきだよ』
『さよう、オマツの新型は作業速度も積載量も五割り増しでござる』
『ニツビシの新型は、五体までに分裂して局所的な作業でもロスが無いアルよ。パチパチは、どう変態しても、一つの作業機械にしか変態でき無いアル』
『来月のバージョンアップでは、作業体同士の結合も可能になって、より大きな作業機械にもなれるようだし』
『『『ここは買い替えるべきだ(^▽^)/』』』
またも声が揃った。
「でも、買い換えたら、あんたたち廃棄だよ」
『うん』
『当たり前でござる』
『わたしも同志も道具ある。道具はダメになったら廃棄ある』
『『『廃棄、廃棄』』』
「もーーー」
トントン
言い返そうと思ったらラボのドカがノックされる。
モニターで確かめるまでもない、この穏やかなノックは社長だ。
「どうぞ、ロックはしてませんから」
「どうですか、パチパチたちの仕上がり具合は?」
「それが……」
いきさつを説明すると、社長は穏やかに耳を傾けてくれる。
聞いている間も「なるほど……」「そうですねえ……」と相槌を打って、時々、時代劇でしか見られないような手帳を出してメモっている。
「あ、気になるかなあ、メモを取るの?」
「あ、いえ、手書きのメモって、とてもゆかしくて」
「むかし、東大阪OS基地で世話になっていたことがあって、そのとき身に着いた習慣なんです」
「東大阪OS基地……金剛山にあったやつですね……あ、たしか天狗党が」
「ハハハ、昔の話ですよ。気にしないで、この時代に、なにかを成し遂げようとしたら、そういうこともあります」
「は、はい」
『東大阪OS基地?』
『なにアルか?』
『検索しても出てこぬでござる』
「さあ、どうしてだろうねえ」
社長は、分かっていてとぼけてる。
天狗党と関りを疑われるものは、普通のやり方では検索できない。わたしに気を遣ってくれているんだ。
「それで、話なんだけど」
「はい」
「パチパチたちも聞いておくれ」
『『『ラジャー』』』
「自動作業機械を買い替えようと思うんだ」
「え!?」
『『『それがいい!』』』
「あ、ちょっと社長」
「それについて、パチパチたちには資金管理をしてもらってはと思うんだけど」
「あ……!」
「さすがは、加藤恵、呑み込みが早いね」
そうだ、そうなんだ。
パチパチは、あまりに旧式なため、メーカーはネットサービスをとっくに終えている。
つまり、オンラインでの繋がりは、大昔のキッズスマホ程度でしかない。
つまり、オフライン同様で、並列化も、この西ノ島程度のローカルでしかできない。
つまり、外部からの侵入に強く、資金と、その情報の管理にはもってこいなのだ。
「このラボに隣接して銀行を建ててみようと思うんだ。村とフートンにもね」
「西之島銀行ですか?」
「あ、それいいね。おとぎ話めいて、僕の好みだ! うん、村とフートンにも支店を作ってもらおう!」
「それをパチパチたちに?」
「そうだ、いっそパチパチのベースをオートマ体にしてはどうだろ? 作業体は、銀行と周辺の警備係り兼営繕係りにすればいい。ねえ、どうだろ?」
ガチャガチャガチャ ドスンドスン
「もお、作業体で興奮するんじゃない、ラボの床が抜ける!」
「じゃあ、銀行設立準備の一つということで、オートマ体を大幅に改良することにして、作業体はモスボール……うん、その方向でやろう! さっそく、村長と主席にも話をしよう!」
社長は、そのままラボを飛び出していった。
わたしもパチパチも考えをまとめるダシに使われたようだ(^_^;)
ちょっと忙しくなりそう。
そして、それ以上に面白くなりそうな予感がしてきた。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
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