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080『生存者発見!』
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銀河太平記
080『生存者発見!』 加藤 恵
押しつぶされた肋材や瓦礫の向こうに生存者が居る。
アナライズするまでもなく分かった。
生存者が小石のようなもので瓦礫を叩く音がしている。
「イエスなら一回、ノーなら二回叩いて!」
瓦礫の隙間に向かって声をあげる。
カン
「瓦礫をどけたら、自力で出てこれる?」
カンカン
「負傷している?」
カン
「脚を挟まれてる?」
カン
脚が自由になれば、ある程度動けるかと思った。兵二が横に来て質問を続ける。
「脚以外も挟まれているか?」
カン
兵二は冷静だ、大きく質問して、状況を把握しようとしている。
「他に生存者は居るか?」
……カン
複数の生存者が居る、救出を急がなければ。
無駄かもしれないけど、地上に向かってパルス通信を試みるけど、パルスガスの影響で返事は無い。
「続けてみる……」
被災者は、パルス通信どころか、口もきっけずに、石ころで意思表示するしかないんだ。
諦めるわけのはいかない。
「きびしいな……」
兵二が声を落としてため息のようにこぼす。
質問を繰り返して、三人の生存者が居て、三人とも重症なことが分かったのだ。
瓦礫は人の力で排除できるものではなく、ニッパチの到着を待たなければ手が付けられない。
人の声を聞いて、生存者は希望を持っている。その希望の火が消えないうちに救助しなければ
被災者の周囲の状況も知りたい。
「モールス信号は使えるか?」
時代劇の台詞のようなことを言う。
「火星では、まだモールス信号を使っているんだよ」
「そうなんだ……」
カン……カン
しかし返事はノーだ。
「そうか、きみは地球人なんだね。僕は火星人だから、地球の事は西ノ島のことしか分からない。地球のことを聞くから、返事してもらえるかな」
……カン
返事が遅れている、弱り始めてるんだ。だから、通信し続けることで気を引き立てようとしているんだ。
二分経過して、他の生存者が絶命したことが知れる。
急がないと、この被災者も危ない。
わたしは――救助急がれたし――と、もう十回は超えたであろうパルス通信を試みる。
ひかし、パルスを動力源にしているものは、ことごとく使えなくて、それは、通信手段においても同じようだ。
ザザザザザザザザザ
「ニッパチ、そっちは?」
『こっちは済みました、こちらは、どうですか?』
「ひとり生存している、おまえの力で、なんとかならないか?」
『調べてみます』
ウィーーーーーーン
触角を伸ばして、瓦礫の様子をチェックする。
ウィーーーーーーン
「どうだ?」
―― 手に負えません、構造そのものが崩壊していて、わたしの馬力では排除できません ――
ニッパチは共感通信で伝えてきた、被災者を落胆させないための配慮だ。
「なんとかならないかしら……」
「働きかけてないと、すぐに意識を失ってしまうぞ」
重傷を負ってコミニケーションがとれなくなると、急速に様態が悪化するのは、兵二もわたしも、ニッパチも蓄積された情報として知っている。
もう、小石を使ってのコミニケーションも限界だろう。
「せめて、手をとってあげるくらいできればいいんだけどね……」
『それ、できるかも』
「え……?」
「あ、そうか!」
『はい、これです!』
結節点の一つが開いたかと思うと、リアルハンドが伸びてきた。ほら、ここへ来てすぐに付けてやったやつ。
「よし、俺も、救助を急ぐように連絡し続けてみる。やってくれ」
無駄かもしれないけど、兵二がパルス通信を引き受けてくれる。
この人だけでも助けなきゃ……祈るような気持ちで、ニッパチのリアルハンドが瓦礫の隙間に伸びていくのを見つめるだけだった……。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
080『生存者発見!』 加藤 恵
押しつぶされた肋材や瓦礫の向こうに生存者が居る。
アナライズするまでもなく分かった。
生存者が小石のようなもので瓦礫を叩く音がしている。
「イエスなら一回、ノーなら二回叩いて!」
瓦礫の隙間に向かって声をあげる。
カン
「瓦礫をどけたら、自力で出てこれる?」
カンカン
「負傷している?」
カン
「脚を挟まれてる?」
カン
脚が自由になれば、ある程度動けるかと思った。兵二が横に来て質問を続ける。
「脚以外も挟まれているか?」
カン
兵二は冷静だ、大きく質問して、状況を把握しようとしている。
「他に生存者は居るか?」
……カン
複数の生存者が居る、救出を急がなければ。
無駄かもしれないけど、地上に向かってパルス通信を試みるけど、パルスガスの影響で返事は無い。
「続けてみる……」
被災者は、パルス通信どころか、口もきっけずに、石ころで意思表示するしかないんだ。
諦めるわけのはいかない。
「きびしいな……」
兵二が声を落としてため息のようにこぼす。
質問を繰り返して、三人の生存者が居て、三人とも重症なことが分かったのだ。
瓦礫は人の力で排除できるものではなく、ニッパチの到着を待たなければ手が付けられない。
人の声を聞いて、生存者は希望を持っている。その希望の火が消えないうちに救助しなければ
被災者の周囲の状況も知りたい。
「モールス信号は使えるか?」
時代劇の台詞のようなことを言う。
「火星では、まだモールス信号を使っているんだよ」
「そうなんだ……」
カン……カン
しかし返事はノーだ。
「そうか、きみは地球人なんだね。僕は火星人だから、地球の事は西ノ島のことしか分からない。地球のことを聞くから、返事してもらえるかな」
……カン
返事が遅れている、弱り始めてるんだ。だから、通信し続けることで気を引き立てようとしているんだ。
二分経過して、他の生存者が絶命したことが知れる。
急がないと、この被災者も危ない。
わたしは――救助急がれたし――と、もう十回は超えたであろうパルス通信を試みる。
ひかし、パルスを動力源にしているものは、ことごとく使えなくて、それは、通信手段においても同じようだ。
ザザザザザザザザザ
「ニッパチ、そっちは?」
『こっちは済みました、こちらは、どうですか?』
「ひとり生存している、おまえの力で、なんとかならないか?」
『調べてみます』
ウィーーーーーーン
触角を伸ばして、瓦礫の様子をチェックする。
ウィーーーーーーン
「どうだ?」
―― 手に負えません、構造そのものが崩壊していて、わたしの馬力では排除できません ――
ニッパチは共感通信で伝えてきた、被災者を落胆させないための配慮だ。
「なんとかならないかしら……」
「働きかけてないと、すぐに意識を失ってしまうぞ」
重傷を負ってコミニケーションがとれなくなると、急速に様態が悪化するのは、兵二もわたしも、ニッパチも蓄積された情報として知っている。
もう、小石を使ってのコミニケーションも限界だろう。
「せめて、手をとってあげるくらいできればいいんだけどね……」
『それ、できるかも』
「え……?」
「あ、そうか!」
『はい、これです!』
結節点の一つが開いたかと思うと、リアルハンドが伸びてきた。ほら、ここへ来てすぐに付けてやったやつ。
「よし、俺も、救助を急ぐように連絡し続けてみる。やってくれ」
無駄かもしれないけど、兵二がパルス通信を引き受けてくれる。
この人だけでも助けなきゃ……祈るような気持ちで、ニッパチのリアルハンドが瓦礫の隙間に伸びていくのを見つめるだけだった……。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
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