27 / 30
027『大名行列対処法』
しおりを挟む
勇者乙の天路歴程
027『大名行列対処法』
※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者
「いえ、旅の者ですが」
正直に答えると、村長は不安と安心の入り混じったような顔をした。
よそ者が関わり合うべきではないとは思ったが、スクナの一言でそうもいかなくなる。
スクナ:「焼き芋屋でも来るのお?」
薩摩守→薩摩芋→焼き芋、単純な奴だ(-_-;)。
村長:「滅相もない、 従四位下の薩摩守様ですよ!」
中村:「ひょっとして、島津の殿さまですか?」
村長:「はい、お大名の御行列が通るのは初めてのことなので、とりあえず思いつく限りのことをやってるんですが、もう分からないことだらけで困惑して……」
中村:「ここは始まりの村、薩摩様のご支配地ではないんですから、道の脇に寄って邪魔をしなければ大丈夫です」
村長:「え、そうなんですか? 土下座とかしなくてもいいんでしょうか?」
中村:「はい、大声を出すとか行列を横切るとかしなければ、なにも問題ありません」
ビクニ:「島津は72万石だから、行列は1000から1500、人足を入れると3000ちょっとというところか」
さすがは八百比丘尼、引退教師の俺よりも詳しい。
村長:「3000……間には荷車や籠も入るでしょうから、総延長5キロとか6キロというところでしょうか」
ビクニ:「うむ、そんなところかな。まあ、勇者の言う通り露骨に邪魔をするとか横切るとかしなければ咎められることもない」
いつの間にか、周囲に人が集まり始めて、ちょっと戸惑う。
村人1:「でも、よそで土下座したって話も聞くぞ」
村人2:「5キロ6キロの行列っていやあ、通過するだけで3時間くらいはかかるべ」
村人3:「行列って言うのは遅えから、もっとかかるべえ」
村人2:「うええ」
ビクニ:「飛脚と産婆は横切ってもお咎めなしだぞ」
村長:「そうなんですか!?」
中村:「土下座は支配地の領民にしかさせません。大丈夫ですよ。まあ、軽く掃除をして打ち水でもしておけばいいんじゃないですか」
村長:「いやあ、そうだったんですか。それを伺って安心いたしましたぁ(^_^;)」
『村長ぉ! 来たあ! 大名行列が来たずらぁ! いま、峠を越えて来たぁ!』
教会の塔に上っていた見張りが大声で広場のみんなに告げる。
「よし、西門から東門まで打ち水するぞお、撒きすぎて水浸しにせんようになあ! ゴミの取り残しやら犬のウンコとかも気を付けてなあ!」
おお! がってんだ! まかしといてぇ!
いろんな声が上がって、あっという間にやり遂げて、静かに薩摩守の行列を待ち受ける始まりの村だった。
☆彡 主な登場人物
中村 一郎 71歳の老教師 天路歴程の勇者
高御産巣日神 タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま
ビクニ 八百比丘尼 タカムスビノカミに身を寄せている半妖
原田 光子 中村の教え子で、定年前の校長
末吉 大輔 二代目学食のオヤジ
静岡 あやね なんとか仮進級した女生徒
ヤガミヒメ 大国主の最初の妻 白兎のボス
ヒコナ ヤガミヒメの新米侍女
因幡の白兎課長代理 あやしいウサギ
027『大名行列対処法』
※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者
「いえ、旅の者ですが」
正直に答えると、村長は不安と安心の入り混じったような顔をした。
よそ者が関わり合うべきではないとは思ったが、スクナの一言でそうもいかなくなる。
スクナ:「焼き芋屋でも来るのお?」
薩摩守→薩摩芋→焼き芋、単純な奴だ(-_-;)。
村長:「滅相もない、 従四位下の薩摩守様ですよ!」
中村:「ひょっとして、島津の殿さまですか?」
村長:「はい、お大名の御行列が通るのは初めてのことなので、とりあえず思いつく限りのことをやってるんですが、もう分からないことだらけで困惑して……」
中村:「ここは始まりの村、薩摩様のご支配地ではないんですから、道の脇に寄って邪魔をしなければ大丈夫です」
村長:「え、そうなんですか? 土下座とかしなくてもいいんでしょうか?」
中村:「はい、大声を出すとか行列を横切るとかしなければ、なにも問題ありません」
ビクニ:「島津は72万石だから、行列は1000から1500、人足を入れると3000ちょっとというところか」
さすがは八百比丘尼、引退教師の俺よりも詳しい。
村長:「3000……間には荷車や籠も入るでしょうから、総延長5キロとか6キロというところでしょうか」
ビクニ:「うむ、そんなところかな。まあ、勇者の言う通り露骨に邪魔をするとか横切るとかしなければ咎められることもない」
いつの間にか、周囲に人が集まり始めて、ちょっと戸惑う。
村人1:「でも、よそで土下座したって話も聞くぞ」
村人2:「5キロ6キロの行列っていやあ、通過するだけで3時間くらいはかかるべ」
村人3:「行列って言うのは遅えから、もっとかかるべえ」
村人2:「うええ」
ビクニ:「飛脚と産婆は横切ってもお咎めなしだぞ」
村長:「そうなんですか!?」
中村:「土下座は支配地の領民にしかさせません。大丈夫ですよ。まあ、軽く掃除をして打ち水でもしておけばいいんじゃないですか」
村長:「いやあ、そうだったんですか。それを伺って安心いたしましたぁ(^_^;)」
『村長ぉ! 来たあ! 大名行列が来たずらぁ! いま、峠を越えて来たぁ!』
教会の塔に上っていた見張りが大声で広場のみんなに告げる。
「よし、西門から東門まで打ち水するぞお、撒きすぎて水浸しにせんようになあ! ゴミの取り残しやら犬のウンコとかも気を付けてなあ!」
おお! がってんだ! まかしといてぇ!
いろんな声が上がって、あっという間にやり遂げて、静かに薩摩守の行列を待ち受ける始まりの村だった。
☆彡 主な登場人物
中村 一郎 71歳の老教師 天路歴程の勇者
高御産巣日神 タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま
ビクニ 八百比丘尼 タカムスビノカミに身を寄せている半妖
原田 光子 中村の教え子で、定年前の校長
末吉 大輔 二代目学食のオヤジ
静岡 あやね なんとか仮進級した女生徒
ヤガミヒメ 大国主の最初の妻 白兎のボス
ヒコナ ヤガミヒメの新米侍女
因幡の白兎課長代理 あやしいウサギ
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する
真義あさひ
ファンタジー
名門貴族家に生まれながらも、妾の子として虐げられ、優秀な兄の下僕扱いだった貴公子ケイは正妻の陰謀によりすべてを奪われ追放されて、貴族からスラム街の最下層まで落ちぶれてしまう。
絶望と貧しさの中で母と共に海に捨てられた彼は、死の寸前、海の底で出会った謎のサラマンダーの魔法により過去へと回帰する。
回帰の目的は二つ。
一つ、母を二度と惨めに死なせない。
二つ、海の底で発現させた勇者の力を覚醒させ、サラマンダーの望む海底神殿の浄化を行うこと。
回帰魔法を使って時を巻き戻したサラマンダー・ピアディを相棒として、今度こそ、不幸の連鎖を断ち切るために──
そして母を救い、今度こそ自分自身の人生を生きるために、ケイは人生をやり直す。
第一部、完結まで予約投稿済み
76000万字ぐらい
꒰( ˙𐃷˙ )꒱ ワレダイカツヤクナノダ~♪
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる