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294『ポチョムキン村・3・司祭館』
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魔法少女マヂカ
294『ポチョムキン村・3・司祭館』語り手:マヂカ
日中だというのに花火はきれいな虹色に輝き、星屑のようにピカピカ光りながら落ちて消えていく。
視線を戻すと、エリザの肩に手を添えるようにして立っている女先生が目に入った。
「ようこそポチョムキン村へ、日曜学校を預かっているミーシャです。丘の上に虹が立ったのでミーシャを見に行かせたんですが、やっぱり迷い人さんがいらしていたんですね」
「え、虹が立ったんですか?」
「はい、きれいな虹だったので、こちらに手繰り寄せて、いまご覧になった花火にしてみました」
「ええ?」
「もしかしたらと思いましたけど、やっぱり魔法少女さんだったんですね」
「そうだよ、先生。こっちがヤポンスキーのマヂカさん。お隣りがキタイスキーの孫悟嬢さん」
「マヂカです」
「孫悟嬢、よろしく」
「こちらこそ、ほかの子どもたちがやってくるのは午後からですから、どうぞ、こちらで休んでください」
ミーシャの先導で村の中に……静かな村だと思っていたけど、ゲートをくぐると、家畜の気配と共に村人たちのさんざめきや、洗い物をしたり掃除をしたり窓を開けて空気を入れ替えたり、クシャミをしたりの生活音が聞こえ、最初の角を曲がると、実際に村人たちの姿が見え始めた。
ミーシャは、すれ違う者たちだけではなく、垣根越しに背中が見えるお年寄りにも声を掛け、あるいは視界の外から掛けられた声に半身を向けて手を振って、お天気の話や、家畜や家族の様子などを一言二言交わしていく。
村人たちが、直接わたしや孫悟嬢に話しかけることはなかったけど、関心を示した者には「お客さん」「今月初めての迷い人さん」とか軽く示してくれる。わたしたちも、軽く会釈。この軽さは、村というよりは都会的な感じがする。
「というか、本編が始まる前の映画か芝居のプロローグという感じだな」
「シ、聞こえるぞ」
悟嬢をたしなめたところで日曜学校の教会に着いた。
「神父さま、司祭館をお借りしま~す」
聖堂のドア越しにミーシャが声を掛けると、中から「ついでに、掃除も頼むよ~」と声がして「もう、神父様は無精なんだから」とエリザが肩をすくめる。
「うわあ~」
司祭は勉強家なのだろう、あちこちに本が積まれたり、あるいは付箋が貼ったままや開きっぱなしの本があったり、食器や、着替えなどが散らかっている。
「もう、三日前に片づけたところなのに!」
エリザが口を尖らせる。
「仕方ないわよ。お掃除する条件で日曜学校やらせてもらってるんだもん。よし、五分でやっつけるから、エリザ、お庭で待っていただいて」
「了解! じゃ、こっちへどうぞ」
「手伝おうか?」
「魔法なら、一瞬で片付くよ」
悟嬢が耳から如意棒を取り出そうとすると、ミーシャが笑顔で手をバツ印にする。
「嬉しいけど、教会の中で、魔法はNGです」
「そうか」
「じゃ、お言葉に甘えて」
向かい合わせのベンチに腰掛けると、エリザは友だち同士で悪だくみをするように身を乗り出した。
「……ひょっとして、分かっているかもしれないけど、わたしはポチョムキンの娘なんです」
「え!?」
悟嬢は驚いたようだが、わたしは――ああ、やっぱりな――と思った。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
サム(サマンサ) 霊雁島の第七艦隊の魔法少女
ソーリャ ロシアの魔法少女
孫悟嬢 中国の魔法少女
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
ファントム 時空を超えたお尋ね者
294『ポチョムキン村・3・司祭館』語り手:マヂカ
日中だというのに花火はきれいな虹色に輝き、星屑のようにピカピカ光りながら落ちて消えていく。
視線を戻すと、エリザの肩に手を添えるようにして立っている女先生が目に入った。
「ようこそポチョムキン村へ、日曜学校を預かっているミーシャです。丘の上に虹が立ったのでミーシャを見に行かせたんですが、やっぱり迷い人さんがいらしていたんですね」
「え、虹が立ったんですか?」
「はい、きれいな虹だったので、こちらに手繰り寄せて、いまご覧になった花火にしてみました」
「ええ?」
「もしかしたらと思いましたけど、やっぱり魔法少女さんだったんですね」
「そうだよ、先生。こっちがヤポンスキーのマヂカさん。お隣りがキタイスキーの孫悟嬢さん」
「マヂカです」
「孫悟嬢、よろしく」
「こちらこそ、ほかの子どもたちがやってくるのは午後からですから、どうぞ、こちらで休んでください」
ミーシャの先導で村の中に……静かな村だと思っていたけど、ゲートをくぐると、家畜の気配と共に村人たちのさんざめきや、洗い物をしたり掃除をしたり窓を開けて空気を入れ替えたり、クシャミをしたりの生活音が聞こえ、最初の角を曲がると、実際に村人たちの姿が見え始めた。
ミーシャは、すれ違う者たちだけではなく、垣根越しに背中が見えるお年寄りにも声を掛け、あるいは視界の外から掛けられた声に半身を向けて手を振って、お天気の話や、家畜や家族の様子などを一言二言交わしていく。
村人たちが、直接わたしや孫悟嬢に話しかけることはなかったけど、関心を示した者には「お客さん」「今月初めての迷い人さん」とか軽く示してくれる。わたしたちも、軽く会釈。この軽さは、村というよりは都会的な感じがする。
「というか、本編が始まる前の映画か芝居のプロローグという感じだな」
「シ、聞こえるぞ」
悟嬢をたしなめたところで日曜学校の教会に着いた。
「神父さま、司祭館をお借りしま~す」
聖堂のドア越しにミーシャが声を掛けると、中から「ついでに、掃除も頼むよ~」と声がして「もう、神父様は無精なんだから」とエリザが肩をすくめる。
「うわあ~」
司祭は勉強家なのだろう、あちこちに本が積まれたり、あるいは付箋が貼ったままや開きっぱなしの本があったり、食器や、着替えなどが散らかっている。
「もう、三日前に片づけたところなのに!」
エリザが口を尖らせる。
「仕方ないわよ。お掃除する条件で日曜学校やらせてもらってるんだもん。よし、五分でやっつけるから、エリザ、お庭で待っていただいて」
「了解! じゃ、こっちへどうぞ」
「手伝おうか?」
「魔法なら、一瞬で片付くよ」
悟嬢が耳から如意棒を取り出そうとすると、ミーシャが笑顔で手をバツ印にする。
「嬉しいけど、教会の中で、魔法はNGです」
「そうか」
「じゃ、お言葉に甘えて」
向かい合わせのベンチに腰掛けると、エリザは友だち同士で悪だくみをするように身を乗り出した。
「……ひょっとして、分かっているかもしれないけど、わたしはポチョムキンの娘なんです」
「え!?」
悟嬢は驚いたようだが、わたしは――ああ、やっぱりな――と思った。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
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ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
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サム(サマンサ) 霊雁島の第七艦隊の魔法少女
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