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277『敵はポチョムキンのソ-ニャと……』

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魔法少女マヂカ

277『敵はポチョムキンのソ-ニャと……』語り手:マヂカ  




 怪力乱神を語らず。


 古くから君子の心得とされてきた。

 君子は「きみこ」ではないぞ「くんし」だ。

 徳を積んで文武両道に秀で、世の中の先頭に立つ一人前の男という意味だ。日本的に言えば「士」にあたるか。

 君子たる者、真偽不明、原因不明な怪しい話は口にするなという意味だ。

 尾ひれ葉ひれとか針小棒大いうことがある。人の口を経て行くうちに、蛇を見たという話が竜を見たという話になってしまい人の心を惑わしてはならないという戒めだ。



 しかし、今朝の新聞やテレビは逆だ。



――  豊島区上空に蜃気楼 ――

 昨日、豊島区空蝉橋上空にC58機関車が出現。まるで、銀河鉄道が発車するような姿に歓声が上がり、その不思議な姿を大勢の人が撮影し、テレビやネットで流されたが、これは、大塚駅近くのゲーム会社が屋外の3D映像の投影ミスらしく、関係機関で調査されている。

 記事も三面のトピックス扱いで、140円に迫った円安記事の1/10にも満たない。

 テレビでも、映像は流されたものの、UFOの噂扱いで、天気予報のついでのようだった。

―― このように、夕立のあった後などは、空気中の水蒸気が増えて、地上の灯り、車のヘッドライトなどが映り込んで、UFO騒ぎになることがあります。このような状況では、晴れていても空気中の水蒸気量は多く暑く感じて、熱中症になることがあります。どうぞ、こまめな水分補給に気を付けてください ――



「突然、霊ダー(霊障用レーダー)に戦艦ポチョムキンが現れた。ステルス仕様で、映ったのは特務と霊雁島(第七艦隊基地)の霊ダーだけだ。すでに、主砲にはエネルギー充填されつつあって、迎撃は時間との勝負。位相変換が完了する前に出撃するを得なかった」

 大塚台公園の前で北斗(C58機動車)の出撃を目にした我々は、そのまま公園地下の旅団基地に走り込んだのだ。

「敵も、位相変換もせずに迎撃されるとは思っていなかったんだろう、一斉射しただけで帰って行った」

「撃破できたのか?」

 ブリンダが鋭い視線を指令に向ける。

「危ないところだったが、安倍隊長とサマンサが居合わせてくれて助かった」

 ブリーフィングルームと隣り合わせの仮眠室では、我が担任であり隊長の阿部女史がひっくり返って、サムが面倒くさそうに回復魔法をかけてやっている。

 スクランブル当番だったんだろう。

「オバハン、年なんじゃないか?」

「ブリンダ!」

「言ってやるな、量子パルスの充填が間に合わんから、なけなしの魔力を注ぎ込んで発射したんだ」

「そのわりに、サムは元気そうだな」

「ちょ、聞こえるぞ、ブリンダ」

「キャン、聞こえた!」

 詰子が怯えた声で、わたしの後ろにまわり、友里が、どうとりなしたものかとキョロキョロ。

「北斗は旧式すぎて、NATO規格の魔力は変換しなきゃ使えないのよ! 日本は、もっと防衛装備に金をかけなきゃねえ!」

「まあ、首相も防衛費倍増っていってるから」

「フン、五年で倍増! 世界は滅んでるわよ!」

「文句はあとにしろ、それより、あの映像の確認だ」

「「「「映像?」」」」

「ああ、撃破する寸前にポチョムキンの戦闘艦橋を写したものだ。テディ―頼む」

「イエッサー」

 テディ―がドラえもんのような手でインタフェイスを操作すると、壁面パネルにポチョムキンが大映しになった。

「艦橋をズームします」

 ズィーーン

 テディ―らしいエフェクトが入って、戦闘艦橋に立つ二人の将校が映し出される。

「一人は、魔法少女のソーリャ」

「ソーリャのくそばばあ!」

 ブリンダが切れかかる。ソーリャのことは、またいずれ……それよりも、ソーリャの後ろの士官帽を目深に被ったアジア系が気になる。

「シャドー補正します」

 テディ―が手をクルクル回すと陰になった目の所が明らかになる。

「敵ながら美人だな……」

 司令が個人的感想を述べて、一秒後にビックリした。



 クマさん!?



※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル        ブリンダの使い魔
サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
ソーリャ         ロシアの魔法少女

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
春日         高坂家のメイド長
田中         高坂家の執事長
虎沢クマ       霧子お付きのメイド
松本         高坂家の運転手 
新畑         インバネスの男
箕作健人       請願巡査
ファントム      時空を超えたお尋ね者
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