上 下
258 / 301

258『深夜の呼び出し』

しおりを挟む
魔法少女マヂカ

258『深夜の呼び出し』語り手:マヂカ  



 トントン  トントン

 
 深夜、ドアを叩く音で目が覚めた。

 クマさんがファントムにかどわかされて二日がたった。

 夕べまでは、クマさん救出のため、侯爵を中心にいろいろ手立てを考えたり打合せをしたり、深夜になっても屋敷の中では、だれかれとなく起きていた。

「打つべき手は打った。どうやら長期戦になりそうでもある。わたしは、取りあえずクマの両親に説明とお詫びに行って来る。三四日のうちには戻って来るつもりだが、その間は、みなも少し休んでおくれ」

「いいえ、まだまだ頑張れます」

 春日メイド長は胸を張るのだが、その春日メイド長も、事実上の対策本部になっているリビングで舟をこいでいる。

 門衛室の明かりは点いているが、詰めているのは臨時に派遣された巡査で、箕作巡査は署長から強制的に休暇を言い渡されている。クマさんを誘拐された今、まともに勤務に耐えられないからだ。

 ノンコは入浴後は霧子の部屋で話し込んでいたが、何十回目か分からないため息が絶えて三十分は経つ。

 さすがのわたしも微睡んでしまって、いまのノックで目が覚めたわけだ。


 ん……子ども?


 物憂く、緩い透視をかけると、ドアの向こうは身長130センチほどの輪郭が浮かび上がる。

 返事するのも大儀なので、指をクルリと回してドアを開けてやる。

「この時代に自動ドアは無いと思うわよ」

 開口一番、ミスを指摘するのは……黄帽を被った小学生。

「黄帽の小学生と言うのも大正時代には居ないと思うよ」

「いっしょに来て」

 それは、この時代にやってきた日以来見ていないJS西郷だ。

「久しぶりだね。お誘いはありがたいけど、まだ、元の令和に戻れる状況じゃないわよ」

「ちょっとテレポートするだけ。時間は止められないから、すぐに」

「分かった。ちょっと、着替え……」

 部屋着のボタンに手を掛けようとすると、わたしは、瞬間で制服姿になった。

 女子学習院のそれではなく、百年前の大正時代に着ていた帝国特務師団の制服だ。

「これは……」

「特務師団本部は服務規定がうるさいのよ、思い出した?」

「あ、ああ」

 この時代にはこの時代のマヂカが存在している。それを差し置いて、令和のわたしを呼びつけるのは反則だ。

 どうも、想像しているよりも何倍も重大な事態になっているようだ。

「では、行きます」

 JS西郷が示したドアの外は闇になっていて、その闇の向こうから懐かしいレンガ造りの特務師団司令部の営門が見えてきた。




※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
春日         高坂家のメイド長
田中         高坂家の執事長
虎沢クマ       霧子お付きのメイド
松本         高坂家の運転手 
新畑         インバネスの男
箕作健人       請願巡査

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

魔法最弱の世界で魔法少女に転生する〜魔法少女はチート魔導士?〜

東雲ノノメ
ファンタジー
 オタクの女子高校生だった美水空は知らないうちに異世界に着いてしまった。  ふと自分の姿を見たら何やら可愛らしい魔法少女の姿!  謎の服に謎の場所、どうしようもなく異世界迷子の空。  紆余曲折あり、何とか立ち直り人間の街についた空は吹っ切れて異世界を満喫することにする。  だけどこの世界は魔法が最弱の世界だった!  魔法使い(魔法少女)だからという理由で周りからあまりよく思われない空。  魔法使い(魔法少女)が強くないと思ったの?私は魔法で生きていく!という精神でこの異世界で生きていく!  これは可愛い魔法少女が異世界で暴れたり暴れなかったりする話である。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

ウロボロス「竜王やめます」

ケモトカゲ
ファンタジー
死と生を超越した不死竜ウロボロス。彼は竜王と偉大な異名で呼ばれていたものの、勇者の試練と称して何千年も討伐されドラゴンの素材を剥ぎ取られ続けていた。 素材集主目的に討伐されたウロボロスはそしてついにブチギレ、竜王をやめることを決意する。 これはウロボロスが好き勝手に生きるための物語である。(リメイク版です)

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...