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257『悪魔城の黒マント』
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魔法少女マヂカ
257『悪魔城の黒マント』語り手:マヂカ
ドドド! ゴゴゴゴ! ゴオオオオオオ!
…………ゴトン
唸りを上げ、地響きをさせて聳え立ったトキワ荘は、東京都庁ほどの大きさと高さになって、ようやく拡大をやめた。
ウォンウォン ウォンウォン ウォンウォン
しかし、巨大な機械獣が佇立しアイドリングのように身震いしている様は油断がならない。
「悪魔の城か、こいつは……」
ステッキを太刀のように構える高坂侯爵は、一見滑稽に見えるが、さすがは高坂五万石、高坂光孝十七代目子孫の当主。サーベルを抜き放った箕作巡査よりも圧がある。
しかし、淀橋署請願巡査であり、虎沢クマの婚約者である箕作巡査は、ズサっと地を踏みしめながら侯爵の前に進み、まるで聖剣エクスカリバーを擬して魔王に立ち向かうアーサー王のように身構えた。
「高坂侯爵家のメイド、虎沢クマ嬢を誘拐せし犯人! さっさと虎沢嬢を開放し、捕縛の縄につきなさい! 今なら、誘拐監禁の罪だけだ。この上、虎沢嬢に危害を加えたり、抵抗を試みるなら、傷害、公務執行妨害の罪を被ることになるぞ!」
「不埒者! わたしのメイドを返しなさい!」
ブン
霧子も負けじと拳を振り上げる。
ワハ ワハハハハハハハハハハハ!
悪魔城と化したトキワ荘、そのめくるめく最上階ベランダのあたりから不敵な哄笑が沸き起こった!
「なにやつ!?」
侯爵が誰何すると、悪魔城前面の中空に黒ずくめのマント男が、虎沢クマを後ろ手に戒めて現れた。
「クマさん!」
「箕作さん!」
「くそ、ただちにクマ……虎沢嬢を開放しなさい!」
ジリ
背後で踏みしめる音がしたかと、思うと、小柄が投げられた。
霧子が隠し持っていた小柄を投げたのだ。
「これも、くらえ!」
侯爵も負けじと、ステッキを投げる。
小柄もステッキも、過たずマント男の眉間と胸に当ったように見えたが、音が怪しい。
チャリン カラン
頼りない音をさせて、二つとも落ちてきた。
「手ごたえはあったのに!?」
「妖術か!?」
あれは、3Dホログラムだ。大正時代の技術ではないし理解もできないだろう。
「要求があるなら言え!」
「ある者たちが、大連武闘会で優勝し、戦艦長門が最速で帰投するのを助けた」
こいつ、何を言い出すつもりだ?
大連武闘会の事は高坂家の親類筋の者がやったことにしてある。まして、長門が史実よりも早く横須賀に着いたことは、史実を知っている我々しか知らないことだぞ。
「そのために、数十人の者の命が救われた」
「それが、なんや言うのんや……」
ノンコが呟く。当たり前だろう、本来助からない命が助かったのだから、悪かろうはずもない。
「そうだろうか?」
くそ、こいつ、心を読むのか!?
「助かった命の中には邪な者も……とは思わないかい」
なんだと?
「蒔いた種は蒔いた者に刈ってもらおう……刈り方については後日伝えよう。どうか、その者たちに伝えてくれたまえ。くれぐれも、わたしを失望させることのないようにとね」
「貴様、何者だ! 名を名乗れ!」
「これは、侯爵、失礼をした。我が名はファントム、ファントムであるゆえ、君たちが目にしている者も幻だがね。実体は……ここだ!」
最後の「ここだ!」は、はるか最上階のバルコニーに戻った。
「そして、我が意に背けば……こうなる」
キャーーーーーーーー!
悲鳴が聞こえたかと思うと、はるか最上階からクマさんが突き落とされた!
「クマさーーん!」
箕作巡査がサーベルを投げ出し、クマさんを抱きとめようと前に進む。
「よせ、君まで死んでしまう!」
「箕作さん!」
「箕作巡査!」
男たちが、箕作巡査を羽交いに停める!
「は、放してくれええええ!」
ビシャ!
すごい音がして、クマさんは地面に叩きつけられる……ハズはない、あれはホログラムだ。
分かっていても目を背けてしまう。
一瞬あって目を開けると、案の定クマさんの姿は無い。
やつは、ご丁寧に、地面への激突音まで付け加えたのだ。
魔法少女ともあろう者が、見事に引っかけられた。
そして、魔法城も消え果てて、豊島郡長崎村、甲州街道との合流点で、呆然と立ち尽くしかなかったのであった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
257『悪魔城の黒マント』語り手:マヂカ
ドドド! ゴゴゴゴ! ゴオオオオオオ!
…………ゴトン
唸りを上げ、地響きをさせて聳え立ったトキワ荘は、東京都庁ほどの大きさと高さになって、ようやく拡大をやめた。
ウォンウォン ウォンウォン ウォンウォン
しかし、巨大な機械獣が佇立しアイドリングのように身震いしている様は油断がならない。
「悪魔の城か、こいつは……」
ステッキを太刀のように構える高坂侯爵は、一見滑稽に見えるが、さすがは高坂五万石、高坂光孝十七代目子孫の当主。サーベルを抜き放った箕作巡査よりも圧がある。
しかし、淀橋署請願巡査であり、虎沢クマの婚約者である箕作巡査は、ズサっと地を踏みしめながら侯爵の前に進み、まるで聖剣エクスカリバーを擬して魔王に立ち向かうアーサー王のように身構えた。
「高坂侯爵家のメイド、虎沢クマ嬢を誘拐せし犯人! さっさと虎沢嬢を開放し、捕縛の縄につきなさい! 今なら、誘拐監禁の罪だけだ。この上、虎沢嬢に危害を加えたり、抵抗を試みるなら、傷害、公務執行妨害の罪を被ることになるぞ!」
「不埒者! わたしのメイドを返しなさい!」
ブン
霧子も負けじと拳を振り上げる。
ワハ ワハハハハハハハハハハハ!
悪魔城と化したトキワ荘、そのめくるめく最上階ベランダのあたりから不敵な哄笑が沸き起こった!
「なにやつ!?」
侯爵が誰何すると、悪魔城前面の中空に黒ずくめのマント男が、虎沢クマを後ろ手に戒めて現れた。
「クマさん!」
「箕作さん!」
「くそ、ただちにクマ……虎沢嬢を開放しなさい!」
ジリ
背後で踏みしめる音がしたかと、思うと、小柄が投げられた。
霧子が隠し持っていた小柄を投げたのだ。
「これも、くらえ!」
侯爵も負けじと、ステッキを投げる。
小柄もステッキも、過たずマント男の眉間と胸に当ったように見えたが、音が怪しい。
チャリン カラン
頼りない音をさせて、二つとも落ちてきた。
「手ごたえはあったのに!?」
「妖術か!?」
あれは、3Dホログラムだ。大正時代の技術ではないし理解もできないだろう。
「要求があるなら言え!」
「ある者たちが、大連武闘会で優勝し、戦艦長門が最速で帰投するのを助けた」
こいつ、何を言い出すつもりだ?
大連武闘会の事は高坂家の親類筋の者がやったことにしてある。まして、長門が史実よりも早く横須賀に着いたことは、史実を知っている我々しか知らないことだぞ。
「そのために、数十人の者の命が救われた」
「それが、なんや言うのんや……」
ノンコが呟く。当たり前だろう、本来助からない命が助かったのだから、悪かろうはずもない。
「そうだろうか?」
くそ、こいつ、心を読むのか!?
「助かった命の中には邪な者も……とは思わないかい」
なんだと?
「蒔いた種は蒔いた者に刈ってもらおう……刈り方については後日伝えよう。どうか、その者たちに伝えてくれたまえ。くれぐれも、わたしを失望させることのないようにとね」
「貴様、何者だ! 名を名乗れ!」
「これは、侯爵、失礼をした。我が名はファントム、ファントムであるゆえ、君たちが目にしている者も幻だがね。実体は……ここだ!」
最後の「ここだ!」は、はるか最上階のバルコニーに戻った。
「そして、我が意に背けば……こうなる」
キャーーーーーーーー!
悲鳴が聞こえたかと思うと、はるか最上階からクマさんが突き落とされた!
「クマさーーん!」
箕作巡査がサーベルを投げ出し、クマさんを抱きとめようと前に進む。
「よせ、君まで死んでしまう!」
「箕作さん!」
「箕作巡査!」
男たちが、箕作巡査を羽交いに停める!
「は、放してくれええええ!」
ビシャ!
すごい音がして、クマさんは地面に叩きつけられる……ハズはない、あれはホログラムだ。
分かっていても目を背けてしまう。
一瞬あって目を開けると、案の定クマさんの姿は無い。
やつは、ご丁寧に、地面への激突音まで付け加えたのだ。
魔法少女ともあろう者が、見事に引っかけられた。
そして、魔法城も消え果てて、豊島郡長崎村、甲州街道との合流点で、呆然と立ち尽くしかなかったのであった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
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松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
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