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244『山親爺ゴールヌィ戦』
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魔法少女マヂカ
244『山親爺ゴールヌィ戦』語り手:霧子
ガキン! ガキン! ガキン! ガキコーン!
ぬ、ぬかったあ!
何度目かの斬撃を撃ち返され、剣旋嬢は山親爺ゴールヌィの木斧を眉間に喰らってしまって敗退した。
剣旋嬢が打ち込んだ数の方が圧倒的に多いのだけど、打撃、斬撃共に力がなく、有効が取れない。
その疲れが見えてきたところにゴールヌイの一撃を喰らってしまったのだ。
得物は違うけど、わたしも高坂流の剣術・槍術・薙刀術・手裏剣術の免許皆伝、今の一撃が当たった瞬間に勝負がついたと思った。
孫悟嬢の仲間は、みんな一回戦から戦っているが、鉄扇童子と呼ばれる少年とメルケルだけが勝ち残り。その二人も満身創痍のうえ、やっと判定勝ちに持ち込めたという際どい勝ちだ。
「う~~ん、やっぱり乳酸たまりまくりで、力が出ないよ、孫姐さん……」
眉間のたんこぶの為に満足に目も開けられなくなって剣旋嬢が戻って来る。
「いやいや、よくやったぞ。たまには妖術抜きの試合もいいもんだろ?」
「姉さんは余裕っすね」
「当たり前だ、主催者側だからな」
「え、ほんとうに試合には出ないつもりっすか?」
「おもしろい大会にするのが仕事だ、さ、いよいよ霧子……いや、薫子の番だ、がんばれよ」
「承知」
『これからは、二回戦に入りま~す。二回戦、Aリングの勝負は、ただいまの勝負で勝ちを収めた山親爺ゴールヌィ対高坂薫子になりま~す。みなさんご期待くださいま~せ(^▽^)』
ちょうど、アナウンスが入って、リングに上がる。B・Cのリングもアナウンスがあって、試合が始まる。メルケルがBリングに上がるのが視野に入ったが、さすがにエールを交わす余裕はない。
リングの端はエレベーターになっていて、互いの得物がズイ~っとせり上がって来る。試合中は、登録してある得物ならばどれを使っても構わない決まりだ。
山親爺ゴールヌィの得物が出てくるのは一呼吸遅れる。遅れるわけだ、ゴールヌイの得物は試合用とは言えバカみたいに重い斧ばかり、一番大きいのは大震災で胴体から落ちてしまった上野大仏の首ほどもある。ロシア語で『山親爺ゴールヌィ』とデカデカと書いてあるところを見ると、看板なのだろう。わたしも『高坂霧子』のノボリを立てているからね。
え?
ゴールヌイは、なんと、そのバカでかい看板のを手に持った……それも左手には剣旋嬢をぶちのめした木斧を持ったまま。
わたしは木槍を木剣に持ち替えた。
カーーーーン
開始のゴングが鳴る。
互いに対峙したままリングを一周、打ち込むタイミング……というよりは、相手の力量を計り、自分が踏み出すイメージを喚起するんだ。イメージは、将棋に似ていて数合先まで頭に浮かぶ、そして、理屈ではなく「これだ!」と思えた瞬間に踏み出す。
二周目に入ったかというところで「これだ!」になった。
トオーーー!
中段のまま踏み込み、突きと見せつつ胴を払う。
構えが変わった瞬間、ゴールヌイは小さい方の斧を繰り出す。
ブン!
すごい風圧を身をかがめて躱す。
ブオー! ドン!
野獣めいた音がして、大きい方の斧が繰り出され、空を切ってリングに地響きを立てる。
そのまま、イメージ通りの軌跡をたどって、ゴールヌイの動きと速さを掴む。
よし、これだ!
確信的な閃き! 奴が振り下ろした斧を踏み台にして牛若丸のようにジャンプ!
放物線を描く跳躍の頂点、眼下には、わたしの動きを追い切れていないゴールヌイの間抜け面。
ゴールヌイに比べては非力な木刀だけど、ポテンシャルを稼いだ分、力が籠る!
キエーー!
裂ぱくの息と共に、実り過ぎた南瓜のような頭に渾身の一撃を食らわす!
ガキーーーン!!
確かな手ごたえがあって着地……残心の吐息を静かに吐く。
ドスン ドゴドゴン……
自分自身が倒れた音と、得物を落とした音をさせて、ゴールヌイはリングに沈んだ。
『ただいまの勝負、高坂薫子の勝ち!』
ウワアアアアアアアア!
歓声が沸き起こる、剣旋嬢が負けた後の勝利でもあり、ほんの女学生にしか見えない少女が荒くれの大男を下したことで、試合会場は沸き返った。
息を整えて、両脇のリングに目をやると、メルケルがリングに伏しているのが目に入った……。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
孫悟嬢 中国一の魔法少女
244『山親爺ゴールヌィ戦』語り手:霧子
ガキン! ガキン! ガキン! ガキコーン!
ぬ、ぬかったあ!
何度目かの斬撃を撃ち返され、剣旋嬢は山親爺ゴールヌィの木斧を眉間に喰らってしまって敗退した。
剣旋嬢が打ち込んだ数の方が圧倒的に多いのだけど、打撃、斬撃共に力がなく、有効が取れない。
その疲れが見えてきたところにゴールヌイの一撃を喰らってしまったのだ。
得物は違うけど、わたしも高坂流の剣術・槍術・薙刀術・手裏剣術の免許皆伝、今の一撃が当たった瞬間に勝負がついたと思った。
孫悟嬢の仲間は、みんな一回戦から戦っているが、鉄扇童子と呼ばれる少年とメルケルだけが勝ち残り。その二人も満身創痍のうえ、やっと判定勝ちに持ち込めたという際どい勝ちだ。
「う~~ん、やっぱり乳酸たまりまくりで、力が出ないよ、孫姐さん……」
眉間のたんこぶの為に満足に目も開けられなくなって剣旋嬢が戻って来る。
「いやいや、よくやったぞ。たまには妖術抜きの試合もいいもんだろ?」
「姉さんは余裕っすね」
「当たり前だ、主催者側だからな」
「え、ほんとうに試合には出ないつもりっすか?」
「おもしろい大会にするのが仕事だ、さ、いよいよ霧子……いや、薫子の番だ、がんばれよ」
「承知」
『これからは、二回戦に入りま~す。二回戦、Aリングの勝負は、ただいまの勝負で勝ちを収めた山親爺ゴールヌィ対高坂薫子になりま~す。みなさんご期待くださいま~せ(^▽^)』
ちょうど、アナウンスが入って、リングに上がる。B・Cのリングもアナウンスがあって、試合が始まる。メルケルがBリングに上がるのが視野に入ったが、さすがにエールを交わす余裕はない。
リングの端はエレベーターになっていて、互いの得物がズイ~っとせり上がって来る。試合中は、登録してある得物ならばどれを使っても構わない決まりだ。
山親爺ゴールヌィの得物が出てくるのは一呼吸遅れる。遅れるわけだ、ゴールヌイの得物は試合用とは言えバカみたいに重い斧ばかり、一番大きいのは大震災で胴体から落ちてしまった上野大仏の首ほどもある。ロシア語で『山親爺ゴールヌィ』とデカデカと書いてあるところを見ると、看板なのだろう。わたしも『高坂霧子』のノボリを立てているからね。
え?
ゴールヌイは、なんと、そのバカでかい看板のを手に持った……それも左手には剣旋嬢をぶちのめした木斧を持ったまま。
わたしは木槍を木剣に持ち替えた。
カーーーーン
開始のゴングが鳴る。
互いに対峙したままリングを一周、打ち込むタイミング……というよりは、相手の力量を計り、自分が踏み出すイメージを喚起するんだ。イメージは、将棋に似ていて数合先まで頭に浮かぶ、そして、理屈ではなく「これだ!」と思えた瞬間に踏み出す。
二周目に入ったかというところで「これだ!」になった。
トオーーー!
中段のまま踏み込み、突きと見せつつ胴を払う。
構えが変わった瞬間、ゴールヌイは小さい方の斧を繰り出す。
ブン!
すごい風圧を身をかがめて躱す。
ブオー! ドン!
野獣めいた音がして、大きい方の斧が繰り出され、空を切ってリングに地響きを立てる。
そのまま、イメージ通りの軌跡をたどって、ゴールヌイの動きと速さを掴む。
よし、これだ!
確信的な閃き! 奴が振り下ろした斧を踏み台にして牛若丸のようにジャンプ!
放物線を描く跳躍の頂点、眼下には、わたしの動きを追い切れていないゴールヌイの間抜け面。
ゴールヌイに比べては非力な木刀だけど、ポテンシャルを稼いだ分、力が籠る!
キエーー!
裂ぱくの息と共に、実り過ぎた南瓜のような頭に渾身の一撃を食らわす!
ガキーーーン!!
確かな手ごたえがあって着地……残心の吐息を静かに吐く。
ドスン ドゴドゴン……
自分自身が倒れた音と、得物を落とした音をさせて、ゴールヌイはリングに沈んだ。
『ただいまの勝負、高坂薫子の勝ち!』
ウワアアアアアアアア!
歓声が沸き起こる、剣旋嬢が負けた後の勝利でもあり、ほんの女学生にしか見えない少女が荒くれの大男を下したことで、試合会場は沸き返った。
息を整えて、両脇のリングに目をやると、メルケルがリングに伏しているのが目に入った……。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
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孫悟嬢 中国一の魔法少女
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