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226『天城からの手紙』
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魔法少女マヂカ
226『天城からの手紙』語り手:マヂカ
ギシギシ ギシギシ
久しぶりに礼法教室の階段を上がっている。
礼法教室の横は、ただの廊下なのだけど、突き当りを進むと階段がある。
「また凌雲閣が呼んでる」
真面目な顔で霧子が言うので、しかたなくノンコには言わずに霧子の後を付いてきた。
夢か思い過ごしなら、突き当りに階段は目えないはずだ。
なんせ、礼法教室がある本館は二階建てで、その二階部分が礼法教室なのだから、その上は屋根裏しか無いわけで、従って階段などは存在しないのだ。
礼法教室の階段とは、霧子にだけ、霧子が必要と思う時、あるいは霧子が必要とされるときにだけ廊下の突き当りに現れる。
「行くよ」
霧子も成長して、自分一人でズンズン行くようなことは無い。
簡単だけど、声を掛けてくる。
ノンコを置いて行こうと言ったのも霧子だ。
ノンコは魔法少女だけども、太刀まわりよりも普通にクラスメートの中でニギヤカシをやっている方が似合っている。
じっさい、ノンコが編入されてきてからというもの、教室の空気は朗らかになってきているしね。
「天城さんという子に憶えは無いのよね?」
ダメ押しの確認。
「うん、凌雲閣の前で待っていますと書いてあった」
「そうよね……」
再生服の取り組みに感謝する大量の手紙の中に天城の手紙が混じっていたのだ。
―― 明五日 正午四十分 凌雲閣の前でお待ちしています ――
凌雲閣は震災で大破し、九月の末には陸軍によって爆破解体されている。
その凌雲閣の前というのだから、あの、異空間の凌雲閣に違いない。
嘘や悪戯なら、あの凌雲閣に通じる階段は現れないはずだ。
階段を登り切ったところにエレベーターの扉があって、乗り込む。
ズゥイーーーン
降りたところには扉が一つ。
以前は八つの扉があったが、正面の扉以外は普通の壁になっている。
ガチャリ
扉を開けると、映画館のように控えのスペースがあって正面にもう一つの扉。
すこしホッとする。
覚悟しているとはいえ、あの震災直後の浅草は霧子にはトラウマだ。
ギイイイイ
それを開けると、予想した浅草の街ではなかった。
森?
そこは、清々しいといっていいほど清涼な空気に満ちた森の中だ。
頭の上には緑の枝や葉がひしめいているのだが、足もとの下草はそれほどでもなく、人の手が入った森であることが偲ばれる。
「……天城さん、いないね」
案に反して人の気配がない。扉の前で待っているはずだ……。
霧子の返事は無い、霧子も不審には感じているのだが、諦める様子ではない。
「……なにか来る」
呟くと、霧子もそれに倣って目を凝らす。
サク サク サ サク……
すこし乱れがちに落ち葉を踏む音が近づいてくる。目前の茂みは鞍部になっているようで、音は少し下の方から上って来る。
不意に現れた。それが鞍部を超えたのだ。
白の一本線のセーラー服が似合う長身の女生徒だが、顔色が悪く、小さく身をかがめ、杖を突いて左手で腰を庇っている。
「すみません、お呼びしておいて遅れてしまいました」
「天城さん?」
「はい、天城です。妹を助けてやってほしい……ウ!」
「ちょ!」
「天城さん!」
ズサ
天城という女生徒は、最後まで言い切れず、杖にすがるようにしてくずおれてしまった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
226『天城からの手紙』語り手:マヂカ
ギシギシ ギシギシ
久しぶりに礼法教室の階段を上がっている。
礼法教室の横は、ただの廊下なのだけど、突き当りを進むと階段がある。
「また凌雲閣が呼んでる」
真面目な顔で霧子が言うので、しかたなくノンコには言わずに霧子の後を付いてきた。
夢か思い過ごしなら、突き当りに階段は目えないはずだ。
なんせ、礼法教室がある本館は二階建てで、その二階部分が礼法教室なのだから、その上は屋根裏しか無いわけで、従って階段などは存在しないのだ。
礼法教室の階段とは、霧子にだけ、霧子が必要と思う時、あるいは霧子が必要とされるときにだけ廊下の突き当りに現れる。
「行くよ」
霧子も成長して、自分一人でズンズン行くようなことは無い。
簡単だけど、声を掛けてくる。
ノンコを置いて行こうと言ったのも霧子だ。
ノンコは魔法少女だけども、太刀まわりよりも普通にクラスメートの中でニギヤカシをやっている方が似合っている。
じっさい、ノンコが編入されてきてからというもの、教室の空気は朗らかになってきているしね。
「天城さんという子に憶えは無いのよね?」
ダメ押しの確認。
「うん、凌雲閣の前で待っていますと書いてあった」
「そうよね……」
再生服の取り組みに感謝する大量の手紙の中に天城の手紙が混じっていたのだ。
―― 明五日 正午四十分 凌雲閣の前でお待ちしています ――
凌雲閣は震災で大破し、九月の末には陸軍によって爆破解体されている。
その凌雲閣の前というのだから、あの、異空間の凌雲閣に違いない。
嘘や悪戯なら、あの凌雲閣に通じる階段は現れないはずだ。
階段を登り切ったところにエレベーターの扉があって、乗り込む。
ズゥイーーーン
降りたところには扉が一つ。
以前は八つの扉があったが、正面の扉以外は普通の壁になっている。
ガチャリ
扉を開けると、映画館のように控えのスペースがあって正面にもう一つの扉。
すこしホッとする。
覚悟しているとはいえ、あの震災直後の浅草は霧子にはトラウマだ。
ギイイイイ
それを開けると、予想した浅草の街ではなかった。
森?
そこは、清々しいといっていいほど清涼な空気に満ちた森の中だ。
頭の上には緑の枝や葉がひしめいているのだが、足もとの下草はそれほどでもなく、人の手が入った森であることが偲ばれる。
「……天城さん、いないね」
案に反して人の気配がない。扉の前で待っているはずだ……。
霧子の返事は無い、霧子も不審には感じているのだが、諦める様子ではない。
「……なにか来る」
呟くと、霧子もそれに倣って目を凝らす。
サク サク サ サク……
すこし乱れがちに落ち葉を踏む音が近づいてくる。目前の茂みは鞍部になっているようで、音は少し下の方から上って来る。
不意に現れた。それが鞍部を超えたのだ。
白の一本線のセーラー服が似合う長身の女生徒だが、顔色が悪く、小さく身をかがめ、杖を突いて左手で腰を庇っている。
「すみません、お呼びしておいて遅れてしまいました」
「天城さん?」
「はい、天城です。妹を助けてやってほしい……ウ!」
「ちょ!」
「天城さん!」
ズサ
天城という女生徒は、最後まで言い切れず、杖にすがるようにしてくずおれてしまった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
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