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222『走る同級生』
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魔法少女マヂカ
222『走る同級生』語り手:ノンコ
てっきり高坂家でやるもんやと思てた。
何かと言うと、カーテンの再生服。
メイド長の春日さんの指揮で、あっという間に三百人分以上の再生服が縫い上がった。
それを震災で焼け出された人らに配るいうことになってたんやけど、それはお屋敷の門前か、原宿の駅前でうちらが配るもんやと思てた。
霧子なんかは、根っからのお嬢様で、悪気はないねんけど、態度が大きい。
うちとマヂカがご学友になってからマシになったけど、基本的には直ってない。
人のこと真正面から見るし、口も大きいし、歯ぁ見せて笑うし、距離も近いし。
令和の時代やったら、ハツラツ系のベッピンさんでかえって魅力になるやろと思う。
せやけど、今は関東大震災でひっくり返ったばっかりの大正十二年。霧子みたいな女の子は敬遠される。
マヂカやブリンダも口には出せへんけど心配してる。
本人の性格のことやし、言うたら絶対傷つくしね。いや、暴れるかも。うちらが来る前の霧子はメチャクチャやったしね(^_^;)
でも、それはいらん心配やった。
「お父様はね、教会やお寺に頼むことにしたのよ」
仕上がった再生服を箱に詰めてる手を停めて説明してくれる。
「ああ、教会だったら慣れてるよね、炊き出しとか奉仕活動で」
マヂカも思い当たる。
「せやけど、霧子が配っても、もろた人は元気出るんちゃうかなあ」
「ありがと、でもね……」
再生服を抱えて立ち上がる。
「再生服ですけど、どうぞ着てください! どうぞ、お手に取って、お気に召したら持って行って下さいな!」
満面の笑顔で実演する霧子。
めっちゃ素敵で、握手会のアイドルとかやったら文句なし。
「もうちょっと、控え目な笑顔とか……」
「餅屋は餅屋よ。ね、春日、教会に持っていくぐらいだったらやってもいいかなあ」
「ええ、松本とクマが渋谷の教会に持っていくところですから、付いていかれますか?」
「うん、いくいく!」
ということで、あたしとマヂカが霧子といっしょに松本さんの車に。ブリンダは大使館の車で渋谷の教会に行くことになった。
「行ってきまーす」
「ご苦労様です」
イギリス人とのハーフの箕作巡査が敬礼してブリンダが応える。
続くうちらの車もパッカード。
背景の高坂邸は立派な洋館やし、この場面だけを見ているとハリウッドの映画のみたいや。
「女四人だから若草物語みたいね」
霧子も、ちょっとウキウキ。
渋谷の教会が近くなると、うちの他にも自動車やらリヤカーが出入りしてるのが見える。
「ここは拠点教会なんです」
「日曜の炊き出しに、ここから東京東部の教会に配ってるんですよ」
運転手の松本さんと、クマさんが説明してくれる。二人とも、休みの日には炊き出しの手伝いをしていて、今回の準備も率先してやってくれてるらしい。
教会の前に車が付くと、大柄な神父さんが広げた両手で笑顔を増幅させて迎えてくれる。
「今日は神父さま、今日はお嬢様たちもお手伝いについて来てもらいました」
クマさんが説明すると、いっそうの笑顔になる神父さん。
「どうもありがとございます。司祭のマッキントッシュです。いつも松本さんやクマさんにはお世話になっています(^▽^)」
「さっそく荷物を……」
「そですね、では、教会の中に」
あたしらの他にも荷物を運びこんでる人らがおって、ちょっと混んでるんやけど、神父さんの指示でテキパキと動く。
「午後には、あちこちの教会に配るので……『仕分け』の二番にお願いします」
「はい。では、みなさん」
わたしらには、どこがどこか分からへんねんけど、慣れたクマさんに先導されて所定の位置に収めることができる。
高坂家の提供物は再生服だけなので、二回往復するだけで済んだんやけども、お米やらの食料品を搬入してるとこは、ちょっと大変みたい。
「わたし、手伝って帰りますから、お嬢様方は車で先にお戻りください」
「そんなことしたらクマさんは歩いて帰ることになるじゃない、わたしたちも手伝う」
「それは、申し訳ないです」
「いいのいいの、わたしたちも役に立ちたいんだから。ね、みんな!?」
「「「うん」」」
「ということだから(^_^;)」
「は、はい、ありがとうございます!」
こうして、あたしらも運び込みのお手伝いすることになる。
松本さんの半分くらいの荷物を持って、お手伝いしてると、目の前を見慣れた女の子らが走ってるのに気付く。
女子学習院の同級生、浅野さん、松平さん、岩崎さん、伊達さん、徳川さんたちが額に汗を浮かべながら走ってるやんか。
え、え、なんで?
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
222『走る同級生』語り手:ノンコ
てっきり高坂家でやるもんやと思てた。
何かと言うと、カーテンの再生服。
メイド長の春日さんの指揮で、あっという間に三百人分以上の再生服が縫い上がった。
それを震災で焼け出された人らに配るいうことになってたんやけど、それはお屋敷の門前か、原宿の駅前でうちらが配るもんやと思てた。
霧子なんかは、根っからのお嬢様で、悪気はないねんけど、態度が大きい。
うちとマヂカがご学友になってからマシになったけど、基本的には直ってない。
人のこと真正面から見るし、口も大きいし、歯ぁ見せて笑うし、距離も近いし。
令和の時代やったら、ハツラツ系のベッピンさんでかえって魅力になるやろと思う。
せやけど、今は関東大震災でひっくり返ったばっかりの大正十二年。霧子みたいな女の子は敬遠される。
マヂカやブリンダも口には出せへんけど心配してる。
本人の性格のことやし、言うたら絶対傷つくしね。いや、暴れるかも。うちらが来る前の霧子はメチャクチャやったしね(^_^;)
でも、それはいらん心配やった。
「お父様はね、教会やお寺に頼むことにしたのよ」
仕上がった再生服を箱に詰めてる手を停めて説明してくれる。
「ああ、教会だったら慣れてるよね、炊き出しとか奉仕活動で」
マヂカも思い当たる。
「せやけど、霧子が配っても、もろた人は元気出るんちゃうかなあ」
「ありがと、でもね……」
再生服を抱えて立ち上がる。
「再生服ですけど、どうぞ着てください! どうぞ、お手に取って、お気に召したら持って行って下さいな!」
満面の笑顔で実演する霧子。
めっちゃ素敵で、握手会のアイドルとかやったら文句なし。
「もうちょっと、控え目な笑顔とか……」
「餅屋は餅屋よ。ね、春日、教会に持っていくぐらいだったらやってもいいかなあ」
「ええ、松本とクマが渋谷の教会に持っていくところですから、付いていかれますか?」
「うん、いくいく!」
ということで、あたしとマヂカが霧子といっしょに松本さんの車に。ブリンダは大使館の車で渋谷の教会に行くことになった。
「行ってきまーす」
「ご苦労様です」
イギリス人とのハーフの箕作巡査が敬礼してブリンダが応える。
続くうちらの車もパッカード。
背景の高坂邸は立派な洋館やし、この場面だけを見ているとハリウッドの映画のみたいや。
「女四人だから若草物語みたいね」
霧子も、ちょっとウキウキ。
渋谷の教会が近くなると、うちの他にも自動車やらリヤカーが出入りしてるのが見える。
「ここは拠点教会なんです」
「日曜の炊き出しに、ここから東京東部の教会に配ってるんですよ」
運転手の松本さんと、クマさんが説明してくれる。二人とも、休みの日には炊き出しの手伝いをしていて、今回の準備も率先してやってくれてるらしい。
教会の前に車が付くと、大柄な神父さんが広げた両手で笑顔を増幅させて迎えてくれる。
「今日は神父さま、今日はお嬢様たちもお手伝いについて来てもらいました」
クマさんが説明すると、いっそうの笑顔になる神父さん。
「どうもありがとございます。司祭のマッキントッシュです。いつも松本さんやクマさんにはお世話になっています(^▽^)」
「さっそく荷物を……」
「そですね、では、教会の中に」
あたしらの他にも荷物を運びこんでる人らがおって、ちょっと混んでるんやけど、神父さんの指示でテキパキと動く。
「午後には、あちこちの教会に配るので……『仕分け』の二番にお願いします」
「はい。では、みなさん」
わたしらには、どこがどこか分からへんねんけど、慣れたクマさんに先導されて所定の位置に収めることができる。
高坂家の提供物は再生服だけなので、二回往復するだけで済んだんやけども、お米やらの食料品を搬入してるとこは、ちょっと大変みたい。
「わたし、手伝って帰りますから、お嬢様方は車で先にお戻りください」
「そんなことしたらクマさんは歩いて帰ることになるじゃない、わたしたちも手伝う」
「それは、申し訳ないです」
「いいのいいの、わたしたちも役に立ちたいんだから。ね、みんな!?」
「「「うん」」」
「ということだから(^_^;)」
「は、はい、ありがとうございます!」
こうして、あたしらも運び込みのお手伝いすることになる。
松本さんの半分くらいの荷物を持って、お手伝いしてると、目の前を見慣れた女の子らが走ってるのに気付く。
女子学習院の同級生、浅野さん、松平さん、岩崎さん、伊達さん、徳川さんたちが額に汗を浮かべながら走ってるやんか。
え、え、なんで?
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
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