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184『久々の登校 初めての登校』

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魔法少女マヂカ

184『久々の登校 初めての登校』語り手:マヂカ    

 

 
 うわあ…………( ゜Д゜)

 
 クマさんがドアを開けてくれて、パッカードを下りたノンコが可愛い歓声を上げる。

 女子学習院の門を入ると、そこだけでちょっとした小学校のグラウンドくらいの車寄せになっている。

 真ん中が一里塚のような植え込みになっていて、そこを中心に生徒を乗せた車がグルリと周って本館の玄関前に至って、生徒たるお嬢様方を下ろしていく。

 一度に何十台と言う車がひしめき合うので、半ば以上の車は適当なところにお嬢様を下ろしては、車だけぐるりと周って帰っていく。

 詰襟の制服を着た先生数人が立って、交通整理をしている。さすがは学習院、登校風景だけでもエスタブリッシュな空気がある。

「すごいねえ、みんな木造校舎だよ(o^―^o)」

「震災で被害は無かったの?」

「無駄に頑丈な造りになっているからね」

 ノンコの感嘆に霧子は陰のある返事。

 無駄に頑丈な校舎も昭和二十年の空襲では木造ゆえに松明のようによく燃えて、その後は敷地ごと放棄され、跡地は秩父宮ラグビー場になるはずだ。

 わたしは数年前に終わった第一次大戦後のヨーロッパで大立ち回りをやっていて、昭和も十年代になるまでは、ほとんど日本にも帰れていない。

 この時代に飛ばされたのは、ひょっとして、そういう条件があったからなのかもしれない。

 もし、この時代のわたしと出会ったら、タイムパラドクスの原理で消滅してしまうかもしれない。

「では、お嬢様、終業の三時半にはお迎えに上がります」

「ご苦労でした、虎沢」

 ノンコが――アレ?――っという顔をしている。

 ついさっき「使用人でも敬称を付ける」と霧子が言ったからだ。

 霧子は聡い、登校し始めた学友たちの注目が集まってきているのを意識しているんだ。

 パッカードが去っていくと、さっそくご学友たちが寄ってきた。

「ごきげんよう高坂さん(^▽^)」

「ごきげんよう高坂さん、もう、お体はよろしくって?(^▽^)」

「ごきげんよう高坂さん、お元気そうでなによりでございますわ(^▽^)」

「ごきげんよう高坂さん(^▽^)」

「ごきげんよう高坂さん(^▽^)」

 同じような顔をしたお嬢様がたが、紋切り型ではあるが好奇心剥き出しの笑顔で寄って来る」

「あら、ごきげんよう(^▽^)、浅野さん、松平さん、岩崎さん、伊達さん、徳川さん」

 霧子は、彼女らと同じ笑顔で、きちんと相手の顔を見て挨拶を返していく。

「あら、そちらのお二人さんは?」

 右目に眼帯をした伊達さんが、わたしとノンコに視線を向けてきた。

「渡辺さんと野々村さん、西郷様のおかかりで、今日からいっしょに登校いたしますの」

「まあ、西郷様ゆかりのお方ですの?」

「ごきげんよう、渡辺真智香です。こちらは妹分の野々村典子、よろしくお見知りおきくださいませ」

 ノンコの背中に手を回していっしょに頭を下げる。瞬間ご学友の視線がバチバチと体のあちこちでスパークする。一瞬の挨拶で品定めをしているのだ、みなそうそうたる華族の姫君、頭の中で渡辺と野々村という苗字を華族録の中から検索して、自分との軽重を計っている。

 渡辺姓の華族は八家あるが野々村は……あったか?

 ご学友たちも笑顔の底で測りかねている。彼女たちの基本的なヒエラルヒーは家格だ。前提は華族であること、華族でなければ、維新以来なんらかの勲功があった平民に限られる。

 知識としては知っていたが、これほどとは思わなかった。

 ノンコだけなにか偽名を考えてやった方がいいかったかもしれない。

「クラスも一緒ですので、みなさん、わたくし同様にお見知りおきくださいな。さ、二人とも参りましょうか」

 霧子が助け舟を出してくれて、三人で昇降口に向かうのであった。 

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
春日         高坂家のメイド長
田中         高坂家の執事長
虎沢クマ       霧子お付きのメイド
松本         高坂家の運転手 

 
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