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174『原宿旧駅舎前・2』
しおりを挟む魔法少女マヂカ
174『原宿旧駅舎前・2』語り手:マヂカ
魔法少女は自分の力だけでは異世界にも行けないし、時間を遡ることもできない。
先ごろの異世界の日光に行ったのは神田明神の依頼だったし、T型フォードに乗って異世界に出撃したのは第七艦隊のレーガン司令の魔法があったからだし、山陰の黄泉平坂に出撃したのは特務師団の正規の任務だったからだ。
ただ、時間を遡って昔の様子を探ることはできる。
イメージとしてはヘッドセットを被らないVRのようなもので、行った先では小石一つ動かすことは出来ない。
新原宿駅の駅舎の前で正魔法少女三人(マヂカ、ブリンダ、サム)と見習い魔法少女三人(友里、ノンコ、清美)の六人で飛んだ。
解体の始まった旧駅舎はフエンスで囲まれて見ることができないからだ。
工事が始まっていない三月に戻れば、原宿名物の旧駅舎が見られるはずなのだ。
六人手を繋いで輪になって六周、「えい!」と掛け声賭けて手を掲げると浮遊感があって、周囲の景色が歪み始める。時間を遡り始めた証拠だ。
途中、バランスが取れなくなり六人の輪がグニャグニャになる。正規の三人はともかく、去年までは普通の女子高生であった三人は慣れていない。
いわばベテランと初心者が混じってスカイダイビングをやったのと同じで、気を緩めると六人がバラバラになってしまう。
あっと思ったら両手が虚しくなり、両隣に居た友里と清美が飛ばされてしまった。
まあ、たかが半年のワープ。少々離れても目の届くところに着地するだろうと思いなおす。
ビュン!
時の流れを断ち切って着地する。
おっとっと……。
タタラを踏んで崩れそうな体勢を立て直す。
顔を上げると、ついさっきまで工事用フェンスで囲まれていた旧駅舎が聳えている。
少々ズレて、旧駅舎の真ん前に出てしまったのだ。
そうだ、他の五人は?
振り返るとノンコがひっくり返っている。
「大丈夫か、ノンコ?」
手を差し伸べると、目を回しながらも「あ、ごめん……」と手を伸ばしてくる。
「うっわー、なんか、ピカピカだね!」
駅舎に気が付いて目を輝かせるノンコ。
ん、ちょっとピカピカすぎないか? 名物駅舎とはいえ、大正時代建物だぞ、こんなにペンキ塗りたての臭いがするか?
口を半開きにして駅舎に見惚れるノンコは放っておいて、ゆっくりと首を回して周囲に目を配る。
え……どう見ても、令和二年の原宿ではない。
ワープすると、まず近くの景色が明らかになり、続いて周囲の景色、遠くの景色、それから道行く人々の姿が見えてくる。
竹下通りの賑わいなど、まるっきりなくて、神宮の森以外は、どこかの田舎の風情だ。
通行人の服装も、半分以上が和装で時代がかっている。
それに、踏みしめる地面の感触が、ジャリジャリとリアルで、未舗装の道路の感触。
これは、映像なんかじゃなくて……リアルだ!
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