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172『秘密基地の宿題会』
しおりを挟む魔法少女マヂカ
172『秘密基地の宿題会』語り手:マヂカ
毎年、夏休みが残り僅かになって来るとジタバタする。
ジタバタには二種類あって、一杯残してしまった宿題をどう片付けようかと冷や汗を流すジタバタ。
もう一つは、夏の思い出にどこかに行きたい、何かをしたいというジタバタ。
思い出ジタバタは、夏がいよいよ断末魔ということに関係がある。
あれほど恨めしく感じられた蝉の声も途絶え、通り雨の後、ふと涼しいと感じたりすると、あの身を焼くようだった夏の暑さが懐かしく思われる。
夏の終わりというのは、なんだか夏に人格を感じてしまって――夏が、なんとか元気なうちにやっておきたい、行っておきたい――と思ってしまうから。
「そりゃ日本人の感傷だよ」
アメリカ魔法少女のブリンダはニベもない。
「軽井沢が、あんなに開けたのは、明治のころに外国人が避暑にいったからなんだよ。夏って言うのは災厄なんだよ、ちょっとマシになったからと言って懐かしがるのは間違ってると思うぞ」
「だってえ(;゜Д゜)」
「「「おまえは、さっさと宿題やっつけろ!」」」
ノンコ以外の声が揃う。
大塚台公園の特務師団基地で夏休みの宿題合宿をやっている。
少しづつ残っていた宿題はノンコを除いて全員が終了。ブリンダは美術の課題が残っていたのだが、それもねじり鉢巻きで宿題に取り組むノンコをモデルにして水彩で十分前には描き終えている。
そこで、無駄話に興じていると、夏の終わりにつての感覚が日本とアメリカでは違うという話になったのだ。
「じゃ、ブリンダは、屋内でジッとしてるのがいいって言うの?」
「どこかへ行ってみるとか、なにかやってみるというのは賛成だぞ」
「「「え、そうなんだ」」」
「だったら、どっか行こうよ」
「「「ノンコは宿題!」」」
「みんながイジメるううう(´;ω;`)ウゥゥ」
コンコン
その時、ブリーフィングルームのドアがノックされて、テディ―が入ってきた。
「みなさん、お茶の時間です」
「あ、もうそんな時間なんだ」
「よし、休憩だあ!」
異世界人のサムが宣言したのはノンコへの優しさだったのかもしれない。
秘密基地で宿題をやっているのは効率を図るためなので、ハンガー以外では一番殺風景なブリーフィングルームでやっている。お茶はくつろぎの時間なので休憩室に移動する。
自分のスコーンとティーカップを持ってテーブルに着く、ノンコが甲斐甲斐しくティーポットを持ってみんなにサービス。友里が息抜きにモニターのスイッチを入れ、清美といっしょに動画を選んでいる。
「「あ」」
スクロールする友里の手が止まって、みんなの視線がモニターに向けられる。
モニターには、いよいよ解体が始まる原宿駅の旧駅舎の様子が映し出されていた……。
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