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154『欄干の陰』
しおりを挟む魔法少女マヂカ
154『欄干の陰』語り手:マヂカ
お世話になりました( ;∀;)!
峠のお地蔵さんの横で、千切れそうなくらい尻尾を振ってシロが見送ってくれる。
友里と二人で手を振って応える。
それが嬉しくて、一層激しく尻尾を振る。
プツン
あ!?
ほんとうに尻尾が千切れて、春日部の空に舞い上がった。
ワン!
一声吠えると、ツンが駆けだし、ピョンと飛び上がったかと思うと尻尾を咥えて、シロに返してやる。
パチパチパチ
「さすが、西郷隆盛の猟犬ね(^▽^)/」
友里が微笑ましそうに拍手する。もう一度手を振ると、お地蔵さんが「エヘヘヘ」と頭を掻いた。
「お地蔵さんかと思ったら、どうやら飼い主だな」
飼い主の正体を見極めたい気もしたが、ちょうど雲間から現れた太陽が逆光になってシルエットにしてしまったので、神の意思でもあろうかと歩みを北にとった。
赤白龍と銀龍を退治したせいか、それからの道中は穏やかだ。
道は川に沿っていて、架かった橋の向こうに西洋のお城のような建物が見えてきた。
もしもし……もしもし……
かそけき声に振り返ると、欄干の橋柱の下に居た。
「あ、また犬だ」
欄干の色に溶け込みそうになって大人しい犬がお辞儀をしている。
『御足を止めて申し訳ございません、わたくしは、春日部でお世話になりましたシロの母親でボ○シチと申します』
「いや、世話になったのはわたし達の方かもしれないんだ。シロの働きが無かったら赤白龍は倒せなかったよ」
『ご謙遜を、魔法少女さまのお力が無ければ、あの子の力ではどうにもなりませんでした』
「そのお母さんが、なにか御用なのだろうか?」
『いずれお気づきになるかもしれませんが、怨敵の首魁は赤白の鉄塔でございます』
「あ、それなら、アマチュア無線のアンテナだったわよ。シロが気づいてくれて、なんとかやっつけたわ」
まるで自分がやっつけたように言う友里だが、まあ、誇らしく思っているのだから、これでもいい。
『あれは、ゲームで言えば中ボス程度の霊魔。首魁、ラスボスは東京タワーでございます』
「やはりな」
「え、マヂカは分かってたの?」
「確信は無かったがな、東京タワーはスカイツリーが出来てからは予備電波塔に甘んじていたからな」
『そうなのです、マヂカさんが復活されて間もないころに霊魔の幼体を退治されたのもスカイツリーでございました。霊魔どもは、より力のあるものを依り代といたします』
「そうだったな……これは、難儀なことになるかもしれないね」
『東京タワーは、現役のころは、寄って来る霊魔どもを制する力を持っておりましたが。が、今は、逆に憑りつかれているようなありさまでございます』
「なにが憑りついている?」
『それは……』
ボ○シチはもどかしそうに口をパクパクさせるだけで、言葉にすることができない。
「そうか、鬼籍に入っても口にできるのはそこまでなのだな」
『申し訳ございません、お察しくださいませ』
「いや、おかげで確信が持てた。本体が明らかになっただけでも大助かりだ」
『あと、もう一つ』
「なんだ?」
『西郷さんがツンをおつかわしになったのには、もう一つの訳がございます』
ワン?
『西郷さんのお名前、実は隆盛ではないのです。西郷さんは申されませんが、西郷さんのお名前を明らかにすることも……』
「役割の一つなのだね……」
『はい、全てを解き明かした時に、神田明神さまの問題も、おのずと……』
「そこまででいいよ、ここで力を使い切っては、シロに会いに行く力が残らなくなってしまうだろ」
『恐れ入ります、それでは、これにて……』
ボ○ルシチは、いそいそと春日部への道を駆けだした、何度も振り返っては頭を下げながら。
わたしたちは、橋を渡ってシロを目指した。
橋を渡ったところに道標があり、『これより壬生(みぶ)』と書いてあった。
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