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151『地下神殿の妖・1』

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魔法少女マヂカ

151『地下神殿の妖・1』語り手:マヂカ   

 

 
 ワープして入ります。

 
 通常の入り口である龍Q館の前でシロは宣言した。

「ワープできるのか?」

『はい、わたしの力は微々たるものですが、魔法少女であるマヂカ様のオーラを被れば可能かと』

「通常の入り方じゃだめなの?」

『いまは流行り病のために通常の見学は停止されています』

「そうか、それならば仕方がない。どうすればシロに力を分けてやれる?」

『はい、わたしをマヂカ様の頭の上に掲げるようにしてください』

「こうか……おまえ、軽いなあ」

『恐れ入ります、日ごろはアニメの中に居りますので、元来重さがありません。このままでは空に浮かび上がってしまうのでツンさんの体重を半分借りております』

 ワン!

「そうか、ツンも役に立てて嬉しいんだな」

『では、まいります』

 
 ワーーープ!

 
 目の前が真っ白になり『ワーーープ!』と叫ぶシロの詠唱が巨大な浴室の中にいるようにくぐもった。

 ワーーープ! ワーーープ ワーーーーーーープ ワーーー………ワーーー………

 シロの詠唱が木霊して、小さくなっていくにしたがって、地下神殿の構造が明らかになっていく。

「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 友里が全身の空気が抜けていくようなため息をつく。

『地下22mの位置にあって、長さは177m、幅78m、高さは18mあります』

「柱もすごいよ、巨大な象、ううん、恐竜が何百匹も立ってるみたい!」

『はい、柱は一本につき奥行き7m、幅2m、高さ18m、重さは約500トンにもなります。それが全部で59本そびえ立っています』

 友里は、地下神殿の広大さにぶったまげ、感心ばかりしているが、わたしは少し疑問に思った。

「しかし、これでは50万トンタンカーの油槽の半分ほどでしかないのではないか?」

「タンカーって、そんない大きいの?」

「縦横は同じくらいだが、長さは、これの倍くらいはあるぞ。それに柱の容積を引けば、半分もないかもしれない」

『一時的に貯めておくだけの施設ですから』

「そうか……」

 中くらいのダムと比べると、この容積では二割にも満たないのではないかと思うが、深くは追及しない。

 シロにも事情があるのだろうが、悪い奴ではなさそうだ。言えないだけの事情があるのだろう。

 
 来るぞ!

 
 思ったが口にはしない、シロが言うまでは知らないフリがいいと思ったのだ。

『来ます……でも、ここは出直しましょう』

「いいや、一気に片を付ける。シロ、おまえは友里とツンを守ることに気を配って」

「マヂカ、わたしだってやるよ!」

「調理研の力でどうこうなる相手ではない……セイ!」

 勢いをつけて跳躍し、三本の柱を蹴って、来たるべきものの側面に位置を占める。

「マヂカあーーーーーーーーーー」

 友里の叫び声は、すぐに後方の天井付近に移って小さくなった。

 視野の外縁で、ツンを抱きながら淡い泡に包まれているような友里が認識できた。シロは一瞬の迷いの後に、友里とツンを避難させるのが正しいと判断してくれたようだ。

 ズガガガガガガガ ズガガガガガガガ ズガガガガガガガ ズガガガガガガガ

 地下神殿の側壁や柱を削りながら現れたのは三匹のドラゴンだ。

 二体は銀色の鱗を煌めかせ、大き目の一体は紅白のダンダラの皮膚をしている。一瞬、あの妖ではと身構えたが、あいつほどの大きさがない。

 一気に攻撃するのは憚られる。

 こいつは正体を見極めてからの方がいい。

 ズガガガガ ガラガラガラ ガラガラガラ ズガガガガ ガラガラガラ ガラガラガラ

 柱の間をめぐりながら、赤く点滅する双眼を抜かりなく配っている。

 ドン!

 大きく壁を蹴って、反対側に回る。ドラゴンは首を巡らせ体をくねらせながら音の主を見つけようとしている。

 ドン ドン ドン

 さらに柱や壁を蹴る。ドラゴンは急角度に体をくねらせて探すものだから、鱗の隙間が覗く。

 これは……!?

 鱗の隙間から覗くのは鉄骨だ。柱を蹴りながら、さらに様子を見ると、鉄骨はトラス構造を形成していることが分かった。

 長大なトラス構造……こいつらは鉄塔の……送電鉄塔の妖だ!

 トラス構造というのは、存外頑丈なもので、骨の一本や二本折っても、すぐには崩壊することは無い。

 まして、大小三体が連携している。一体にかかずらっているうちに、こちらが危うくなってしまう。

―― シロ、どのくらい見つかずに持ちこたえられる? ――

―― 柱を一本ずつ調べられたら、三分くらいが限度です ――

―― よし、二分半だけ持ちこたえてくれ、二分半後に一気に片づける ――

 セイ!

 一気に跳躍して地下神殿を抜け、春日部の街の上空に駆けあがった。
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