魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
97 / 301

097『北斗に救助される』

しおりを挟む
魔法少女マヂカ

097『北斗に救助される』語り手:マヂカ 

 

 
 間に合ってよかった!

 
 懐かしい顔が微笑んでいる。

 ポリ高においては担任であり、特務師団北斗隊長である晴美ちゃん、いや、安倍先生だ。
 前方のシートには友里とノンコと清美が配置に着いて、高機動車北斗の制御に余念がない。任務中の彼女たちはクラスメートとしての意識が無い。早く学校に戻って調理研の部活がやりたいものだ。

 どうやら、北斗に救助されたようだが、記憶が飛んでいる。

 ブリンダも同じなんだろう、わたしが懐かしがっているうちに口を挟んだ。

「北斗のレストアは済んでいたのか?」

「うん、二人が取り返してくれたM資金の半分を使う許可が下りて、ついさっき再稼働したところよ」

「スーパマンは撃破できたの?」

「目つぶしを食らわせて怯ませた程度、ノンコ、モニターに出して」

「ラジャー」

 学校では見せたことのない頼もしさでコンソールを操作する三人娘。

 モニターには、両手で目をこすりながらわたしたちの行方を探しているスーパーマンが映っている。どうやら、索敵機能に影響が出たようで、見当違いの方角にキョロキョロしている。

「スーパーマンの頭部を中心にディフエンス機能低下、コア機能には損傷はない模様」

 エンジンの操作をしながらアナライズもこなしている。ノンコの潜在能力は見かけによらず高い。

「よし、この隙に、一気にパージポイントへ向かう。進路、霊雁島!」

「霊雁島パージポイント、ヨーソロ」

 うんうん、友里のオペレーションも板についている。

「キヨミ、うちの高機動車は無事なんだろうか?」

「大丈夫、炭水車の後ろに牽引している」

「こんな感じです」

 ノンコが、モニターを切り替えると、フロントガラスにヒビが入り、あちこち傷だらけのT型フォードが北斗に振り回されるようにして付いて来ている。

「アリスは無事なんだろうか?」

「位相変換して北斗に取り込んであります」

 清美が照準用モニターを点けると、レチクル(視野内に刻まれた十字線)に張り付けられたアリスが現れた。

『ちょっと、この待遇は無いでしょ! 仮にも鏡の国のアリスさまなのよ!』

「すまない、まだ鏡の国の住人を完璧に変換する術が無いのでねえ」

『それにしても、これは無いわよ! せめてベッドとか用意しなさいよ!』

「またあとで」

 プツン。

 無慈悲にもスイッチを切る晴美隊長。

「まもなく位相変換点、各自対ショック防御」

 友里の指示で、全員がシートベルトを締める。

 

 グガガガガ グガガガガ

 

 多少の軋み音が続いたかと思うと、最高速の新幹線ほどの落ち着いた走行感に変わって、北斗は抜け出した。

 眼下には霊雁島脇、隅田川の霊雁島水位観測所が見えた。あそこからパージしたようだ。

「第七艦隊とは独立した位相変換所を確保したの。これも、マヂカとブリンダのお蔭よ」

「ということは……」

「その分、余計に働けということなのね」

「高機能化と言ってちょうだい」

 

 北斗は、基地の大塚台公園を目指して降下し始めていた……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

高嶺に吹く波風

ニゲル
ファンタジー
2021年日本。異形の怪物イクテュスが現れ人々の生活が脅かされていた。しかしそんな怪物に立ち向かう勇敢な少女達が居た。 キュアヒーロー。唐突に現れ華麗にイクテュスを倒していく美麗なヒーロー。彼女達はスマホ等の電子機器にどうやってか配信動画を発生させて人々から希望と期待の眼差しを与えられていた。 日本のある街で中学校に通うどこにでもいる女の子である天空寺高嶺。彼女には一つ重大な秘密があった。それは彼女自身がキュアヒーローだということだ。 青髪の水を操るヒーロー、キュアウォーター。それが彼女の別の名前だ。 正義感が強い彼女は配信を通じて人々に希望を与えていき、先輩ヒーローや新たになった人達とも交友を深めて未来を築いていく。 人間とイクテュスと妖精の宇宙人。様々な思惑が交差しながらも高嶺は大好きな彼女と共に今を生きていく。 過去も未来もないこの今の世界を。 ギャグありシリアスあり百合要素ありのドタバタの魔法少女達の物語の開幕!!

処理中です...