89 / 301
089『M資金・26 ハートの女王・2』
しおりを挟む
魔法少女マヂカ
089『M資金・26 ハートの女王・2』語り手:ブリンダ
T型フォードの高機動車が急停車すると、ハートの女王はドレスの裾をからげて、ノッシノッシと近づいてきた。
「さあ、ここで停車したのが運のつきだよ。まずはアリスだ!」
プシューーーーー!
女王は胸の谷間からスプレーを取り出すと、ルームミラーとサイドミラーに吹き付けた。吹き付けたのはフニフニのスライムのようなもので、もし鏡の国のアリスが出てきても、スライムに絡めとられて身動きがとれなくなってしまう。
フグウ フグフグ フググ………
鏡の中から悶絶するようなうめき声がしたが、しだいに小さくなって聞こえなくなってしまった。
「これでアリスは片付いた。さあ、おまえたち、わたしを議会まで送る栄誉を与えてやろう」
「あ、えと……議会に送るだけでいいのかな?」
拍子抜けだ、アリスを封印してまで、なにを命ずるのかと思ったら、T型フォードの高機動車をタクシー代わりに使おうというだけなのだ。
「えと、一個質問していいですか?」
「苦しゅうない、申してみよ。くだらない質問ならば、首をちょん切るぞ」
「女王陛下が、お乗りになると言うことは、ビーフイーターどもは追いかけてはこないということでよろしいので?」
「もちろんじゃ、余はこの世界の至尊たる女王じゃ。たかが獄卒のビーフイーターごときが余の邪魔だてなどができようものか」
「ならば、陛下をお送りするのは臣たるものの務め……」
オレは、運転席から下りて、恭しく後部座席のドアを開ける。T型フォードの高機動車も気を利かせて、ドアの下からレッドカーペットを女王の足元までスルスルと延ばした。
「おう、気の利いたことをいたしてくれる。それでは世話になるぞ」
女王が後部座席のステップに足をかける。
ミシミシ!
音がしたかと思うと、T型フォードの高機動車は二十度ほども左に傾いでしまった。
「畏れ多いことではありますが、全体重をお掛けあそばしますと、転覆のおそれがあるように思われます」
「ウウ……豊かな肉体は女王の威厳ではあるが、忍ばねばなるまい」
「ご明察、恐れ入ります」
「ならば……」
顔の高さまで右手を上げると、人差し指をクルリと回した。シャラララ~ンとエフェクトがあって、数秒で半分以下のスレンダーな姿になった。
「おう、お見事な!」
「それでは……」
「お待ちください!」
今度は、オレの胸の谷間からマヂカが顔をのぞかせた。
「おう、そなたは胸もなかなかのものじゃ。牛女を忍ばせておったか」
「陛下、玉体がお痩せになったのですから、スレンダーなお身に最適なお化粧になされてはと愚考いたします」
ほう……何を企む牛女? 女王の顔は、痩せようが太ろうが変わりがないほどのナニなんだが。
「良いことを申した。女王の顔は国家の顔である、スッピンでも十分な美貌ではあるが、それでも気に掛けておくのが至尊たる女王の務めであろう……おっと、車のミラーは全て封じてしまったのだな」
「恐れながら、御身のコンパクトを……」
「そうであった、王室専用の曇りなきコンパクトの鏡にて化粧を整えるといたそう……」
やった、鏡さえ開かせればアリスが……。
「なにか、引っかかっておる……」
違和感があるのか、女王は、半開きになったコンパクトをハタハタと振った。
ピヤーーーー!
なにか零れ落ちたかと思うと、親指ほどの鏡の国のアリスが転げ落ち、悲鳴を上げて逃げ去ってしまった。
そうか、アリスにとって、ハートの女王は天敵であったのだ……(^_^;)。
089『M資金・26 ハートの女王・2』語り手:ブリンダ
T型フォードの高機動車が急停車すると、ハートの女王はドレスの裾をからげて、ノッシノッシと近づいてきた。
「さあ、ここで停車したのが運のつきだよ。まずはアリスだ!」
プシューーーーー!
女王は胸の谷間からスプレーを取り出すと、ルームミラーとサイドミラーに吹き付けた。吹き付けたのはフニフニのスライムのようなもので、もし鏡の国のアリスが出てきても、スライムに絡めとられて身動きがとれなくなってしまう。
フグウ フグフグ フググ………
鏡の中から悶絶するようなうめき声がしたが、しだいに小さくなって聞こえなくなってしまった。
「これでアリスは片付いた。さあ、おまえたち、わたしを議会まで送る栄誉を与えてやろう」
「あ、えと……議会に送るだけでいいのかな?」
拍子抜けだ、アリスを封印してまで、なにを命ずるのかと思ったら、T型フォードの高機動車をタクシー代わりに使おうというだけなのだ。
「えと、一個質問していいですか?」
「苦しゅうない、申してみよ。くだらない質問ならば、首をちょん切るぞ」
「女王陛下が、お乗りになると言うことは、ビーフイーターどもは追いかけてはこないということでよろしいので?」
「もちろんじゃ、余はこの世界の至尊たる女王じゃ。たかが獄卒のビーフイーターごときが余の邪魔だてなどができようものか」
「ならば、陛下をお送りするのは臣たるものの務め……」
オレは、運転席から下りて、恭しく後部座席のドアを開ける。T型フォードの高機動車も気を利かせて、ドアの下からレッドカーペットを女王の足元までスルスルと延ばした。
「おう、気の利いたことをいたしてくれる。それでは世話になるぞ」
女王が後部座席のステップに足をかける。
ミシミシ!
音がしたかと思うと、T型フォードの高機動車は二十度ほども左に傾いでしまった。
「畏れ多いことではありますが、全体重をお掛けあそばしますと、転覆のおそれがあるように思われます」
「ウウ……豊かな肉体は女王の威厳ではあるが、忍ばねばなるまい」
「ご明察、恐れ入ります」
「ならば……」
顔の高さまで右手を上げると、人差し指をクルリと回した。シャラララ~ンとエフェクトがあって、数秒で半分以下のスレンダーな姿になった。
「おう、お見事な!」
「それでは……」
「お待ちください!」
今度は、オレの胸の谷間からマヂカが顔をのぞかせた。
「おう、そなたは胸もなかなかのものじゃ。牛女を忍ばせておったか」
「陛下、玉体がお痩せになったのですから、スレンダーなお身に最適なお化粧になされてはと愚考いたします」
ほう……何を企む牛女? 女王の顔は、痩せようが太ろうが変わりがないほどのナニなんだが。
「良いことを申した。女王の顔は国家の顔である、スッピンでも十分な美貌ではあるが、それでも気に掛けておくのが至尊たる女王の務めであろう……おっと、車のミラーは全て封じてしまったのだな」
「恐れながら、御身のコンパクトを……」
「そうであった、王室専用の曇りなきコンパクトの鏡にて化粧を整えるといたそう……」
やった、鏡さえ開かせればアリスが……。
「なにか、引っかかっておる……」
違和感があるのか、女王は、半開きになったコンパクトをハタハタと振った。
ピヤーーーー!
なにか零れ落ちたかと思うと、親指ほどの鏡の国のアリスが転げ落ち、悲鳴を上げて逃げ去ってしまった。
そうか、アリスにとって、ハートの女王は天敵であったのだ……(^_^;)。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
【書籍化進行中】魔法のトランクと異世界暮らし
猫野美羽
ファンタジー
※書籍化進行中です。
曾祖母の遺産を相続した海堂凛々(かいどうりり)は原因不明の虚弱体質に苦しめられていることもあり、しばらくは遺産として譲り受けた別荘で療養することに。
おとぎ話に出てくる魔女の家のような可愛らしい洋館で、凛々は曾祖母からの秘密の遺産を受け取った。
それは異世界への扉の鍵と魔法のトランク。
異世界の住人だった曾祖母の血を濃く引いた彼女だけが、魔法の道具の相続人だった。
異世界、たまに日本暮らしの楽しい二拠点生活が始まる──
◆◆◆
ほのぼのスローライフなお話です。
のんびりと生活拠点を整えたり、美味しいご飯を食べたり、お金を稼いでみたり、異世界旅を楽しむ物語。
※カクヨムでも掲載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる