75 / 301
075『M資金・12 第七艦隊・1』
しおりを挟む
魔法少女マヂカ
075『M資金・12 第七艦隊・1』語り手:マヂカ
敵も堪えてる。
かつては応接室にでもあったのか、塗りの禿げたテーブルに湯呑を置きながら安倍先生は言った。
自分も湯呑を持って、すぐ前のソファーに腰を下ろす。下ろした勢いで脚を組むんだけど、スカートの中が見えてしまう。
女同士の気楽さ? 相談室という閉鎖性に気を抜いた? 緩んだ姿を見せて油断させてる? 単に鈍感? いや、なにか意味があるんだろうけど、取りあえず気づかないフリをする。
「バルチック魔法少女隊の稼働率は三割を切ってる。ツェザレウィッチを撃破されて、あんたらに対抗できる魔法少女は、今のところ居ないみたいよ。とりあえずは安心して」
安倍先生は、ポリ高の常勤講師で、この五月からは、わたしたちの二年B組の担任を兼ね、調理研の顧問でもあって。それでいて、特務師団の教官であり高機動車北斗の指揮官であったりする。
凄い人物に思えるのだが、ポリ高での仕事を含め、学校や特務師団に便利使いされているとも言える。
「あ、いま、憐れみの目で見ただろ」
「え、いえ、とんでもない。それより『敵も堪えている』という枕詞は、だから休養していいというフレーズに続くのではなく、この隙に、一層の奮励努力をしろという貧乏特務師団の命令に続くような気がするんですけど、これは、所期の目的を果たせなかった前線魔法少女のヒガミでしょうか?」
「単刀直入に言おう、ここしばらくは第七艦隊と連携してやってもらいたいんだ」
「第七艦隊?」
リアルの第七艦隊は、先日オリヨールの奇襲を受けて、まだ回復していないはずだ。
「一度行ったことがあるでしょ、霊雁島に司令部がある。ブリンダには、この後に連絡するから、放課後司令部に顔を出して」
「しばらく、学校を休むことに?」
「いや、戦闘は亜空間が主になるから、今まで通りよ。防衛省の地下食堂にも通ってもらわないと、間宮さんも危機にさらすことになるからな。文化祭もあることだし、学校も忙しくなる。覚悟してほしい。回収したインゴットは特務師団で使えるように司令が交渉している。許可が下りれば、少しはマシなことができるだろう。質問は?」
「食堂のA定食が売り切れてないことを祈ります」
「あ、これを使って」
テーブルの上にA定食のチケットが置かれた。
「ありがとうございます」
「それから……」
先生は、何度目かの足の組み換えをやった。さすがに注意してやろうかと思ったら、瞬間、先生の股間にメッセージが浮かんだ。
――気を付けろ、第七艦隊司令部にはスパイがいる――
075『M資金・12 第七艦隊・1』語り手:マヂカ
敵も堪えてる。
かつては応接室にでもあったのか、塗りの禿げたテーブルに湯呑を置きながら安倍先生は言った。
自分も湯呑を持って、すぐ前のソファーに腰を下ろす。下ろした勢いで脚を組むんだけど、スカートの中が見えてしまう。
女同士の気楽さ? 相談室という閉鎖性に気を抜いた? 緩んだ姿を見せて油断させてる? 単に鈍感? いや、なにか意味があるんだろうけど、取りあえず気づかないフリをする。
「バルチック魔法少女隊の稼働率は三割を切ってる。ツェザレウィッチを撃破されて、あんたらに対抗できる魔法少女は、今のところ居ないみたいよ。とりあえずは安心して」
安倍先生は、ポリ高の常勤講師で、この五月からは、わたしたちの二年B組の担任を兼ね、調理研の顧問でもあって。それでいて、特務師団の教官であり高機動車北斗の指揮官であったりする。
凄い人物に思えるのだが、ポリ高での仕事を含め、学校や特務師団に便利使いされているとも言える。
「あ、いま、憐れみの目で見ただろ」
「え、いえ、とんでもない。それより『敵も堪えている』という枕詞は、だから休養していいというフレーズに続くのではなく、この隙に、一層の奮励努力をしろという貧乏特務師団の命令に続くような気がするんですけど、これは、所期の目的を果たせなかった前線魔法少女のヒガミでしょうか?」
「単刀直入に言おう、ここしばらくは第七艦隊と連携してやってもらいたいんだ」
「第七艦隊?」
リアルの第七艦隊は、先日オリヨールの奇襲を受けて、まだ回復していないはずだ。
「一度行ったことがあるでしょ、霊雁島に司令部がある。ブリンダには、この後に連絡するから、放課後司令部に顔を出して」
「しばらく、学校を休むことに?」
「いや、戦闘は亜空間が主になるから、今まで通りよ。防衛省の地下食堂にも通ってもらわないと、間宮さんも危機にさらすことになるからな。文化祭もあることだし、学校も忙しくなる。覚悟してほしい。回収したインゴットは特務師団で使えるように司令が交渉している。許可が下りれば、少しはマシなことができるだろう。質問は?」
「食堂のA定食が売り切れてないことを祈ります」
「あ、これを使って」
テーブルの上にA定食のチケットが置かれた。
「ありがとうございます」
「それから……」
先生は、何度目かの足の組み換えをやった。さすがに注意してやろうかと思ったら、瞬間、先生の股間にメッセージが浮かんだ。
――気を付けろ、第七艦隊司令部にはスパイがいる――
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる