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074『M資金・11 消しゴムが床に落ちるまで・6』
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魔法少女マヂカ
074『M資金・11 消しゴムが床に落ちるまで・6』語り手:マヂカ
ポトン コロ コロ コロ ……
消しゴムが教室の床に落ちて転がった。
富士山頂のカルデラに飛び込んで、ロシアの核シェルターにワープ、ツェサレーヴィチと死闘を繰り広げていた。
切れば倍に分裂再生してしまうツェサレーヴィチとの戦いは凄惨だった。亜世界のシェルターは、あたかも巨大な蟻の巣。縦横無尽、神出鬼没に現れるツェサレーヴィチは難敵だった。切っても死なないどころか、切ったところから再生して数が増えてしまう。
苦闘の末に、ひたすら突けば分裂させないで撃破できることが分かったが、接近戦では、必ず一刀両断に斬撃してしまうブリンダは苦労していた。
辛くもの勝利だった。
あと一歩でM資金を回収できるところまで追いつめたが、金のインゴット二本を取り返しただけで終わってしまった。
あれだけの戦いが、消しゴムが机から床に落ちるまでの間に起こった。
「疲れてるね」
消しゴムを拾った立石さんと目が合って慰められる。
「アハハ、暑いの弱くって(;^_^)」と誤魔化しておく。
やっと授業が終わって、ノロノロと立ち上がると、「ちょっと待って」と立石さん。
「気休めだけど……」
冷えピタもらった。「ありがとう!」と感激して、すぐさまオデコに貼り付ける。こういうのは、ウィットとかギャグの問題だから、すぐに反応して笑いに転嫁。
「あー、おっしゃれえ!」目ざとく見つけたノンコが冷やかす。「風邪ひいたの?」友里が心配顔、すると「保健室付いていこうか」と清美が迫って来る。
気が付けば四時間目の終わりで「だいじょぶだいじょぶ」とごまかし、四人揃って食堂に向かう。
三人は特務師団の隊員で高機動車北斗の乗員だけど、任務の時にしか隊員としての意識がない。北斗も予算不足で動かせない状況では、ただのクラスメートだ。
バルチック魔法少女隊の話とかしたいけど、自覚のない状態では無理だ。
切り替えろマヂカ、今はポリ高2年B組の生徒で調理研の渡辺真智香だ。新しいメニューとか食材を考えよう……と思っても、M資金やバルチック魔法少女隊のことが頭をグルグルする。マヂで切り替えなきゃ……階段を下りて廊下を抜ければ食堂というところで声をかけられた。
「真智香、飯食ったら職員室来て。いろいろ相談あるから」
タンクトップの襟元をパカパカさせながら、安倍先生。あたしたちは? という三人。
「暑いからさ、一人づつ。とりあえず、今日は真智香。じゃね……」
この人だけが、素の時と特務師団の時とに意識のずれが無い。
開き直ると、学食のランチも美味しく、A定食とラーメンをがっつり頂いた魔法少女マヂカであった。
074『M資金・11 消しゴムが床に落ちるまで・6』語り手:マヂカ
ポトン コロ コロ コロ ……
消しゴムが教室の床に落ちて転がった。
富士山頂のカルデラに飛び込んで、ロシアの核シェルターにワープ、ツェサレーヴィチと死闘を繰り広げていた。
切れば倍に分裂再生してしまうツェサレーヴィチとの戦いは凄惨だった。亜世界のシェルターは、あたかも巨大な蟻の巣。縦横無尽、神出鬼没に現れるツェサレーヴィチは難敵だった。切っても死なないどころか、切ったところから再生して数が増えてしまう。
苦闘の末に、ひたすら突けば分裂させないで撃破できることが分かったが、接近戦では、必ず一刀両断に斬撃してしまうブリンダは苦労していた。
辛くもの勝利だった。
あと一歩でM資金を回収できるところまで追いつめたが、金のインゴット二本を取り返しただけで終わってしまった。
あれだけの戦いが、消しゴムが机から床に落ちるまでの間に起こった。
「疲れてるね」
消しゴムを拾った立石さんと目が合って慰められる。
「アハハ、暑いの弱くって(;^_^)」と誤魔化しておく。
やっと授業が終わって、ノロノロと立ち上がると、「ちょっと待って」と立石さん。
「気休めだけど……」
冷えピタもらった。「ありがとう!」と感激して、すぐさまオデコに貼り付ける。こういうのは、ウィットとかギャグの問題だから、すぐに反応して笑いに転嫁。
「あー、おっしゃれえ!」目ざとく見つけたノンコが冷やかす。「風邪ひいたの?」友里が心配顔、すると「保健室付いていこうか」と清美が迫って来る。
気が付けば四時間目の終わりで「だいじょぶだいじょぶ」とごまかし、四人揃って食堂に向かう。
三人は特務師団の隊員で高機動車北斗の乗員だけど、任務の時にしか隊員としての意識がない。北斗も予算不足で動かせない状況では、ただのクラスメートだ。
バルチック魔法少女隊の話とかしたいけど、自覚のない状態では無理だ。
切り替えろマヂカ、今はポリ高2年B組の生徒で調理研の渡辺真智香だ。新しいメニューとか食材を考えよう……と思っても、M資金やバルチック魔法少女隊のことが頭をグルグルする。マヂで切り替えなきゃ……階段を下りて廊下を抜ければ食堂というところで声をかけられた。
「真智香、飯食ったら職員室来て。いろいろ相談あるから」
タンクトップの襟元をパカパカさせながら、安倍先生。あたしたちは? という三人。
「暑いからさ、一人づつ。とりあえず、今日は真智香。じゃね……」
この人だけが、素の時と特務師団の時とに意識のずれが無い。
開き直ると、学食のランチも美味しく、A定食とラーメンをがっつり頂いた魔法少女マヂカであった。
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