48 / 301
048『原宿空中戦』
しおりを挟む
魔法少女マヂカ
048『原宿空中戦』 語り手:安部晴美
コスプレ少女かと思ったのは原宿という土地柄のせいかもしれない。
盛大な水しぶきを上げて躍り出てきたのは『艦これ』に出てきそうな美少女だ。
背中には三本の煙突を背負い、両手と肩には艦載砲と魚雷発射管がついている。
殺気に満ちた瞳! 裂ぱくの気合! ただのコスプレ少女ではない!!
グアアアアアアアアアアアアアアア!!!
気合を入れて地上二十メートルほどのところに占位すると艦載砲を構えた。
「「させるかーーー!!」」
二人の魔法少女は橋の欄干を蹴って空中に飛翔し、コスプレ少女を挟んで対峙した。
ズガーーーン!
両手の艦載砲を発射するコスプレ少女、マヂカもブリンダも素早く躱して距離をとる。
「わたしは、バルチック艦隊二等巡洋艦イズムルード! 東郷提督に一矢報いんと百余年の時空を超えてやってきた。邪魔するものはぶっとばす!」
「霊魔の憑依体か、マヂカ、やるぞ!」
「おお!」
これは放ってはおけない! そう思うと、どこからかライオンオブジェが現れ、さらうようにして私を乗せると、ブーストをかけて空に舞い上がった!
ブウウウウウウウウウウウウン
数秒で千メートルの高度に達する。眼下には神宮の森が黒々と静もっている。
いつのまにか二人もそれぞれのオブジェに跨り、イズムルードを取り巻いている。
取り巻かれるのを嫌がって、イズムルードは上下左右に飛び回るが、二人は連携を保ちつつ方位の輪を縮めていく。
これまでの幼体と違って、実体と思えるほどに姿が明瞭だ。
イメージが浮かんだ。
隙を突いたイズムルードが地上すれすれを飛んで二人の攻撃を躱す。二人はイズムルードの上位から攻撃することになって、下手をすると、地上の原宿の街を破壊しかねない!
思うと体が動いた。
三人が描く円弧の下に潜り込む! よし、これでブロックできた!
ズドドドーーン! ズガガガガーーーン! ズガガガガーーーン!
イズムルードの砲撃をかわしながら、突き出した両手からビーム攻撃を加える二人。
だが、微妙にタイミングが合わない。あちこちかすりながらも身をかわすイズムルード。
「もっと、呼吸を合わせて!」
檄を飛ばすが返事はない。イズムルートに追随するのに精いっぱいなのか?
セイ!
気合を入れると、同時にダッシュしてイズムルードに突撃! あわや激突というところで左右に散開! その衝撃でスピンするイズムルード。
ズゴーーーーン!!
散開の頂点で放ったビームが対極から直撃し、装備品をまき散らしてイズムルードは爆発してしまった。
街に破片が落ちる!
杞憂であった。破片は地上に到達する寸前に、次々と掻き消えて、地上は何事もなかったように週末の賑わいを見せる原宿の街だ。
連携がとれるのに時間がかかり過ぎる。
この戦いで得た教訓だ。
「ちょっとちがうかも」
マヂカが腕を組む。
「でも、たしかに時間はかかってたぞ」
「いや、オブジェに乗っているとタイムラグができるような気がする」
「昔は、オブジェなんか使わなかいで戦っていたしな」
「そうなの?」
「ああ、実際とどめのビームは、これで間に合ったしな」
ブリンダがウルトラマンのようなポーズをとる。竹下通りを行く観光客たちが笑っている。ちょっと恥ずかしい。
「オブジェか慣れの問題か、それぞれの技量か、やっぱ連携か……」
「ここは、やっぱりクレープを食べなおさなければ考えがまとまらんなあ……」
「そうよね……」
もう一度クレープを奢るハメになった。
048『原宿空中戦』 語り手:安部晴美
コスプレ少女かと思ったのは原宿という土地柄のせいかもしれない。
盛大な水しぶきを上げて躍り出てきたのは『艦これ』に出てきそうな美少女だ。
背中には三本の煙突を背負い、両手と肩には艦載砲と魚雷発射管がついている。
殺気に満ちた瞳! 裂ぱくの気合! ただのコスプレ少女ではない!!
グアアアアアアアアアアアアアアア!!!
気合を入れて地上二十メートルほどのところに占位すると艦載砲を構えた。
「「させるかーーー!!」」
二人の魔法少女は橋の欄干を蹴って空中に飛翔し、コスプレ少女を挟んで対峙した。
ズガーーーン!
両手の艦載砲を発射するコスプレ少女、マヂカもブリンダも素早く躱して距離をとる。
「わたしは、バルチック艦隊二等巡洋艦イズムルード! 東郷提督に一矢報いんと百余年の時空を超えてやってきた。邪魔するものはぶっとばす!」
「霊魔の憑依体か、マヂカ、やるぞ!」
「おお!」
これは放ってはおけない! そう思うと、どこからかライオンオブジェが現れ、さらうようにして私を乗せると、ブーストをかけて空に舞い上がった!
ブウウウウウウウウウウウウン
数秒で千メートルの高度に達する。眼下には神宮の森が黒々と静もっている。
いつのまにか二人もそれぞれのオブジェに跨り、イズムルードを取り巻いている。
取り巻かれるのを嫌がって、イズムルードは上下左右に飛び回るが、二人は連携を保ちつつ方位の輪を縮めていく。
これまでの幼体と違って、実体と思えるほどに姿が明瞭だ。
イメージが浮かんだ。
隙を突いたイズムルードが地上すれすれを飛んで二人の攻撃を躱す。二人はイズムルードの上位から攻撃することになって、下手をすると、地上の原宿の街を破壊しかねない!
思うと体が動いた。
三人が描く円弧の下に潜り込む! よし、これでブロックできた!
ズドドドーーン! ズガガガガーーーン! ズガガガガーーーン!
イズムルードの砲撃をかわしながら、突き出した両手からビーム攻撃を加える二人。
だが、微妙にタイミングが合わない。あちこちかすりながらも身をかわすイズムルード。
「もっと、呼吸を合わせて!」
檄を飛ばすが返事はない。イズムルートに追随するのに精いっぱいなのか?
セイ!
気合を入れると、同時にダッシュしてイズムルードに突撃! あわや激突というところで左右に散開! その衝撃でスピンするイズムルード。
ズゴーーーーン!!
散開の頂点で放ったビームが対極から直撃し、装備品をまき散らしてイズムルードは爆発してしまった。
街に破片が落ちる!
杞憂であった。破片は地上に到達する寸前に、次々と掻き消えて、地上は何事もなかったように週末の賑わいを見せる原宿の街だ。
連携がとれるのに時間がかかり過ぎる。
この戦いで得た教訓だ。
「ちょっとちがうかも」
マヂカが腕を組む。
「でも、たしかに時間はかかってたぞ」
「いや、オブジェに乗っているとタイムラグができるような気がする」
「昔は、オブジェなんか使わなかいで戦っていたしな」
「そうなの?」
「ああ、実際とどめのビームは、これで間に合ったしな」
ブリンダがウルトラマンのようなポーズをとる。竹下通りを行く観光客たちが笑っている。ちょっと恥ずかしい。
「オブジェか慣れの問題か、それぞれの技量か、やっぱ連携か……」
「ここは、やっぱりクレープを食べなおさなければ考えがまとまらんなあ……」
「そうよね……」
もう一度クレープを奢るハメになった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる