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047『魔法少女におちょくられて原宿』
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魔法少女マヂカ
047『魔法少女におちょくられて原宿』 語り手:安部晴美
あれから二度出撃した。
と言っても、まだまだ訓練の範疇だけど。
東京タワーとレインボーブリッジの橋脚だ。わたしがライオン、マヂカが亀、ブリンダがアリゲーター、それぞれのオブジェに跨って、目標の周りを飛行する。それだけで、蟠っていた霊魔の幼体はボロボロと墜ちていく。
これなら簡単だ。二人の魔法少女を霊魔が集中しているところへ誘導してやるだけでかたが付く。
「これなら毎日だって楽勝だね」
明治神宮上空の霊魔をやっつけて、原宿でクレープを奢ってやる。なんだか、部活帰りのノリだ。
「あれは羽化して間もない幼体だからだ。もう少し成長すると、魔法を使わなければ退治できなくなる」
「そうなのか?」
「ああ、オレもマヂカも第二次大戦で経験済みだからな」
「あんたたち、歳はいくつなの?」
「「十七歳!」」
きっぱりと声がそろう。
「だって、第二次大戦を戦ったってゆったろ?」
「それは前世みたいなものだ。十七歳でなきゃ、歩きクレープなんてしないよ」
「歩きながら食べると、美味しさ百倍よ」
「阿部ちゃんも、やればいいのに」
いつの間にか、ブリンダも阿部ちゃん呼ばわりだ。
「いいのよ、わたしは」
「フフフ、歩きクレープが恥ずかしい年ごろ?」
「ち、ちがうわよ!」
「むきになってえ」
「「かっわいい~!」」
「か、かわいいとか言うな!」
「「アハハハ」」
「それに、こんな混雑してるとこで、クレープとか食べてたら、ひとに付いちゃったりするでしょーが!」
店によっては——混雑時の食べ歩きにはご注意ください——と張り紙をしているところもある。
「あーーたしかに」
「魔法少女は、そういうミスはしないもんだ」
「どっか、静かなとこ行こうか」
「神宮外苑とか?」
原宿近くの静かなところと言えば神宮外苑だ。
「うわあ、こんなところがあったんだ!」
それは神宮外苑よりも近かった。竹下通りを一本入ったところが森のようになっていて、鳥居が立っている。鳥居の横には『東郷神社』の石柱がそびえている。
「東郷神社?」
原宿には何度も来ているが、東郷神社は初めてだ。
「ここは、池田侯爵の屋敷があったんだけどね、昭和十五年に神社ができたの」
「海軍大臣に働きかけたのマヂカだろ、アメリカでも評判だったぞ」
「戦後の再建をニミッツに勧めたのブリンダでしょーが」
「あんたたち、やっぱ、十七歳じゃないわよ(;'∀')」
「そういうとこに拘ったら、しわが増えるぞ、安倍ちゃ~ん」
どうも、この二人は勘が狂う。
「あ、コイがいっぱい!」
「え、恋!?」
注目した先には様子のいいアベックが居た!
「アベックの下」
あ、なるほど、アベックは橋の上をゆっくり歩いていて、その橋の下は雰囲気のいい池になっている。先に行ったブリンダがおいでおいでをしている。
「鯉にエサをあげられるよ!」
「安倍ちゃん、やってみよ!」
「安倍ちゃん言うな!」
自販機で鯉のエサを買って、童心に帰ってエサやりに興じる。興じながらも、視界に入るアベックが気になる。
「境内に結婚式場があるからねえ」
「あ、あ、そーなんだ(;^_^A」
「ちょっと目の毒だったりするぅ?」
「ん、んなことないわよ」
「アハハ、安部ちゃんかっわいい~」
「お、おちょくんじゃない」
エサ袋を手に、足元の水面で口をパクパクする数百匹のコイに意識を集中する。
すると……池の底からコイではない禍々しい気配が浮き上がって来るのを感じた……。
047『魔法少女におちょくられて原宿』 語り手:安部晴美
あれから二度出撃した。
と言っても、まだまだ訓練の範疇だけど。
東京タワーとレインボーブリッジの橋脚だ。わたしがライオン、マヂカが亀、ブリンダがアリゲーター、それぞれのオブジェに跨って、目標の周りを飛行する。それだけで、蟠っていた霊魔の幼体はボロボロと墜ちていく。
これなら簡単だ。二人の魔法少女を霊魔が集中しているところへ誘導してやるだけでかたが付く。
「これなら毎日だって楽勝だね」
明治神宮上空の霊魔をやっつけて、原宿でクレープを奢ってやる。なんだか、部活帰りのノリだ。
「あれは羽化して間もない幼体だからだ。もう少し成長すると、魔法を使わなければ退治できなくなる」
「そうなのか?」
「ああ、オレもマヂカも第二次大戦で経験済みだからな」
「あんたたち、歳はいくつなの?」
「「十七歳!」」
きっぱりと声がそろう。
「だって、第二次大戦を戦ったってゆったろ?」
「それは前世みたいなものだ。十七歳でなきゃ、歩きクレープなんてしないよ」
「歩きながら食べると、美味しさ百倍よ」
「阿部ちゃんも、やればいいのに」
いつの間にか、ブリンダも阿部ちゃん呼ばわりだ。
「いいのよ、わたしは」
「フフフ、歩きクレープが恥ずかしい年ごろ?」
「ち、ちがうわよ!」
「むきになってえ」
「「かっわいい~!」」
「か、かわいいとか言うな!」
「「アハハハ」」
「それに、こんな混雑してるとこで、クレープとか食べてたら、ひとに付いちゃったりするでしょーが!」
店によっては——混雑時の食べ歩きにはご注意ください——と張り紙をしているところもある。
「あーーたしかに」
「魔法少女は、そういうミスはしないもんだ」
「どっか、静かなとこ行こうか」
「神宮外苑とか?」
原宿近くの静かなところと言えば神宮外苑だ。
「うわあ、こんなところがあったんだ!」
それは神宮外苑よりも近かった。竹下通りを一本入ったところが森のようになっていて、鳥居が立っている。鳥居の横には『東郷神社』の石柱がそびえている。
「東郷神社?」
原宿には何度も来ているが、東郷神社は初めてだ。
「ここは、池田侯爵の屋敷があったんだけどね、昭和十五年に神社ができたの」
「海軍大臣に働きかけたのマヂカだろ、アメリカでも評判だったぞ」
「戦後の再建をニミッツに勧めたのブリンダでしょーが」
「あんたたち、やっぱ、十七歳じゃないわよ(;'∀')」
「そういうとこに拘ったら、しわが増えるぞ、安倍ちゃ~ん」
どうも、この二人は勘が狂う。
「あ、コイがいっぱい!」
「え、恋!?」
注目した先には様子のいいアベックが居た!
「アベックの下」
あ、なるほど、アベックは橋の上をゆっくり歩いていて、その橋の下は雰囲気のいい池になっている。先に行ったブリンダがおいでおいでをしている。
「鯉にエサをあげられるよ!」
「安倍ちゃん、やってみよ!」
「安倍ちゃん言うな!」
自販機で鯉のエサを買って、童心に帰ってエサやりに興じる。興じながらも、視界に入るアベックが気になる。
「境内に結婚式場があるからねえ」
「あ、あ、そーなんだ(;^_^A」
「ちょっと目の毒だったりするぅ?」
「ん、んなことないわよ」
「アハハ、安部ちゃんかっわいい~」
「お、おちょくんじゃない」
エサ袋を手に、足元の水面で口をパクパクする数百匹のコイに意識を集中する。
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