34 / 301
034『自衛隊めし・2』
しおりを挟む
魔法少女マヂカ
034『自衛隊めし・2』語り手:マヂカ
アサケタニ?
ノンコがボケをかます。
それも正面ゲートの真ん前で。
リックンランドに向かう家族連れやオタクさんたちが笑ったり呆れたりしている。
わたしたちはリックンランドではなくて隊員食堂に向かうので、安倍先生が受付で手続きをしているのだ。そのために、調理研の四人は初めての自衛隊基地にキョロキョロしている。
「阿佐ヶ谷って読むんだよ」
清美が指導を入れる。
「あさがやちゅう……?」
「とんち!」
「ああ、とんちか!」
「このトンチンカン!」
「恥ずかしいから、離れてくれる」
三人が漫才をしている横で、わたしはシミジミしている。
初めて来たのは昭和五年だったか……帝都近傍のゴルフ場だった。オープンの日には森小路宮殿下に付き添って、前月に代替わりしたばかりの若宮に三番ホールでイーグルを取らせてやったっけ。あいつ、戦死するまで自慢にしてやがった。十年足らずで軍用地になって予科士官学校、振武台って命名されたのは十六年だったっけ……特務の五人が、ここの出身だったな。
「手続き終わった。行くよ」
安倍先生の声で我に返る。
「今日は無理言ってごめんね、そのかわり、今日は食べ放題だから、しっかり食べてってね。あ、わたし、青雲社の森っていいます。あ、晴美、いや、安倍先生とは大学の同期。よろしくお願いします」
「「「「よろしくお願いしま~す!」」」」
雑誌社の女性。先生の友だちで、今日の取材を企画した張本人だ。顔合わせの挨拶をしている間に広報の隊員が控えてくれ、挨拶のキリが付いたところで案内してくれる。
「ウワーー! おっきい!」
ノンコが感激のバンザイをする。気持ちは分かる、学食の三倍はあろうかという食堂は壮観だ。森さんと広報さんの話では、こういう大食堂が基地内には三つもあるらしい。
「バンザイだけにしとけ!」
興奮のあまり走り出しそうなノンコの襟首を捕まえる清美、友里は行儀よく立っているが、隊員たちの控え目な注目が集まっているのを分かっているようだ。学校に居る分には1/800の生徒に過ぎないが、若い男性ばかりの駐屯地ではやっぱ注目される。むろん無遠慮にジロジロ見られることは無いが、視野の端に捉えられたり、ガラスに映る姿を見られているのは分かる。
ただ、個人差があるようで、ノンコと清美は分かっていない。清美がノンコを叱るのは、清美の常識から外れているからだ。渋谷や原宿に居ても、同じようにしているだろう。
「さあ、さっそくですけど、こっちのテーブルへ!」
「「「「うわーー!」」」」
全員が感嘆の声をあげた。テーブルの上には人数の七倍分のランチが並べられていたのだ!
034『自衛隊めし・2』語り手:マヂカ
アサケタニ?
ノンコがボケをかます。
それも正面ゲートの真ん前で。
リックンランドに向かう家族連れやオタクさんたちが笑ったり呆れたりしている。
わたしたちはリックンランドではなくて隊員食堂に向かうので、安倍先生が受付で手続きをしているのだ。そのために、調理研の四人は初めての自衛隊基地にキョロキョロしている。
「阿佐ヶ谷って読むんだよ」
清美が指導を入れる。
「あさがやちゅう……?」
「とんち!」
「ああ、とんちか!」
「このトンチンカン!」
「恥ずかしいから、離れてくれる」
三人が漫才をしている横で、わたしはシミジミしている。
初めて来たのは昭和五年だったか……帝都近傍のゴルフ場だった。オープンの日には森小路宮殿下に付き添って、前月に代替わりしたばかりの若宮に三番ホールでイーグルを取らせてやったっけ。あいつ、戦死するまで自慢にしてやがった。十年足らずで軍用地になって予科士官学校、振武台って命名されたのは十六年だったっけ……特務の五人が、ここの出身だったな。
「手続き終わった。行くよ」
安倍先生の声で我に返る。
「今日は無理言ってごめんね、そのかわり、今日は食べ放題だから、しっかり食べてってね。あ、わたし、青雲社の森っていいます。あ、晴美、いや、安倍先生とは大学の同期。よろしくお願いします」
「「「「よろしくお願いしま~す!」」」」
雑誌社の女性。先生の友だちで、今日の取材を企画した張本人だ。顔合わせの挨拶をしている間に広報の隊員が控えてくれ、挨拶のキリが付いたところで案内してくれる。
「ウワーー! おっきい!」
ノンコが感激のバンザイをする。気持ちは分かる、学食の三倍はあろうかという食堂は壮観だ。森さんと広報さんの話では、こういう大食堂が基地内には三つもあるらしい。
「バンザイだけにしとけ!」
興奮のあまり走り出しそうなノンコの襟首を捕まえる清美、友里は行儀よく立っているが、隊員たちの控え目な注目が集まっているのを分かっているようだ。学校に居る分には1/800の生徒に過ぎないが、若い男性ばかりの駐屯地ではやっぱ注目される。むろん無遠慮にジロジロ見られることは無いが、視野の端に捉えられたり、ガラスに映る姿を見られているのは分かる。
ただ、個人差があるようで、ノンコと清美は分かっていない。清美がノンコを叱るのは、清美の常識から外れているからだ。渋谷や原宿に居ても、同じようにしているだろう。
「さあ、さっそくですけど、こっちのテーブルへ!」
「「「「うわーー!」」」」
全員が感嘆の声をあげた。テーブルの上には人数の七倍分のランチが並べられていたのだ!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
♪イキイキさん ~インフィニットコメディー! ミラクルワールド!~ 〈初日 巳ふたつの刻(10時00分頃)〉
神棚 望良(かみだな もちよし)
ファンタジー
「♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~」
「みんな、みんな~~~!今日(こお~~~~~~んにち~~~~~~わあ~~~~~~!」
「もしくは~~~、もしくは~~~、今晩(こお~~~~~~んばん~~~~~~わあ~~~~~~!」
「吾輩の名前は~~~~~~、モッチ~~~~~~!さすらいの~~~、駆け出しの~~~、一丁前の~~~、ネコさんだよ~~~~~~!」
「これから~~~、吾輩の物語が始まるよ~~~~~~!みんな、みんな~~~、仲良くしてね~~~~~~!」
「♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~
♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~」
6日後はデッドエンド ~世田高生は、死の運命を受け入れない~
とりくろ
ファンタジー
古宮明人は、心身ともにいたって健康な高校生――しかし余命はあと6日。
◇ ◇ ◇
ある冬の晩、奇妙な楽園の夢を見た明人の手のひらに、【6】と不気味な数字が張りついた。普通の人間には見えず、洗っても消えないその数字は、なんと余命の日数を示すカウントダウンであるという。
明人が助かるためには、己を捕囚した【夢】の楽園を破壊するしかない。
夢から現実に飛びだしてきた自称『古代の神』からそう聞かされ、明人は半信半疑ながらも彼とともに楽園の悪意へと挑み始める。
6日過ぎた日の朝を、生きてむかえるために。
#
※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※ 小説家になろう・カクヨムでも投稿しています。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
カティア
ファンタジー
疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。
そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。
逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。
猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる