20 / 301
020『お引越し』
しおりを挟む
魔法少女マヂカ
020『お引越し』 語り手:マヂカ
ここに住むことになったのは不可抗力からだった。
友里の事が気になって後をつけたら、妹の茜里を助けてしまった。そのために「この辺に住んでるから(^_^;)」と口から出まかせ。
大塚駅から徒歩六分のところに家を借りた。女子高生の一人暮らしも不自然なのでケルベロスを姉ということにして引っ越してきたのが昨日のこと。
ご近所の手前もあるので、引っ越しやら手続きはリアルにやった。
トラックで荷物を運び、ケルベロスを「お姉ちゃん」と呼びながら掃除や片づけ、合間に役所の届や電話の手続き、ガスや水道の開栓をやってもらい、町会長さんとご近所へのあいさつ回り。気のいいお向かいさんがゴミの回収やら分別のしきたりなどを教えてくれる。
「どうもありがとうございました」
挨拶して家に戻ると、もうすぐ日没と言う時間。
「あーーくったびれたああああ」
「男にもどらないでよ!」
「どうせなら兄貴って設定にしておいてもらいたかったぜ、ご近所の手前、必要な時だけお姉ちゃんやるのも疲れるぞ!」
「仕方ないでしょ、兄なんてことにしたら偽装で実は……なんて変な興味持たれちゃうでしょ」
「ま、いいけども。肝心の友里のことは江の島弁天に丸投げしてしまうことになってしまったじゃないか」
「いいのよ、友里さえ幸せになってくれたら。ポイントは別の所で稼ぐから」
「じゃ、今日のところは消えていいか?」
「だめよ、これから引っ越し初日の晩御飯」
「食べなくったって、どうってことないだろ」
「ダメダメ、明日出すゴミにはちゃんと晩ご飯の弁当ガラなんかが入ってなかったら疑われちゃうわよ」
「んなの、魔法でササッとさ……」
「文句言わない、コンビニ行って買って来るから、お姉さんらしくして待ってて」
「はいはい」
女らしく居住いを正したケルベロスの綾香がお茶を沸かしに立って、わたしはお財布を掴んで玄関へ。五センチほど開けたカーテンからは、その姿がお向かいさんに見えているはずだ。
コンビニでお弁当を買って、五六歩出たところで巫女さんが立っていた。
「あ……」
東池袋の生活道路に巫女さんが立っているのは、やや不自然。そう思ったら、巫女さんは帰宅途中のOLさんという感じになった。
「えと、神田明神さんとこの巫女さんですよね」
「はい、今度の要海友里さんの件は、江の島弁天さんに依頼されたので、ポイントは2です」
「えー、結果オーライだったんだから、5くらいはちょうだいよ」
「決まりですから仕方ありません。その代わりと言ってはなんなのですが、江ノ島に憑りついている化け物を退治してください。それができたら10ポイントに戻します」
「でも、争いごとはダメなんじゃないの?」
「いいえ、江ノ島は管轄外ですし、弁天様もお喜びになります。神田明神グループの評判も良くなるでしょうし」
「え? わたしって神田明神グループなの!?」
「ケルベロス、いえ、綾香さんにはお伝えしてありますが」
「もう、仕方ないなあ」
かくして、江ノ島の化け物退治に出向することになってしまったマヂカなのであった。
020『お引越し』 語り手:マヂカ
ここに住むことになったのは不可抗力からだった。
友里の事が気になって後をつけたら、妹の茜里を助けてしまった。そのために「この辺に住んでるから(^_^;)」と口から出まかせ。
大塚駅から徒歩六分のところに家を借りた。女子高生の一人暮らしも不自然なのでケルベロスを姉ということにして引っ越してきたのが昨日のこと。
ご近所の手前もあるので、引っ越しやら手続きはリアルにやった。
トラックで荷物を運び、ケルベロスを「お姉ちゃん」と呼びながら掃除や片づけ、合間に役所の届や電話の手続き、ガスや水道の開栓をやってもらい、町会長さんとご近所へのあいさつ回り。気のいいお向かいさんがゴミの回収やら分別のしきたりなどを教えてくれる。
「どうもありがとうございました」
挨拶して家に戻ると、もうすぐ日没と言う時間。
「あーーくったびれたああああ」
「男にもどらないでよ!」
「どうせなら兄貴って設定にしておいてもらいたかったぜ、ご近所の手前、必要な時だけお姉ちゃんやるのも疲れるぞ!」
「仕方ないでしょ、兄なんてことにしたら偽装で実は……なんて変な興味持たれちゃうでしょ」
「ま、いいけども。肝心の友里のことは江の島弁天に丸投げしてしまうことになってしまったじゃないか」
「いいのよ、友里さえ幸せになってくれたら。ポイントは別の所で稼ぐから」
「じゃ、今日のところは消えていいか?」
「だめよ、これから引っ越し初日の晩御飯」
「食べなくったって、どうってことないだろ」
「ダメダメ、明日出すゴミにはちゃんと晩ご飯の弁当ガラなんかが入ってなかったら疑われちゃうわよ」
「んなの、魔法でササッとさ……」
「文句言わない、コンビニ行って買って来るから、お姉さんらしくして待ってて」
「はいはい」
女らしく居住いを正したケルベロスの綾香がお茶を沸かしに立って、わたしはお財布を掴んで玄関へ。五センチほど開けたカーテンからは、その姿がお向かいさんに見えているはずだ。
コンビニでお弁当を買って、五六歩出たところで巫女さんが立っていた。
「あ……」
東池袋の生活道路に巫女さんが立っているのは、やや不自然。そう思ったら、巫女さんは帰宅途中のOLさんという感じになった。
「えと、神田明神さんとこの巫女さんですよね」
「はい、今度の要海友里さんの件は、江の島弁天さんに依頼されたので、ポイントは2です」
「えー、結果オーライだったんだから、5くらいはちょうだいよ」
「決まりですから仕方ありません。その代わりと言ってはなんなのですが、江ノ島に憑りついている化け物を退治してください。それができたら10ポイントに戻します」
「でも、争いごとはダメなんじゃないの?」
「いいえ、江ノ島は管轄外ですし、弁天様もお喜びになります。神田明神グループの評判も良くなるでしょうし」
「え? わたしって神田明神グループなの!?」
「ケルベロス、いえ、綾香さんにはお伝えしてありますが」
「もう、仕方ないなあ」
かくして、江ノ島の化け物退治に出向することになってしまったマヂカなのであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる