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#1 New Game
しおりを挟む──ピンポーン。
とある春休みの昼頃、玄関のチャイムが突如鳴った。
インターホン越しに見ると、そこそこのサイズの段ボールを片手に配達員が立っていた。
「今出ますー」
そう一言言い、水無月蓮理は玄関を開けた。配達員から配達物を受け取り、サインをすると見計らったかの様に妹の詩乃が二階から駆け下りて来て聞いてきた。
「兄さん、届きました?!」
詩乃がいつもよりテンションが高い様子で訊ねてくる。
「ん?ああ、これか?えー……と、『ワールドクリエイティブ』……?って所からだな」
箱はそこまで重くなく、一リットル程度の飲み物二つ分くらいの重さだった。
「合ってます合ってます。早速開けてきますね!」
詩乃は蓮理から荷物を受け取ると、走ってリビングの方へと走って行ってしまった。
詩乃は外では落ち着いた『優等生』として振る舞っているが、家では宿題や飯、風呂の時以外は基本ゲームばかりしている。いわゆる、ゲーマーってやつだろう…………しかし、今日は一段とテンションが高かったが。
「……あのテンションの上がり方だと…………荷物の中はゲーム関連か?」
その予想は合っていたようで、詩乃が一台のVR機『CROWN』を持って連理の元へ走って来た。
「兄さん!どうぞ、これを!」
少し照れながら『CROWN』を差し出してくる詩乃
「……?。これは詩乃のやつじゃないのか?」
一目見ただけでも新品と分かる様な汚れ一つ無い本体を見て、先程の配達物だと言うことは察せたので、聞いたが、即座に否定された。
「いえ、私のはもう一台あるので大丈夫ですよ……以前大会に出た時の一位の景品なんですよ」
そう言うと詩乃は再びリビングに向かうともう一台持って来た。
あまりゲームをしない蓮理は『大会』と言われてもよく分かっていなかったが、詩乃がやっていたゲームの大会だと言うことに気付き、「そう言えば先々月に言ってたな」と返した。
「はい。『ソロ』と『パーティー』の二種目両方で入賞したのでそれの、ですね。なので一緒にやりましょう?」
先程よりも顔を赤くしながら同封されていたと思わしきゲームのパッケージを見せながら呟いた。
「ん……そういう事なら……でも、俺もそこまでゲーム詳しくないぞ?」
蓮理はゲームのパッケージとVR機を交互に見ながら詩乃に言った。
「あ、はい!それについても大丈夫だと思います。これは『フルダイブ型ヴァーチャルリアリティ』で、レベルとかステータスも大事ですが、一番大事なのは運動神経等なので、兄さんならいい線行くと思いますよ」
「んー……だと良いけど…………」
蓮理は中学の頃から両親からの勧めで剣道と組手を習っていたことがある。だが、ある日両親の仕事が忙しくなり詩乃と二人きりの生活が増える様になり、その際に辞めてしまったのだった。
「取り敢えずやるだけやってみましょうよ!β版を少しプレイはしましたし、それに、明日が正式サービス開始なのでスタートは皆同じですよ!」
「う……ん。まあ、そうだな。とりあえずやってみるか」
結局、連理は詩乃の熱に圧されプレイする事になったのだった。
◇◇◇◇◇
詩乃の作った昼食を食べ、その他の家事を終わらせ、自室に戻った連理は『CROWN』を取扱説明書に従いセットし、ベッドに横になり初期設定を済ませる所だった。
【──初めまして。私はこの『Infinity Life Online』を管理するAI『Automatic test Navigator』の『アテナ』と言います。早速ですが、初期設定を開始します。宜しいですか?】
『アテナ』の質問に返事をすると、目の前には何も無い空間が突如拡がった。
【では、まずはゲーム内で使用するアバターの種族をお選び下さい】
『アテナ』がそう言うと様々な種族の選択画面が現れた。──人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族、幼精種や少し癖の強かったりマニアックなモノだとゾンビやスケルトン、人馬、鳥人といったものがあった。
「……ん……人間種は平均的な能力値でバランスの良い種族で、エルフはHPが低くMPと『風属性』の適性が高い……ドワーフは短身長に短足で少し操作に慣れがいるけど、《鍛治》や『土属性』の適性が高い……それぞれに特徴があるんだなぁ……」
ちなみにその他の、人馬種は簡単に言えば『下は馬、上は人間の胴』と言った、所謂『ケンタウロス』の様な見た目で、鳥人種は……うん、人間の体に鳥の様な翼……『ハーピー』の様な見た目だった。
そんなこんなで五分程悩んだ末に、蓮理は『人間種』を選んだ。
【──選択を確認。選択された種族に応じてSPを設定します…………完了。次にスキルを選択して下さい。余ったSPはゲーム開始時に30%分のみ付与されます】
『アテナ』の声が淡々と響き、取得できるスキル欄が表示される。
右上にはSPの表示があり、その隣に1000Pと記述されていた。
「[攻撃力増加]に[防御力増加]は常時発動効果のスキルで使用SPは5で……なんだこれ……[限界突破]?……えぇ…………SP750?!7割強も持ってかれるのか……説明は──『秘めたる力を得るだろう』?それだけ?……んん……取るべきか取らざるべきか」
蓮理はそんなこんなで悩み続け、一時間経ち漸く選択し終えたのだった。
最終的には次のようになった。
【プレイヤー名】レン
【種族】人間種 【性別】男 【レベル】1
【HP】57/57 【MP】105/105
【攻撃】34 【防御】22
【魔法攻撃】20 【魔法耐性】25
【知力】34 【器用】45
【スキル】
[攻撃力増加Lv3] [魔法適性Lv3] [鑑定Lv5] [限界突破] [剣術の心得Lv2] [魔法の心得Lv2]
【残りSP】
90(27)
……うん?他は良いけど……あれ?[剣術の心得]のレベルが何故か3になってる?2にしてたはずだけど……。あと、【残りSP】欄にある括弧の中……ああ、これがゲーム開始したあとのSPか?
【スキル選択の完了を確認……異常無しと判断。最後に、容姿を変更しますか?身長の調節は誤差5cmまで、その他は髪型、髪色のみ変更可能となります】
蓮理がスキルの事で疑問に思っていると、そのまま『アテナ』は次へと進んでいた。
「ええ……と…………結構再現度高いんだな?……身長と髪型はそのままで髪色は……今が黒だから逆の白にしておくか」
そうして全項目の確認が終わると『アテナ』の最終確認が入り、それに同意をするとダイアログには無駄に凝った装飾に『Welcome to Infinity Life Online』と表示され、俺の視界は白一色に染まった───。
視界が明けると、中世風の街が視界に映った。
「あれは……NPCか?…………そう言えば詩乃に何も言わないでこっち来たな。……うん、詩乃を探すか」
まあ、どんな見た目なのかも分からないんだけどな……。
そんな事を考えながら蓮理は街を見渡し、気になったことが一つあった。
「何となく予想はついてたけど店らしいものは一つも開いてないな……まあサービス開始前だし、寧ろ開始前で街に入るだけでもできたってだけでも良心的なんだろうな」
そうして開店前の店の通りを端から端まで見終わった辺りで、見覚えのある後ろ姿があることに気がついた。
「詩乃!」
突然声を掛けられ驚いたのか、「ビクッ」と小さく体が跳ねた少女は蓮理の方へ向き、嬉しそうに笑顔になり駆けて来たと思えば、周りをキョロキョロと見回し、小さな声で話しかけてきた。
「兄さん!ゲームの中なので本名で呼ぶのは辞めてください!ここでは『ツキノ』でお願いします」
そう言うと、「ステータスオープン」と呟き、連理の方へと指を振った。
「これが私のステータスです。間違えても他の人には教えないで下さいね?」
蓮理は元よりそんなつもりはなかったので素直に頷いておく。
「そう言えば兄さんはどんなスキルを取ったんですか?」
詩乃が言いながら食い気味に訊いてきた。
蓮理は情けなく感じつつも妹の圧に負け、同じように「ステータスオープン」と呟き詩乃の方へと飛ばす。
「[限界突破]……?こんなスキルあったっけ……?」
詩乃は見覚えがないのか、困惑した様子でステータス画面を見ていた。
「んー、選択画面の一番下にあったけど……詩乃の方には無かったの?」
「私のところにはどこにもありませんでしたね……βの時はこんなスキルがあるだなんて聞いたこともありませんでしたね……正式サービスに向けて実装されたんですかね……?」
結局いくら考えても分からないと言う結論に至り、サービス開始前の為街の外に出ることも出来ないので、ログアウトしたのだった。
ログアウトすると、もう既に夕飯時だったのでご飯を作り詩乃を呼ぶ。
丁度詩乃もログアウトしたようで、リビングへ一緒に行き席に着き食べ始めると、詩乃が一度箸を起き口を開いた。
「ログアウトした後少しだけ[限界突破]のスキルについて調べてみたんですけど、何も情報がありませんでした」
蓮理は一瞬何の事か分からなかったが、直ぐに先程取ったスキルの事だと気づいた。
「何も?」
「はい、情報どころか選択画面に表示すらされていないみたいでした」
蓮理が聞き返すと詩乃は小さく頷き返答した。
「……流石に運営側に報告しといた方が良いかな?バグとかだと大変だろうし……」
「ですね。その方が良いかと」
そう言い、蓮理は詩乃に教えてもらいながら運営へ報告した。その結果としては仕様だと言うことだった。
運営の返信によると、特別生産版でのみ極々低確率で初期スキル選択画面でのみ人外種以外にも[限界突破]スキルが表示される仕様らしい。
「そんな仕様があったとは……羨ましいです」
ゲーマーである詩乃としてはバグでないのなら自分も引きたかったのだろう。心の底から羨しそうにしていた。
ちなみに、初期SPが1000もあったことだが、そちらに関してはβ版プレイヤー、特別生産版限定特典らしく詩乃も受け取れていたそうだ。
その後は普通に夕飯を食べ終え、いつも通りの会話やβテスト時の情報を集め、寝ることにしたのだった。
──翌朝。いつも通りに起き、朝のルーティンと夏休みの宿題をこなし、ログインの準備をしていた。
「さて、早めに入っておくか」
詩乃はもう既にログイン待機済みらしい。先程SNSの家族用グループにメッセージが来ていた。
『CROWN』を装着し、パスワードを入力後少しするとログイン認証中と言うメッセージが表示され、少しすると光に包まれた。
目を開けると昨日見た街並みが視界に映った。だが、様子も少し違っていた。
昨日閉まっていた店が全て開いており、NPCが街を歩いており賑わっていた。
少し周りに圧倒されていた蓮理ははっとし、詩乃を探すことにした。
探す為にあちこちを歩き回り見回した。周りには人間種、エルフや幼精種、少ないがドワーフ等も居た。そして、暫く辺りを見回していると、昨日と同じ見慣れた後ろ姿がエルフの少女と人間種の少女と共に雑談していた。
「んん……声を掛けるべきか?でも詩乃の友達とかだったら邪魔しちゃアレだよなー………」
蓮理が少し離れた所でそんな葛藤をしていると、気付いたのか一人の少女が走ってくる。
「兄さん!居たのなら声を掛けてくださいよ……」
詩乃は照れ臭そうにしながら話しかけてきた。後ろには先程話をしていた子たちがこちらの様子を伺っていた。
「いや、あの子たちとなんか話してるんじゃないかなぁって思ったら話しかけるタイミング見失った……んで、あの子たちは?」
あまりにも話したそうにしていたのが見えたので連理は詩乃に聞いた。
「えっと……シーナさん、ユナさん」
「「うん?どうしたの?」」
詩乃が二人を手招きすると突然で驚いたのか、ぎこちなく反応した。
「エルフの方はシーナさん、人間種の方はユナさんです。βテストの時一緒にパーティを組んでいました」
二人は紹介されると軽く会釈してきた。
「エルフ種のシーナです。ツキノから良く聞かせてもらってました」
「私は人間種のユナです~。ツキノさんからお兄さんがいるって聞いてて、優しそうな方で安心しました~」
「あ、これはご丁寧にどうも。うた……ツキノの兄のレンです。妹がお世話になってる様で……」
詩乃の紹介の後に軽く挨拶をした。…………詩乃、いったいこの二人に何を話した……?
─────────────────────────
その後は軽く雑談とフレンド登録をし、軽く狩りに行こうと言う話になり、街の外の森に来ていた。
「お兄さん、そっちにウサギ行きました!」
「了解!」
「お兄さん」というのは蓮理の事だ。二人とも詩乃と同じ年で、詩乃の兄だからと言う安直な理由でそう呼ばれることになった。
因みに今は絶賛戦闘中。街を出たところまでは良かったのだが、少し歩き森の入口に差し掛かった辺りでホーンラビットの群れに囲まれたのだった。
蓮理はホーンラビットの首元を的確に斬り、一撃で仕留めていく。ホーンラビットのHPが0になると、ポリゴンとなり消えた。
討伐報酬を報せるダイアログが表示されるが、四人は一先ず無視し、連続で討伐していった。
五分程それを続けていると、ホーンラビットの群れは無くなった。討伐数を見てみると合計で四十八匹も倒していた。
「やっと終わりましたね……」
詩乃が溜息を吐きながらそう呟いた。
「ですね……それにしても……」
シーナとユナも素材などを確認しながら呟くと、シーナが若干テンションが上がった様子で訊いてきた。
「お兄さんの剣凄かったですね!剣道か何かやってたんですか?」
「ん?ああ、親に勧められて少しね」
連理はシーナの質問にワンテンポ遅れて答える。それを「おおー」と謎に感心した様子で聞いていた。
「でもやっぱり刀とは勝手が違うね……なんて言うかこう……斬る時の振り心地というか、刀は技、剣は力って感じで、要求されるモノが違うから慣れるまでちょっと時間が掛かるかな……」
腰の左側に据えた《ルーキーソード》を見ながら呟いた。
「たしか、叩き切るんでしたっけ?西洋の剣って」
「そうだね。刀は師匠の元にいた時に持ったことあるけど、直剣は無かったんだよなぁ」
「刀、あるんですね……」
その後も雑談をしながらも狩りを続け、時刻は昼を周ったので昼食を摂ろうと言うことになり、ログアウトした。
「午後から二人は用事があるらしく、プレイできないみたいなんですけど……どうします?」
ログアウトし、詩乃と昼食を摂っていると詩乃はスマホ片手にそう言ってきた。…………飯食べながらスマホを弄るんじゃない。
「そうだな……刀って今のところ無いんだよな?」
「そうですね。まだ鍛造方法とか見つかっていないらしくて作りたくてもできない状態みたいですね」
「ん、直剣の扱いもまだ慣れないし付き合ってもらってもいいか?やりたいことあるなら無理にとは言わないけど……」
先程の狩り中にも言っていたが、蓮理は刃を落としてはいるが、日本刀で素振り……と言うより実戦形式の形稽古だが。
それにより、刀の扱い方などに関しては同じ道場の中ではトップクラスの実力があった。
「分かりました。正直まだできることも少ないですし、レベル上げをしたいのでパーティ組んで午後も狩りでいいですね」
「じゃあ、ログインしたら女神像の前で集合で良いか?」
「はーい」
因みに女神像と言うのは街の真ん中に設置されている、所謂『転移ポータル』と言う物である。
昼食を済ませた後片付けをして再度ログインし、女神像の前まで移動する。
「あ、兄さん!」
「うた……んん、ツキノ」
「……できるだけ早目に慣れてくださいね」
慣れずに本名で呼びそうになる蓮理に詩乃が軽く注意する。その他の注意点などを聞いた後、詩乃は寄りたい所があるらしく先に向かう事になった。
「ん?おお、ツキノの嬢ちゃんか」
「アルドさん、β振りです」
詩乃について行くと広場の隅に展開された出店の様な場所だった。
祭りでよく見る屋台の後ろに鍛治用の炉がある感じだ。よく周りを見てみると何処も同じ様な感じなのであろう道具やらが並んでいた。
「嬢ちゃんはβの時と同じで良いのか?……まあ、品質やら使える素材はリセットされてるから、そんなに同じ物は出来ねえが」
ドワーフ種の様な低目の身長に無精髭を生やした男が詩乃と装備について話し合っている。同じβプレイヤーの様だが。
「んで、そっちが前言ってた嬢ちゃんの兄貴か?」
「ええ、紹介しますね。こちら、βテストの時からお世話になっているドワーフ種のアルドさんです。主に[鍛治]でβの頃からトップ層に入る程の実力なんですよ」
詩乃から紹介が終わった後連理も軽く挨拶を返す。
「ツキノの兄のレンです。妹がお世話になってるようで……」
「そんな固くなんなくても良いぞ!」
そう言いながらアルドはガハハと豪快に笑って見せた。
「それでアルドさん、弓ってやっぱりまだ……?」
「そうだなぁ、嬢ちゃんがβの時に使ってた……何だっけか?あの名前……」
「《聖絶弓パンドーラ》ですね。あれは……β時での最高レアリティでしたし、仕方ないのでは?」
詩乃が言う、《聖絶弓パンドーラ》とは、βテスト時発見された数少ないレア度Godsと破格の性能から、同レアリティ武器の数をそのまま含め『五神器』と呼ばれる程の物の一つだった。
勿論そんな物が引き継ぎになるはずもなく、今は持っていない。
「それはそうなんだがなぁ……生産職………いや、一ゲーマーとして妥協はしたくねぇしよぉ…………おし、んじゃあ嬢ちゃんと嬢ちゃんの兄貴には俺の[鍛治]スキル上げに付き合ってもらうぞ!勿論、対価として素材持ち込み時は金は要らん」
「え!?良いんですか!?」
「い、いや流石にそれは……」
詩乃は喜んだが、知り合ったばかりの連理にとっては気が引ける提案だった。
「流石に会ったばかりですし、いきなりタダにしてもらうのは……」
「言っただろう?[鍛治]スキル上げって。タダじゃねえよ…………はぁ」
それでも引こうとしない蓮理を見てアルドは小さく溜め息を吐き、更に提案をする。
「ったく、頑固な坊主だな……。んじゃあ、スキル上げの他にも時々俺から依頼を出す。それなりに難易度の高いモンスだった時は報酬は渡すが、それ以外の時は依頼の報酬が武具って事でどうだ?」
その問いに連理は「こちらにまだメリットが多すぎるような」と考えながらも、アルドを見るとアルドも「これ以上は譲歩せんぞ」と言うかのような傍から見たらカオスな雰囲気になっていた。
「…………分かりました。そちらがそれでいいなら」
「おう。お前さん、損する性格してんな?」
「あはは……」
数分考えた結果、蓮理が折れ、アルドはそれに呆れていた。
その後は当初の予定通り詩乃の用事を済ませ、夕飯までの時間狩りをすることにしたのだった。
「よっと。悪いツキノ、オオカミそっち行った!」
「任せてください!」
二人は森に少し入った所でフォレストウルフと戦っていた。フォレストウルフは動きが素早く、狙いを定めるのが難しいことで有名であったがそこは流石経験者の詩乃。
動きのパターンを見切り、予測される位置への偏差射ちで次々とフォレストウルフを仕留めていく。
採取とウルフ狩りで、気がつけば夕飯時になっていた。
「そろそろログアウトするか」
「そうですね」
街に戻りログアウトし、夕飯を済ませ再度ログインする。
「おう、嬢ちゃん。狩りは終わったのか?」
「んー、この後も狩りに行くつもりです」
「良くやるよなぁ……んで、今度は何の用だ?」
「ええ、素材の買取をお願いできないかと思いまして」
軽く雑談を交えながら素材の買取を済ませる詩乃。と、そこに蓮理がログインしてくる。
「おう、嬢ちゃんの兄貴か」
「兄さん。これ、さっきの狩りの買取分です」
「ん?ああ、ありがと」
確認のメッセージにも了承を押し、詩乃からお金を受け取る。その後はお互いしないと行けないような用事などはなく、別行動を取る事になった。
「さて……と。単独は初か……手頃なのは──丁度いいのがいたな」
蓮理の視線の先には肌が緑色の人型生物……ゴブリンがいた。
……レベルは6か。行けるか?
蓮理が剣を構えると、ゴブリンも存在に気付いたのか鳴き声を上げながら棍棒を構えて真っ直ぐ走ってくる。
蓮理は剣を構えたまま、ゴブリンを見据え心の中でタイミングを合わせるためにカウントをした。
……5……4……3……2………1……。
──今っ!!
「ふっ!!」
ゴブリンは全力で走っていた為、止まることが出来ず自身の出した速度と連理の振るった横薙の一閃によって両断され、一度でHPが全損し粒子となって消えた。
【レベルが5になりました】
【スキル[剣術の心得]がLv2からLv3に上昇しました】
【スキル[攻撃力増加]がLv3からLv4に上昇しました】
【スキル[鑑定]がLv5からLv6に上昇しました】
【スキルポイントを2付与します】
レベル上昇のアナウンスが入り、狩りを中断してステータスを確認すると、レベルが4までスキルポイントが増えていなかったのが、27から29になっていた。その他にスキルもレベルが上がっていた。
ついでに時間を確認するとキリが良かったので、街に戻ることにした。
「えーっと、フレンドリストから通話を掛ける相手を選んで……と。あった、これか?」
詩乃へと寝る旨を伝える為にフレンドリストから詩乃へと通話を掛けると、三回のコール音がなった後に声が聞こえてきた。
『兄さん?どうかしましたか?』
『いや、時間も丁度いいし俺は寝るけどう…ツキノはどうする?』
詩乃は少し悩み、結果『もう少しやってますね。お休みなさい、兄さん』と言って通話を終了した。
「さて、んじゃあ寝ますかね」
蓮理はシステムタブからログアウトし、布団に潜り寝るのだった。
応援ありがとうございます!
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