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旅は道連れ
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「!」
「……とりあえず、正解にしておこう。半分ズレている気がするが」
それだ、と顔を上げる皆とは対照的に蟀谷を揉んでいるリート。煮え切らない賛辞に、ラフェが納得いかない顔をする。
「いいか。魔獣と言えど生物だ。無機物無機質な魔素溜りから生物が生まれて堪るか。生物の根源覆すな。その都市伝説が生まれた理由は単純。魔素溜りの近くに偶然生活していた普通の獣が魔素溜りの濃密な魔力に侵され、魔物へと転移することから、魔素溜りは魔物を生み出すという迷信が流行ったのだ」
「なるほど……?」
いまいち分かっているのかいないのかハッキリしないラフェの回答を冷ややかに見据えるリート。リートの説明を頭の中で整理していたヴィディーレは、ゆっくりと口を動かす。
「つまり、元は普通の動物だったが、魔素溜りによって魔力が付加された結果、魔獣となり、魔法が使えるようになった。その魔法は、元の生物の能力に起因するってことか?」
「ザッツライト。ラフェよりマシな脳筋で助かった」
「いちいち一言多い」
褒めるなら褒めるだけにしろ、と苦情を入れつつほっと息をつく。まだ釈然としない顔のインハーバーとセンシアに向けて、リートがかみ砕いていく。
「要するに、今回で言えば、元はただの蝙蝠だったが、何処ぞの魔素溜りによって魔獣になったと。で、蝙蝠というのは超音波という人間には聞こえない音域の音を出して周囲の探索を行ったりする。それが魔獣となったせいで、超音波に魔力が共鳴し、特殊な魔法となった」
ふむふむ、と頷くのをみて、ここまでは良いな?とリートは続ける。
「で、だ。今回の件は、精神干渉魔法が鍵となる。そして、古来より精神干渉魔法には五感が使われる。特に聴覚というのはかなりの割合をしめる」
「音を使って精神を操るって事か?そんな事が出来るのか?」
「それでも冒険者か。いるだろう、セイレーンという声を使った魅了によって人を襲う魔獣が」
冷ややかに罵倒されたセンシアがはっと息をのむ。インハーバーも瞠目した様子でリートを凝視している。
「奴らのやっている事は、声に魔力を乗せて相手の脳を揺さぶり精神干渉するという事だ。つまり、音で相手を操ることが出来る。では、その音が超音波であったら?結局音である事には変わりないんだ。聞こえずとも精神干渉の媒体となるのは理論的にあり得る」
で、コイツは超音波操る蝙蝠だ、とチラリと視線を向ける。
「結論。魔素溜りによって魔物となった蝙蝠が今回の件を引き起こした。
その手の魔物は元が普通の獣だからランク的にも低く、物理的には弱い。だがコイツは偶然にも超音波を利用した精神干渉魔法を開花、それを利用して魔物どもを操り今回の大事になった。
で、ここまで小さくて弱いと逆に叩くのが面倒な上に証拠なかったからな。護衛の猛者どもを軽く虐めて相手の危機感を煽った上で、超音波を計測。存在を確認すると同時に、どうせ猛者から離れず守ってもらうんだろうと思ったから、猛者どもごと一気に焼いた。以上」
すらすらと述べられた結論に、ポカンと口を開けるインハーバー。ヴィディーレは、頭痛がすると蟀谷を揉んでいる。ラフェは外の光景が気になるようだ。センシアが呻く。
「なんかもう、今までの知識と経験が一気に色褪せそうだ」
「そうでもないさ。物事にはレアな例外があるだけ。今回がそのイレギュラーだっただけだ。気にするだけ無駄だ」
肩を竦めたリートは慰めを口にする。そんな台詞が出てくるなんて、と驚愕に顔を染めるセンシアには笑顔で喧しいとお礼を返す。
「俺とて経験と歴史には敬意を払う。意味なく先達を貶すものか」
あっさりとそう口にしたリートだったが、ふと険しい顔をした。それに気づいたヴィディーレがまだ何かあるのか、と首を傾げると、一瞬ためらった末に、いやと首をふった。
「なんとなく、作為的な何かを感じただけだ。特異的な能力をもったイレギュラーが生まれ、何等かの理由でここに流れ着き、こんな大事を引き起こした。上手く行きすぎな気がしたのだが……考え過ぎだろう」
全く根拠が無いからな。そう結んだ彼はやおら立ち上がり、近くで鳥の数を数えていたラフェの首根っこをひっつかむ。
「ぐぇ」
「さて、俺たちの仕事はここまででいいだろう。それ以上の詳しい話はそいつらに聞け。俺は疲れた」
さっさとそれだけ告げるとラフェを引きずって退出しようとする。しかし、ドアを開けた体制でふと立ち止まると体をひねりインハーバーを見つめた。
「何だ?」
「闘いに参戦した冒険者としての報酬に加え、作戦指揮した軍師として特別報酬を要求する」
「ああ、そんな事か。当然その用意はある」
「そうか。それは重畳」
ニヤリと笑ったリートが足取り軽く出て行く。首が締まって青ざめつつも同情的な視線をインハーバーに向けるラフェを連れて。後には嵐が去ったかのように呆然とするセンシアと、疲れ切った顔のインハーバー、そして、その彼になんとも言えない哀れみの視線を向けるヴィディーレ。
「何だ」
「いや、なんというか、その」
もごもごと口ごもっていたヴィディーレは、しかし、精一杯の良心にかられ、ぼそりと告げる。
「リートの請求には気を付けろ。あの守銭奴、搾り取れる所からは全力で絞り取る、がモットーだ。俺もそれでぼったくられた」
「は?」
きょとん、とした顔を晒すインハーバー。しかし、まぁその内分かるだろうと後にしたことを彼は後に後悔する。
何故なら。
「何だコレはっ!」
リートの提示した報酬が法外すぎてギルド会館がびりびりと揺れる程の大絶叫をする羽目になるのだが、まぁ、それは余談である。
「……とりあえず、正解にしておこう。半分ズレている気がするが」
それだ、と顔を上げる皆とは対照的に蟀谷を揉んでいるリート。煮え切らない賛辞に、ラフェが納得いかない顔をする。
「いいか。魔獣と言えど生物だ。無機物無機質な魔素溜りから生物が生まれて堪るか。生物の根源覆すな。その都市伝説が生まれた理由は単純。魔素溜りの近くに偶然生活していた普通の獣が魔素溜りの濃密な魔力に侵され、魔物へと転移することから、魔素溜りは魔物を生み出すという迷信が流行ったのだ」
「なるほど……?」
いまいち分かっているのかいないのかハッキリしないラフェの回答を冷ややかに見据えるリート。リートの説明を頭の中で整理していたヴィディーレは、ゆっくりと口を動かす。
「つまり、元は普通の動物だったが、魔素溜りによって魔力が付加された結果、魔獣となり、魔法が使えるようになった。その魔法は、元の生物の能力に起因するってことか?」
「ザッツライト。ラフェよりマシな脳筋で助かった」
「いちいち一言多い」
褒めるなら褒めるだけにしろ、と苦情を入れつつほっと息をつく。まだ釈然としない顔のインハーバーとセンシアに向けて、リートがかみ砕いていく。
「要するに、今回で言えば、元はただの蝙蝠だったが、何処ぞの魔素溜りによって魔獣になったと。で、蝙蝠というのは超音波という人間には聞こえない音域の音を出して周囲の探索を行ったりする。それが魔獣となったせいで、超音波に魔力が共鳴し、特殊な魔法となった」
ふむふむ、と頷くのをみて、ここまでは良いな?とリートは続ける。
「で、だ。今回の件は、精神干渉魔法が鍵となる。そして、古来より精神干渉魔法には五感が使われる。特に聴覚というのはかなりの割合をしめる」
「音を使って精神を操るって事か?そんな事が出来るのか?」
「それでも冒険者か。いるだろう、セイレーンという声を使った魅了によって人を襲う魔獣が」
冷ややかに罵倒されたセンシアがはっと息をのむ。インハーバーも瞠目した様子でリートを凝視している。
「奴らのやっている事は、声に魔力を乗せて相手の脳を揺さぶり精神干渉するという事だ。つまり、音で相手を操ることが出来る。では、その音が超音波であったら?結局音である事には変わりないんだ。聞こえずとも精神干渉の媒体となるのは理論的にあり得る」
で、コイツは超音波操る蝙蝠だ、とチラリと視線を向ける。
「結論。魔素溜りによって魔物となった蝙蝠が今回の件を引き起こした。
その手の魔物は元が普通の獣だからランク的にも低く、物理的には弱い。だがコイツは偶然にも超音波を利用した精神干渉魔法を開花、それを利用して魔物どもを操り今回の大事になった。
で、ここまで小さくて弱いと逆に叩くのが面倒な上に証拠なかったからな。護衛の猛者どもを軽く虐めて相手の危機感を煽った上で、超音波を計測。存在を確認すると同時に、どうせ猛者から離れず守ってもらうんだろうと思ったから、猛者どもごと一気に焼いた。以上」
すらすらと述べられた結論に、ポカンと口を開けるインハーバー。ヴィディーレは、頭痛がすると蟀谷を揉んでいる。ラフェは外の光景が気になるようだ。センシアが呻く。
「なんかもう、今までの知識と経験が一気に色褪せそうだ」
「そうでもないさ。物事にはレアな例外があるだけ。今回がそのイレギュラーだっただけだ。気にするだけ無駄だ」
肩を竦めたリートは慰めを口にする。そんな台詞が出てくるなんて、と驚愕に顔を染めるセンシアには笑顔で喧しいとお礼を返す。
「俺とて経験と歴史には敬意を払う。意味なく先達を貶すものか」
あっさりとそう口にしたリートだったが、ふと険しい顔をした。それに気づいたヴィディーレがまだ何かあるのか、と首を傾げると、一瞬ためらった末に、いやと首をふった。
「なんとなく、作為的な何かを感じただけだ。特異的な能力をもったイレギュラーが生まれ、何等かの理由でここに流れ着き、こんな大事を引き起こした。上手く行きすぎな気がしたのだが……考え過ぎだろう」
全く根拠が無いからな。そう結んだ彼はやおら立ち上がり、近くで鳥の数を数えていたラフェの首根っこをひっつかむ。
「ぐぇ」
「さて、俺たちの仕事はここまででいいだろう。それ以上の詳しい話はそいつらに聞け。俺は疲れた」
さっさとそれだけ告げるとラフェを引きずって退出しようとする。しかし、ドアを開けた体制でふと立ち止まると体をひねりインハーバーを見つめた。
「何だ?」
「闘いに参戦した冒険者としての報酬に加え、作戦指揮した軍師として特別報酬を要求する」
「ああ、そんな事か。当然その用意はある」
「そうか。それは重畳」
ニヤリと笑ったリートが足取り軽く出て行く。首が締まって青ざめつつも同情的な視線をインハーバーに向けるラフェを連れて。後には嵐が去ったかのように呆然とするセンシアと、疲れ切った顔のインハーバー、そして、その彼になんとも言えない哀れみの視線を向けるヴィディーレ。
「何だ」
「いや、なんというか、その」
もごもごと口ごもっていたヴィディーレは、しかし、精一杯の良心にかられ、ぼそりと告げる。
「リートの請求には気を付けろ。あの守銭奴、搾り取れる所からは全力で絞り取る、がモットーだ。俺もそれでぼったくられた」
「は?」
きょとん、とした顔を晒すインハーバー。しかし、まぁその内分かるだろうと後にしたことを彼は後に後悔する。
何故なら。
「何だコレはっ!」
リートの提示した報酬が法外すぎてギルド会館がびりびりと揺れる程の大絶叫をする羽目になるのだが、まぁ、それは余談である。
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