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捕獲された王子様

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そういえば、
「不審船はどこに行っちゃったんでしょうね?」
レーダーで見たには不審船は真っ直ぐこの大型貨物船に向かっていた。貨物を盗む不審船でなかったにしろ、何か目的はあったはずだ。
私達がチョロチョロしたくらいで目的も果たさず逃げちゃうかな?
宇宙船を飛ばすのにはかなりの燃料を使う。この世で燃料費は高いのだ。目的もなしに飛ばすとは思えない。積み荷を狙ってじゃなければ…あと考えられるのは。
「密航?」
こんな大きい船なら隠れるとこはいっぱいあるし。
「それだと惑星アルタを飛び立つ前に乗り込んだほうが確実だろ」
マル先輩がもっともな事を言う。確かに、始めから乗って隠れてたら小型船を飛ばす必要もないし。
「…チーズ買い忘れたとか?」
「それはお前だ」
何かの用事で飛び立つ前に乗れなかったら、あり得る話じゃないの?
そう、チーズさえ買い忘れなければ…
思いついたように立ち上がる。
「どうした!ミィ!」
マル先輩が慌て立ち上がった。
「セルさん!」
セルさんを見ると真剣な目で
「チーズ分けてください!」
そうそう、チーズ買い忘れたんだった。

「お前には呆れる…」
セルさんに連れられて貯蔵庫に向かっている。
なんと、チーズを分けてくれるのだ!
この船には色んな種類のチーズが積んであるらしい。
「選びに行く?」
と誘ってくれた。私は今、小躍りしながらマル先輩を引き連れて貯蔵庫まで来たのだ!
「サブカウ種のチーズ、ありますかね~」
ジュルリとヨダレを吸い上げる。
チーズの中でも高級品の名をあげながら、貰う気満々で扉を開けようとした。
「あ!」
横を通り過ぎた人。フードを被っているけれど。
「壁の上にいた道を教えてくれた人!」
あの迷子事件の時の人だ。耳と尾は隠しているが、あの時のお礼を言わなければ!
お礼を言おうと思った瞬間にマル先輩が飛び掛かった。
あっという間に迷子事件の恩人は取り押さえられる格好に。
私は面食らったまま立ちすくんでいた。
えー、道を教えてくれたお礼をだなー。今言おうと思ってー
なんでこの人取り押さえられたの?
「なんでこの船に乗ってる」
マル先輩が厳しく尋問する。
「お前は惑星アルタから出られないはずだろ」
どうも知ってる人らしい。
ある一定の星から出られないのは宇宙船乗車資格を持ってないか、宇宙旅客券を買ってない密航者。もしくは星から出ることを制限されている一部の人物。
「犯罪者!?」
私の一言に三人は降り向いた。
「そっちじゃなくて」呆れ顔でマル先輩が一言。続いて、セルさんが
「彼は身分ある人ですよ」と一言。
そして捕まった彼は
「こんな小娘に犯罪者呼ばわりって…」
とガックリ。
「ま、こそこそと公務を抜け出して密航してたら間違えられても文句は言えないな」
マル先輩が彼の腕をきつく締め上げてイタタタっと声を漏らす。
「彼はカスリナ星の第三皇子、ササナ様ですよ。今は惑星アルタで開催中のシンポジウムにご出席のはずです」
「で、出席もせずここに居るのは何故だ?」
「シンポジウムには代役を立ててきた。いいだろ!お飾りの会議だし。久しぶりの外なんだよ!」
了承しかねる!とまたきつく腕を絞り上げた。


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