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シップ・イン
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私が初日に行った官公庁の部屋は仮事務所だったらしい。
常に宇宙船の中で各チームとはほとんど交流がない。本部から指令は飛んでくるがほとんど独断行動だ。宇宙船の扱いはカレッジで習ったにしろ、研修なしの即実践だ。
「人使い荒くない?」
インカム付けたまま操縦席に座っている。まあ、自動操縦中だし。特にやることもなく、計器を見ている。
「いじるなよ」
耳から聞こえるのは猫のマル先輩。
「いじってませーん」
実際勝手に動くし、私は手持ちぶさたで触れる所がないかキョロキョロする。
マル先輩は機関庫見てくると言って操縦室を出た。
あの、イケメン・マックは別行動らしく、シップには乗ってない。
猫と二人きりの宇宙旅行。カレッジでの練習以外に宇宙へ行くのは初めてだ。宇宙旅行に行くほど裕福でもなかったし、そんな暇もなかった。今回だって優雅な宇宙旅行でもないし。毎回油まみれでシャワーだって毎日入れないし、食事だって
「宇宙食マズーイ」
簡易的なマズイやつしか積んでない。次回からは食は私が調達する!
「文句多いな」
操縦室の扉が開くと手を拭きながら猫が入ってきた。
「まだ、ミッションも聞いてないし!」
ぼやきたくもなる。いきなりシップに連れ込まれて中の案内をしたかと思ったら即、出発だ。
ほぼ拉致じゃないか!家に置いてきた食料が腐る!
「マカダミアクリームチーズ・ケーキが明日届くはずだったのに」
お待ちかねのお取り寄せ商品なのに。即日引き取りじゃないと戻されちゃうのに。キャンセル料も取られるし。
こんなとこまで来たら明日は絶対に家に帰れない。
ああ、私の楽しみが。
「ボヤくな。言われるままに付いてこい!新米」
ドカッと操縦席に座る。
横暴極まりないよ。この先輩は
「ミッションくらい聞かせてください」
不貞腐れながら、あからさまに伸びをする。
だって、大人しく座ってろってのは仕事じゃない。
「…惑星アルタまで行って帰ってくる」
絶対ソレだけじゃないだろ!ってくらい空々しい返事。
その間のミッションが聞きたいのに!
「後は臨機応変で」
とか、誤魔化され本題のミッションは教えてくれない。
「じゃ、いつ本星には戻れるの?」
とりあえず、家の冷蔵庫が心配だし。
涼しい顔して返ってきた答えが「…それも臨機応変」だ。
クソ猫め!ナメてやがる!
「この仕事は宇宙を飛び回る。本星に未練を残してくるな」
残しまくりだよ!お気に入りの靴、服、アレだって食べたいし、コレだって欲しい!
物欲の塊みたいな私が未練残すななんて無理に決まってる。
「マル先輩の母星どこなんです?私は本星が母星ですけど」
母星は生まれ育ったとこ。私は本星が母星って言っても親なんかにあったこともない。生まれてすぐに政府の養育機関に入れられて育つ。誰が親かわからない、ごちゃ混ぜの中から生まれた子供だ。本星にはそういう人は大勢いる。田舎の星は今だに親子の絆が深いっていうし、本星生まれでないなら、母星から出ない人は多いって聞くけど。
マル先輩は獣人の猫型、純血っぽい気がする。本星には獣人の純血種はいない。他所の星から来たにしろ、なんでこんな所で働いてるのか?
暇ついでに聞いてみる。
「オレの詮索はするな」
と一喝された。話が続かない。
広い宇宙の小さいシップの中に猫と二人で沈黙って、どんだけ苦痛か…
ああ、やりにくい。職場が苦痛です。
常に宇宙船の中で各チームとはほとんど交流がない。本部から指令は飛んでくるがほとんど独断行動だ。宇宙船の扱いはカレッジで習ったにしろ、研修なしの即実践だ。
「人使い荒くない?」
インカム付けたまま操縦席に座っている。まあ、自動操縦中だし。特にやることもなく、計器を見ている。
「いじるなよ」
耳から聞こえるのは猫のマル先輩。
「いじってませーん」
実際勝手に動くし、私は手持ちぶさたで触れる所がないかキョロキョロする。
マル先輩は機関庫見てくると言って操縦室を出た。
あの、イケメン・マックは別行動らしく、シップには乗ってない。
猫と二人きりの宇宙旅行。カレッジでの練習以外に宇宙へ行くのは初めてだ。宇宙旅行に行くほど裕福でもなかったし、そんな暇もなかった。今回だって優雅な宇宙旅行でもないし。毎回油まみれでシャワーだって毎日入れないし、食事だって
「宇宙食マズーイ」
簡易的なマズイやつしか積んでない。次回からは食は私が調達する!
「文句多いな」
操縦室の扉が開くと手を拭きながら猫が入ってきた。
「まだ、ミッションも聞いてないし!」
ぼやきたくもなる。いきなりシップに連れ込まれて中の案内をしたかと思ったら即、出発だ。
ほぼ拉致じゃないか!家に置いてきた食料が腐る!
「マカダミアクリームチーズ・ケーキが明日届くはずだったのに」
お待ちかねのお取り寄せ商品なのに。即日引き取りじゃないと戻されちゃうのに。キャンセル料も取られるし。
こんなとこまで来たら明日は絶対に家に帰れない。
ああ、私の楽しみが。
「ボヤくな。言われるままに付いてこい!新米」
ドカッと操縦席に座る。
横暴極まりないよ。この先輩は
「ミッションくらい聞かせてください」
不貞腐れながら、あからさまに伸びをする。
だって、大人しく座ってろってのは仕事じゃない。
「…惑星アルタまで行って帰ってくる」
絶対ソレだけじゃないだろ!ってくらい空々しい返事。
その間のミッションが聞きたいのに!
「後は臨機応変で」
とか、誤魔化され本題のミッションは教えてくれない。
「じゃ、いつ本星には戻れるの?」
とりあえず、家の冷蔵庫が心配だし。
涼しい顔して返ってきた答えが「…それも臨機応変」だ。
クソ猫め!ナメてやがる!
「この仕事は宇宙を飛び回る。本星に未練を残してくるな」
残しまくりだよ!お気に入りの靴、服、アレだって食べたいし、コレだって欲しい!
物欲の塊みたいな私が未練残すななんて無理に決まってる。
「マル先輩の母星どこなんです?私は本星が母星ですけど」
母星は生まれ育ったとこ。私は本星が母星って言っても親なんかにあったこともない。生まれてすぐに政府の養育機関に入れられて育つ。誰が親かわからない、ごちゃ混ぜの中から生まれた子供だ。本星にはそういう人は大勢いる。田舎の星は今だに親子の絆が深いっていうし、本星生まれでないなら、母星から出ない人は多いって聞くけど。
マル先輩は獣人の猫型、純血っぽい気がする。本星には獣人の純血種はいない。他所の星から来たにしろ、なんでこんな所で働いてるのか?
暇ついでに聞いてみる。
「オレの詮索はするな」
と一喝された。話が続かない。
広い宇宙の小さいシップの中に猫と二人で沈黙って、どんだけ苦痛か…
ああ、やりにくい。職場が苦痛です。
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