その悪役令嬢はなぜ死んだのか

キシバマユ

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二章 獣人の国

40 遠足に行こう

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 記念すべき今晩十杯目の生ビールも、僕を酩酊というまどろみの海にも混沌の渦にも引き込むことはできなかった。脳はパフォーマンスを下げるどころか、数分前からギアをもう一段階上げ、とある疑問を解決するべく深夜営業を続けている。

 その疑問とは、隣に座っている女性にある。

「ユッキー顔こわーい! お酒はもっと楽しく飲もうよー!」


 姿


 片手で僕の背中をバシバシ叩き、黄金の液体を勢いよく胃の腑に注いでいく。これはジンジャーエールでもノンアルコールでもない、正真正銘の麦酒だ。

 ゴク、ゴク、ゴク、と喉を三回鳴らし、中身が半分まで減ったジョッキの底をカウンターに叩きつけた。

「あぁ、おいしい。誰かと一緒に飲むお酒はおいしいね、ユッキー」
「そ、そうですね……」

 改めて思う。



 なんで、女子高生が居酒屋でビール飲んでるんだ?



 ちなみに、僕はこの子と初対面である。

 後輩でも妹の同級生でも女友達でもなければ、ましてや彼女でもない。たまたま居酒屋のカウンター席で隣同士になっただけの、赤の他人である。嘘じゃない。僕らの間にある、屋上ビアガーデンの生ぬるいビールとエクストラコールドくらいの温度差を察してもらえれば伝わると思う。

 いくら店内を見渡しても、誰も僕らを気に留める者はいない。冗談を言い合ったり、料理に舌鼓を打ったりと、みな思い思いに酒の席を楽しんでいるようだ。店主は涼しい顔で煮込みを器によそっている。


 どうしてこんな状況に巻き込まれてしまったのか。




 僕は夕方以降の出来事を思い返す。
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