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2章 前
苦しんで悩んで、願う
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暗い家路。
商店街の明かりが背後を照らす。
いつもの帰路は不自然なほど静かだ。
賑わいの家庭も香り立つ飯時の家庭も今はなりを潜めている。
まるで、何かに怯えているように。
でも、その静けさに真昼は安心した。
これだけ人の気配がないのなら、気兼ねなくあの話ができるから。
ポケットからスマホを取り出す。
画面に映るのは今やスマホの主となった少年ハクだ。
『どうしたの、まひる?』
「ちょっと電話したい人がいてね。少しの間静かにできる?」
『! ……コクコク』
「ふふ、ありがと」
口を抑え頷く彼に笑いながら、LINEを開いて電話をかける。
コール音は今流行りの少年漫画の音楽だ。電話相手が趣味で設定しているのだろう。
…………
数コールで繋がると思っていたのだが、まだ電話相手は出てくれない。呼び出し時間が長すぎて音楽が2巡目へと入る。
仕方がない、折り返し送って貰うか。
諦めてメッセージを送ろうとチャット欄を開いて、そこでようやくコール音が止まった。
通話相手が出たのだ。
少し戸惑う通話相手。
真剣な真昼の声にただ事じゃないと気づいたのだろう。
そこで真昼は事の顛末を口下手ながらに伝えた。
舞香が警察に盗聴していたこと。
盗聴の中にスズメバチという名前があったこと。
そのグループと須川に関係があったこと。
そして、今度こそ花守会長の死の謎を解く必要がある、と真昼が感じていること。
通話は10分も経っていない。
しかしここに重たい空気が漂うのは真昼と通話相手お互いに辛い記憶があるからだ。
真昼は伝えることを言い切ったのだが、それでも相手の反応は無い。
だから最初に伝えた真昼の要件をもう一度口に出す。
1年前、真昼と共に花守会長の下で生徒会を執行していた人物。
花守会長の異変に気づいてから共に調査をして、彼女の失踪後お互いに励まし合って手がかりを探し、結局何も出来なかった
───────その相手は。
「だからもう一度調査をしたいの。あの時みたいに手伝ってよタク」
『………知ってるか分かんねぇから言うけどよ、俺今北海道いんだよ』
疲れきった声の高城が困り気味に答える。
そう。去年、花守会長の元で生徒会をしていたのは真昼と高城。
加えて真昼について来てくれた美晴もいたが、彼女は名前だけの幽霊会員になっていて、ほぼ全ての活動は花守、真昼、高城の3人で行っていた。
もちろん花守会長とのたくさんの思い出も、あの事件へのやるせなさを共有しているのは高城だけである。
だからこそ、この事件へまた向き合うのに高城の協力は絶対に必要だと真昼は感じている。
それに、心の弱い真昼が3ヶ月もの間花守優姫の調査を続けられたのは高城が居たからだ。
隣で励ましてくれて、時にはおちゃらけて笑わせてくれたり。
今では見る影もなくなったが半年前では真昼の精神的支柱のような存在であった。
だからきっと今回も彼の力が真昼には必要だ。
「無茶言ってるのは分かってるよ。でも私だけじゃきっと辿り着けないから……だから……」
途切れる言葉。
彼が今そこで何をしているのか、真昼には分からない。もしかしたら旅の途中で出会った仲間と談笑している最中かもしれないし、次への目的地へ立つその直前かもしれない。
だからか彼は真昼の頼みに唸っている。
「確かにタクにはすごく迷惑かけてる。北海道旅なんてかなりお金とか掛かってるだろうし、旅の最中に帰ってこいなんて無粋しかないし……」
『俺が渋ってんのはそういう事じゃねぇ』
「もしかして……もうどうでも良くなったの?」
あのなあ、と苛立ちの含んだ声。
『んなわけねぇだろ……そうじゃなくて、お前だよ真昼』
唐突に出てきたのは自分の名前。
旅の話から急な変化球に驚いていると高城は続ける。
『この間やべえ事に巻き込まれたばっかじゃんお前。なんでまた自分から事件に足突っ込もうとすんだよ』
思わずハッとする。
あれだけ事件に巻き込まれたくないと後悔していた真昼がどんな心境の変化があったのか、今では向き合いたいと立ち向かっている。
しかし、そのきっかけが分からない。
真昼がどうしてそう思ったのか真昼自身も理解ができない。
まるでこれが当然であるように決心して行動してた。
呆然として言葉のない真昼に高城が付け加える。
『名前忘れたけどよ、どっか天才ハッカーが須川暴露したって話じゃねーか。結局あの掲示板のことだって有耶無耶になった所だろ』
「それは、そうだけど……」
『花守先輩の事はたしかに気になるけどよ、半年過ぎた今調べても何も出ねぇって』
高城は当然の答えを口にする。
それは真昼にだって理解していた。
なぜなら、あの半年以上前から学校に縛られる3ヶ月もの間調査をし続けたのは他でもない真昼だったから。
「やっぱり……無理なのかな」
呟く声にはどこか納得の出来ていない色がある。
やるべきだと感じていて、そして新たな情報が一つある。それを確かめる前に諦めてしまっていいのかという思い。
それとは裏腹に、高城の言い分に頷いている真昼。
どれだけ言葉を尽くそうとも今の高城の言い分に反論できる所がない、そう気づいてしまったのだ。
『ああ、真昼は休んどけ。どうせゴールデンウィークの時みたいに警察が犯人見つけんだろ。それにな、みんなも嫌がってんだよ。真昼がそう言う事件に巻き込まれることをよ』
「……うん」
彼の言葉から生徒会の面々が思い出される。
あれだけ心配させ気を使わせた彼らにまた心配をかけるのか、そんな意味合いを真昼は受け取ってしまって。
それを言われればもう真昼から言えることは無い。
心にせめぎ合う2つの意志にまた頭を悩ませて真昼は通話を切った。
***
それから10分もしないうちに自宅へと着いた。
階段をあがりそのまま自室へ。
下で食事待ちをしているしずくのために早く着替えて降りなければ。
──────と。
服を着替える前に携帯をカバンに入れてチャックを閉める。
ハクは見たいとも思ってないだろうが、見られると流石に真昼が恥ずかしい。
すばやく家服のパーカー、ショートパンツに着替え終えるとカバンからスマホを取り出しパソコンへ繋いで充電を始めた。
すると画面に白髪、白肌、白服のハクが映し出される。
やはりスマホの中は狭いのか、伸び伸びと体を伸ばしてほぐしていた。
(タクはああ言ってたけど、どうしよう……)
明日の用意をしつつ前をぷかぷか浮く少年を眺める。
高城は真昼にとって今回の事情の顛末を共有している戦友的な立ち位置。
情報を集めるのに1番必要な人手の1人だ。
しかし、彼の協力も貸してくれそうに無いし他の友人にも打ち明ける事ははばかれる。美晴にもりゅう兄にもこの事は口にしたくない。
それは真昼のトラウマという事と、それに先輩の死に負い目を感じているからだ。
だから人手の増やしようもなく、タクへの説得材料も思いつかずもう何も方法を思いつけない。
(なにか無いかな……誰の手も借りずに情報を集める方法……それも聞き込みだけじゃなくて色んな方法で集められる人………)
ぷかぷかと浮く少年を目で追う。
上に行ったり下に行ったり、時折くるりと回転して真昼に微笑んできたり。
踊るように遊んでいるネットに住む少年を飽きずにずっと眺めて────────。
「ってハクがいるじゃん!」
『ハクはいるよ! 』ピョン
「いるじゃん!」
『いるよ!』ピョン
「……ふふ、あははっ」
答える度にぴょんぴょんと跳ねる可愛らしさに笑ってしまう。
「なんで私、まずハクに言わなかったんだろ」
向き合うと決めたのなら、その相談役としても真昼はまず初めにハクを選ぶはずだ。
なぜなら1週間ほど前に彼の力で実際に助けられたところなのだから。
だからこそ真昼は疑問に思う。
なぜハクを飛んで高城に協力を求めたのか。
まるでハク以外に協力を求めるべきだと、そう思い込んでるような。
『どうしたのまひる?』
彼の声で現実に戻る。
最近直ぐにボーッとしてしまう。しっかりしないと、と自身に言い聞かせ前の彼を見る。
「ハクに手伝って欲しいことがあるの」
そう言って、今日高城から言われたことが頭をよぎる。
『また事件に足を突っ込むのか』
『みんなも嫌がってんだぞ』
その言葉と真昼の義務感がぶつかる。
自殺を止められなかった真昼は事件を調べたい。日常を尊ぶ仲間思いの真昼はもう諦めたい。
お互いに拮抗しどちらとも判断が出来ない両意見は、しかし呪いによって義務感が1歩勝った。
また、彼女に苦しめられるのか。
長年のトラウマは既に根を張っている。
何度も何度も彼女の死を看取り、何度も何度もあの目に魅られてきた。
もう、彼女を思い出すのは嫌だったから。
だから真昼は目の前の少年に続けて願う。
「私を助けて欲しいの」
あの時とは少し違う。
差し出される手を待たずにこちらから言った。
なぜなら今回は悲しんでる誰かの為じゃない。
真昼自身が自分の為に彼に手伝って欲しいから。
自身の欲の為に無垢な少年を利用している。何度考えても非道だが、真昼にとって彼は物語で少女を救う勇者だから。
『いいよまひる。君を助けてあげる』
そう笑ってくれるのもきっと真昼は知っていた。
***
『それでさ、何を調べたらいいの?』
「スズメバチっていう悪いグループを調べて欲しいの。最近のやつと、あと半年前もちょっと調べて見てほしい」
『調べて何を伝えたらいいの?』
流石にスズメバチの行動全てとなっては仕事が多いだろう。彼らの起こした事件は多そうだし。
だから真昼にとって1番大事なワードを2個伝える。
「花守優姫って名前とあといま住んでる場所?とか調べて欲しいな」
『ハナモリユキとスミカだね。わかったよ調べてみる』
「うん……私のためにごめんね」
『いいよ。だってまひるのためだもん』
途端申し訳なる気持ちが湧き出て謝るがそれを笑って流してくれる。
やっぱりハクは真昼にとって絵本の中の勇者様だ。
少女の願いを笑って受けて、そして全てを叶えてくれる。現に彼は笑って真昼の願いを受けて、画面の奥へと調査しに行ってくれた。
何も問題が起きずに無事帰ってきますように。
そう心の中で願っていると、下からしずくの声だ。
晩御飯の催促に応えて階段へと向かい、ちらりと最後にパソコンの画面を見る。
もう彼の姿のない画面にもう一度無事に帰るよう願って部屋を出た。
********
コツコツと革靴の音がビルの廊下に響く。
時折右目から機械音を鳴らしつつ腰を曲げた老人は光が漏れ出るドアを見つけてニヤリと口を曲げた。
その部屋の前に立つ。
第15回学術研究集会と紙に張り出されたドアを開け、静かに笑った。
部屋の中には大きな楕円の机とその周りに幾つもの席。そこに名だたる研究員や学者たちが座っていた。
機械工学系から心理学系、情報システム学系に果ては国際政治学者や経済学者なんてものもいる。
そんな彼らは一席を残す形で全員席を埋めており、その空いた1席に先程着いた彼、新羅 彰が座った。
そして、それを合図に新羅の隣に立つ青年が手元のパッドで操作を始める。
彼の操作は1分も満たない。しかし、その間両手の人数は誰一人として声を出さない。
そして、青年は操作を終えた。
「大丈夫です。この空間は外からのネットワークや通信回線から完全に隔絶されました」
「こうまでせんと本心のひとつも語れんとは中々にしんどいのぉ」
右目が機械の科学者新羅は蓄えた髭をなじりつつ先程の密談を思い出す。
そこであの神父と近藤とかいう筋肉ダルマ、そして情報屋カゲロウが集まり極秘の計画を話し合ってすぐ後にここへと来たのだ。
話を始める前に、ひとまず労うべきかと笑みを浮かべて話し出す。
「ええと皆さん、今日は緊急の招集だというのに集まっていただいてどうもありがとう」
ニコリと笑った新羅に、しかし大きく机を叩いて進行と止める男。
「前置きはいい。金が稼げる、そう聞いて我々は来たのだ。早く本筋に入りたまえ」
「下賎な欲にまみれた貴方と一緒にして欲しくはないよ安藤さん。貴方とは違って私は科学者として今回の話に興味が沸いただけです」
「事業の拡大も研究結果さえも金で決まる時代だ。それ目的だと言って何が悪い」
「まあまあ落ち着きなさい、先生が見ているだろう。とりあえず話を聞こうじゃないか2人とも」
二人が言い争いそれをもう1人が止めてようやく全員がこちらに注目した。
「ああ、では短めに本筋を伝えましょう。
皆さんには私の話を聞いて頂いて、その計画に乗ってくださるのでしたら費用の寄付を約束して欲しいのです。勿論計画が成功した暁には寄付した金額の100倍は約束しましょう」
騒然となる会議室。
そこから秘密の会議が始まった。
***
話が終わったのはそれから約30分後、加えて研究員たちの質問攻めからプラス2時間が経ち、会議室から全員が居なくなった頃にはもう朝日が出ていた。
「10人全員が乗ってくれましたね」
そう言ったのは部下の青年だ。
喜ぶべき結果なはずなのだが、彼の声はどこか不満げで怪訝そうな顔つきをしている。
「いいんですか? これは完全に裏切る形になりますよ」
椅子に座る老人へと問いかける。
そもそもこの会議を始めると言ったのは、この老人がある計画の会議に出た直後であった。
その会議には犯罪被害者救済執行会で有名なカゲロウと黒羽協会の神父とその弟子、そして目の前の上司が出た真っ黒なイメージしか湧かない現場であったが、その直後秘密裏に大御所集めての新たなプロジェクトを発表したのだ。
そして先ほど決定したプロジェクトこそ、カゲロウが持ち出した計画を利用する形になっており、利益は全て新羅たちが掠め取るものであったのだ。
部下の言葉に鼻で笑う新羅は嗜めるように振り返らず尋ねる。
「裏切る、のぉ……君はワシら科学者をなんだと考えておる」
広義的な問いかけ。
普通の人間であれば答え方すら理解ができず恐らく科学者という言葉を分解していくだろう。
例えば科学者の中には研究者と技術者があって、その中にも物理や化学があって────、と答えるのではないだろうか。
しかし、その青年は社長から何度も聞かされていた。科学者とは何か。
決まりごとのように、1字1句間違えずに。
「科学者とは神秘を殺すもの。
奇跡を暴いて衆目に晒し、利用するもの……です」
「ああそうだ。なら、奇跡へ盲目的に縋る奴らと同じ価値観を共有できるはずがなかろう」
つまり初めから仲間なんてものではなかった、と新羅は言っている。
黒羽協会とは半年以上前の改名の頃からの付き合いだと言うのに、軽くそう言ってのける。
「そもそもワシらは証明人としてあそこに呼ばれただけしのぉ。役目を終えた今、本来の仕事に戻るのは当然であろう?」
新羅にとっては当然の行いであり、そこに悪気なんて1つも感じない。いつだって相手の裏をかくよう思考を巡らす上司の姿に寒気を感じつつ、部下はため息を1つついた。
「……そうですか。社長はすぐ本音が出るんですから気をつけてくださいね」
「そういやぁ数日前、初めて奴らとカゲロウと集まった時にの、カゲロウにこう言われた。
神を信じてるのかっての、珍しく焦ったわい」
カカッと笑う新羅は機械の目で再生をする。
それは初めての会合の時、目の前のカゲロウから先程のセリフを言われる場面だ。
『お前白衣なんて羽織ってる癖に神を信じるのか?』
その問いかけに新羅は口の端を釣り上げ、
「あれはただの道具に過ぎん。
神なんてものが本当にいるのなら、科学者のこの首をナイフで掻き切ってやるわい」
笑いながらそう答える。
70年、いや人類が科学の道を歩み始めてから神という存在を否定し続けて幾星霜。
黒羽協会のあの神父と近藤という男を出会った時から心中で小馬鹿にしている。
神の不在は絶対の真実であり、変えようのない事実に新羅は更に次の計画を歩み出した。
「気づかれんよう奴の計画を調べろ。
あの神父が唯一何か知っておるはずだからな、協会内と神父の自宅を徹底的に洗え。
『空も地上も青く染める』
奴のこぼした言葉では計画の1部すら想像出来んからな」
協会連中から言う所の神という存在。
それが零した一言は世界を次の段階へと進めるのだという。
しかしその計画の内容は誰にも伝えられておらず、ただ世界を巻き込んだ『何か』をするという事だけしか知らない。
「だからこそ、カゲロウの言葉に乗るべきでは。まずは日本の安全を、自身の周りを守るべきです」
「阿呆か。それでは戦いを先延ばしにするだけか、最悪世界中から日本に銃口を向けられることになる。
先だ、もっと先を見よ。
奴らの言うパスハの先、そこで日本が君臨する世界を奴らは見ているがワシが見ているのはさらにその先。
復興が進めば日本のハンデなど10年も経たずに消えよう。なれば到底近づけないようなリーチをワシらは持つべきだ」
そう言ってもう1つ指を立てる。
命令は神父の周辺調査から神と呼ばれる存在の計画を調べること。そして、もう1つ。
「奴の後ろにいる、雨宮 天。そいつを探してこちらが確保する。それでこそ、この戦争を勝利で収められる」
静かに進められる計画。
最後に新羅は隣の部下に言い聞かす。
肝に銘じておけ、そう言って。
「最後に勝利するのは、我々科学者だ」
笑う老人はまるで悪魔のようで。
隣で聞く青年は、ただ日常の終わりが着々と近づいていることにうんざりと瞼を下ろした。
商店街の明かりが背後を照らす。
いつもの帰路は不自然なほど静かだ。
賑わいの家庭も香り立つ飯時の家庭も今はなりを潜めている。
まるで、何かに怯えているように。
でも、その静けさに真昼は安心した。
これだけ人の気配がないのなら、気兼ねなくあの話ができるから。
ポケットからスマホを取り出す。
画面に映るのは今やスマホの主となった少年ハクだ。
『どうしたの、まひる?』
「ちょっと電話したい人がいてね。少しの間静かにできる?」
『! ……コクコク』
「ふふ、ありがと」
口を抑え頷く彼に笑いながら、LINEを開いて電話をかける。
コール音は今流行りの少年漫画の音楽だ。電話相手が趣味で設定しているのだろう。
…………
数コールで繋がると思っていたのだが、まだ電話相手は出てくれない。呼び出し時間が長すぎて音楽が2巡目へと入る。
仕方がない、折り返し送って貰うか。
諦めてメッセージを送ろうとチャット欄を開いて、そこでようやくコール音が止まった。
通話相手が出たのだ。
少し戸惑う通話相手。
真剣な真昼の声にただ事じゃないと気づいたのだろう。
そこで真昼は事の顛末を口下手ながらに伝えた。
舞香が警察に盗聴していたこと。
盗聴の中にスズメバチという名前があったこと。
そのグループと須川に関係があったこと。
そして、今度こそ花守会長の死の謎を解く必要がある、と真昼が感じていること。
通話は10分も経っていない。
しかしここに重たい空気が漂うのは真昼と通話相手お互いに辛い記憶があるからだ。
真昼は伝えることを言い切ったのだが、それでも相手の反応は無い。
だから最初に伝えた真昼の要件をもう一度口に出す。
1年前、真昼と共に花守会長の下で生徒会を執行していた人物。
花守会長の異変に気づいてから共に調査をして、彼女の失踪後お互いに励まし合って手がかりを探し、結局何も出来なかった
───────その相手は。
「だからもう一度調査をしたいの。あの時みたいに手伝ってよタク」
『………知ってるか分かんねぇから言うけどよ、俺今北海道いんだよ』
疲れきった声の高城が困り気味に答える。
そう。去年、花守会長の元で生徒会をしていたのは真昼と高城。
加えて真昼について来てくれた美晴もいたが、彼女は名前だけの幽霊会員になっていて、ほぼ全ての活動は花守、真昼、高城の3人で行っていた。
もちろん花守会長とのたくさんの思い出も、あの事件へのやるせなさを共有しているのは高城だけである。
だからこそ、この事件へまた向き合うのに高城の協力は絶対に必要だと真昼は感じている。
それに、心の弱い真昼が3ヶ月もの間花守優姫の調査を続けられたのは高城が居たからだ。
隣で励ましてくれて、時にはおちゃらけて笑わせてくれたり。
今では見る影もなくなったが半年前では真昼の精神的支柱のような存在であった。
だからきっと今回も彼の力が真昼には必要だ。
「無茶言ってるのは分かってるよ。でも私だけじゃきっと辿り着けないから……だから……」
途切れる言葉。
彼が今そこで何をしているのか、真昼には分からない。もしかしたら旅の途中で出会った仲間と談笑している最中かもしれないし、次への目的地へ立つその直前かもしれない。
だからか彼は真昼の頼みに唸っている。
「確かにタクにはすごく迷惑かけてる。北海道旅なんてかなりお金とか掛かってるだろうし、旅の最中に帰ってこいなんて無粋しかないし……」
『俺が渋ってんのはそういう事じゃねぇ』
「もしかして……もうどうでも良くなったの?」
あのなあ、と苛立ちの含んだ声。
『んなわけねぇだろ……そうじゃなくて、お前だよ真昼』
唐突に出てきたのは自分の名前。
旅の話から急な変化球に驚いていると高城は続ける。
『この間やべえ事に巻き込まれたばっかじゃんお前。なんでまた自分から事件に足突っ込もうとすんだよ』
思わずハッとする。
あれだけ事件に巻き込まれたくないと後悔していた真昼がどんな心境の変化があったのか、今では向き合いたいと立ち向かっている。
しかし、そのきっかけが分からない。
真昼がどうしてそう思ったのか真昼自身も理解ができない。
まるでこれが当然であるように決心して行動してた。
呆然として言葉のない真昼に高城が付け加える。
『名前忘れたけどよ、どっか天才ハッカーが須川暴露したって話じゃねーか。結局あの掲示板のことだって有耶無耶になった所だろ』
「それは、そうだけど……」
『花守先輩の事はたしかに気になるけどよ、半年過ぎた今調べても何も出ねぇって』
高城は当然の答えを口にする。
それは真昼にだって理解していた。
なぜなら、あの半年以上前から学校に縛られる3ヶ月もの間調査をし続けたのは他でもない真昼だったから。
「やっぱり……無理なのかな」
呟く声にはどこか納得の出来ていない色がある。
やるべきだと感じていて、そして新たな情報が一つある。それを確かめる前に諦めてしまっていいのかという思い。
それとは裏腹に、高城の言い分に頷いている真昼。
どれだけ言葉を尽くそうとも今の高城の言い分に反論できる所がない、そう気づいてしまったのだ。
『ああ、真昼は休んどけ。どうせゴールデンウィークの時みたいに警察が犯人見つけんだろ。それにな、みんなも嫌がってんだよ。真昼がそう言う事件に巻き込まれることをよ』
「……うん」
彼の言葉から生徒会の面々が思い出される。
あれだけ心配させ気を使わせた彼らにまた心配をかけるのか、そんな意味合いを真昼は受け取ってしまって。
それを言われればもう真昼から言えることは無い。
心にせめぎ合う2つの意志にまた頭を悩ませて真昼は通話を切った。
***
それから10分もしないうちに自宅へと着いた。
階段をあがりそのまま自室へ。
下で食事待ちをしているしずくのために早く着替えて降りなければ。
──────と。
服を着替える前に携帯をカバンに入れてチャックを閉める。
ハクは見たいとも思ってないだろうが、見られると流石に真昼が恥ずかしい。
すばやく家服のパーカー、ショートパンツに着替え終えるとカバンからスマホを取り出しパソコンへ繋いで充電を始めた。
すると画面に白髪、白肌、白服のハクが映し出される。
やはりスマホの中は狭いのか、伸び伸びと体を伸ばしてほぐしていた。
(タクはああ言ってたけど、どうしよう……)
明日の用意をしつつ前をぷかぷか浮く少年を眺める。
高城は真昼にとって今回の事情の顛末を共有している戦友的な立ち位置。
情報を集めるのに1番必要な人手の1人だ。
しかし、彼の協力も貸してくれそうに無いし他の友人にも打ち明ける事ははばかれる。美晴にもりゅう兄にもこの事は口にしたくない。
それは真昼のトラウマという事と、それに先輩の死に負い目を感じているからだ。
だから人手の増やしようもなく、タクへの説得材料も思いつかずもう何も方法を思いつけない。
(なにか無いかな……誰の手も借りずに情報を集める方法……それも聞き込みだけじゃなくて色んな方法で集められる人………)
ぷかぷかと浮く少年を目で追う。
上に行ったり下に行ったり、時折くるりと回転して真昼に微笑んできたり。
踊るように遊んでいるネットに住む少年を飽きずにずっと眺めて────────。
「ってハクがいるじゃん!」
『ハクはいるよ! 』ピョン
「いるじゃん!」
『いるよ!』ピョン
「……ふふ、あははっ」
答える度にぴょんぴょんと跳ねる可愛らしさに笑ってしまう。
「なんで私、まずハクに言わなかったんだろ」
向き合うと決めたのなら、その相談役としても真昼はまず初めにハクを選ぶはずだ。
なぜなら1週間ほど前に彼の力で実際に助けられたところなのだから。
だからこそ真昼は疑問に思う。
なぜハクを飛んで高城に協力を求めたのか。
まるでハク以外に協力を求めるべきだと、そう思い込んでるような。
『どうしたのまひる?』
彼の声で現実に戻る。
最近直ぐにボーッとしてしまう。しっかりしないと、と自身に言い聞かせ前の彼を見る。
「ハクに手伝って欲しいことがあるの」
そう言って、今日高城から言われたことが頭をよぎる。
『また事件に足を突っ込むのか』
『みんなも嫌がってんだぞ』
その言葉と真昼の義務感がぶつかる。
自殺を止められなかった真昼は事件を調べたい。日常を尊ぶ仲間思いの真昼はもう諦めたい。
お互いに拮抗しどちらとも判断が出来ない両意見は、しかし呪いによって義務感が1歩勝った。
また、彼女に苦しめられるのか。
長年のトラウマは既に根を張っている。
何度も何度も彼女の死を看取り、何度も何度もあの目に魅られてきた。
もう、彼女を思い出すのは嫌だったから。
だから真昼は目の前の少年に続けて願う。
「私を助けて欲しいの」
あの時とは少し違う。
差し出される手を待たずにこちらから言った。
なぜなら今回は悲しんでる誰かの為じゃない。
真昼自身が自分の為に彼に手伝って欲しいから。
自身の欲の為に無垢な少年を利用している。何度考えても非道だが、真昼にとって彼は物語で少女を救う勇者だから。
『いいよまひる。君を助けてあげる』
そう笑ってくれるのもきっと真昼は知っていた。
***
『それでさ、何を調べたらいいの?』
「スズメバチっていう悪いグループを調べて欲しいの。最近のやつと、あと半年前もちょっと調べて見てほしい」
『調べて何を伝えたらいいの?』
流石にスズメバチの行動全てとなっては仕事が多いだろう。彼らの起こした事件は多そうだし。
だから真昼にとって1番大事なワードを2個伝える。
「花守優姫って名前とあといま住んでる場所?とか調べて欲しいな」
『ハナモリユキとスミカだね。わかったよ調べてみる』
「うん……私のためにごめんね」
『いいよ。だってまひるのためだもん』
途端申し訳なる気持ちが湧き出て謝るがそれを笑って流してくれる。
やっぱりハクは真昼にとって絵本の中の勇者様だ。
少女の願いを笑って受けて、そして全てを叶えてくれる。現に彼は笑って真昼の願いを受けて、画面の奥へと調査しに行ってくれた。
何も問題が起きずに無事帰ってきますように。
そう心の中で願っていると、下からしずくの声だ。
晩御飯の催促に応えて階段へと向かい、ちらりと最後にパソコンの画面を見る。
もう彼の姿のない画面にもう一度無事に帰るよう願って部屋を出た。
********
コツコツと革靴の音がビルの廊下に響く。
時折右目から機械音を鳴らしつつ腰を曲げた老人は光が漏れ出るドアを見つけてニヤリと口を曲げた。
その部屋の前に立つ。
第15回学術研究集会と紙に張り出されたドアを開け、静かに笑った。
部屋の中には大きな楕円の机とその周りに幾つもの席。そこに名だたる研究員や学者たちが座っていた。
機械工学系から心理学系、情報システム学系に果ては国際政治学者や経済学者なんてものもいる。
そんな彼らは一席を残す形で全員席を埋めており、その空いた1席に先程着いた彼、新羅 彰が座った。
そして、それを合図に新羅の隣に立つ青年が手元のパッドで操作を始める。
彼の操作は1分も満たない。しかし、その間両手の人数は誰一人として声を出さない。
そして、青年は操作を終えた。
「大丈夫です。この空間は外からのネットワークや通信回線から完全に隔絶されました」
「こうまでせんと本心のひとつも語れんとは中々にしんどいのぉ」
右目が機械の科学者新羅は蓄えた髭をなじりつつ先程の密談を思い出す。
そこであの神父と近藤とかいう筋肉ダルマ、そして情報屋カゲロウが集まり極秘の計画を話し合ってすぐ後にここへと来たのだ。
話を始める前に、ひとまず労うべきかと笑みを浮かべて話し出す。
「ええと皆さん、今日は緊急の招集だというのに集まっていただいてどうもありがとう」
ニコリと笑った新羅に、しかし大きく机を叩いて進行と止める男。
「前置きはいい。金が稼げる、そう聞いて我々は来たのだ。早く本筋に入りたまえ」
「下賎な欲にまみれた貴方と一緒にして欲しくはないよ安藤さん。貴方とは違って私は科学者として今回の話に興味が沸いただけです」
「事業の拡大も研究結果さえも金で決まる時代だ。それ目的だと言って何が悪い」
「まあまあ落ち着きなさい、先生が見ているだろう。とりあえず話を聞こうじゃないか2人とも」
二人が言い争いそれをもう1人が止めてようやく全員がこちらに注目した。
「ああ、では短めに本筋を伝えましょう。
皆さんには私の話を聞いて頂いて、その計画に乗ってくださるのでしたら費用の寄付を約束して欲しいのです。勿論計画が成功した暁には寄付した金額の100倍は約束しましょう」
騒然となる会議室。
そこから秘密の会議が始まった。
***
話が終わったのはそれから約30分後、加えて研究員たちの質問攻めからプラス2時間が経ち、会議室から全員が居なくなった頃にはもう朝日が出ていた。
「10人全員が乗ってくれましたね」
そう言ったのは部下の青年だ。
喜ぶべき結果なはずなのだが、彼の声はどこか不満げで怪訝そうな顔つきをしている。
「いいんですか? これは完全に裏切る形になりますよ」
椅子に座る老人へと問いかける。
そもそもこの会議を始めると言ったのは、この老人がある計画の会議に出た直後であった。
その会議には犯罪被害者救済執行会で有名なカゲロウと黒羽協会の神父とその弟子、そして目の前の上司が出た真っ黒なイメージしか湧かない現場であったが、その直後秘密裏に大御所集めての新たなプロジェクトを発表したのだ。
そして先ほど決定したプロジェクトこそ、カゲロウが持ち出した計画を利用する形になっており、利益は全て新羅たちが掠め取るものであったのだ。
部下の言葉に鼻で笑う新羅は嗜めるように振り返らず尋ねる。
「裏切る、のぉ……君はワシら科学者をなんだと考えておる」
広義的な問いかけ。
普通の人間であれば答え方すら理解ができず恐らく科学者という言葉を分解していくだろう。
例えば科学者の中には研究者と技術者があって、その中にも物理や化学があって────、と答えるのではないだろうか。
しかし、その青年は社長から何度も聞かされていた。科学者とは何か。
決まりごとのように、1字1句間違えずに。
「科学者とは神秘を殺すもの。
奇跡を暴いて衆目に晒し、利用するもの……です」
「ああそうだ。なら、奇跡へ盲目的に縋る奴らと同じ価値観を共有できるはずがなかろう」
つまり初めから仲間なんてものではなかった、と新羅は言っている。
黒羽協会とは半年以上前の改名の頃からの付き合いだと言うのに、軽くそう言ってのける。
「そもそもワシらは証明人としてあそこに呼ばれただけしのぉ。役目を終えた今、本来の仕事に戻るのは当然であろう?」
新羅にとっては当然の行いであり、そこに悪気なんて1つも感じない。いつだって相手の裏をかくよう思考を巡らす上司の姿に寒気を感じつつ、部下はため息を1つついた。
「……そうですか。社長はすぐ本音が出るんですから気をつけてくださいね」
「そういやぁ数日前、初めて奴らとカゲロウと集まった時にの、カゲロウにこう言われた。
神を信じてるのかっての、珍しく焦ったわい」
カカッと笑う新羅は機械の目で再生をする。
それは初めての会合の時、目の前のカゲロウから先程のセリフを言われる場面だ。
『お前白衣なんて羽織ってる癖に神を信じるのか?』
その問いかけに新羅は口の端を釣り上げ、
「あれはただの道具に過ぎん。
神なんてものが本当にいるのなら、科学者のこの首をナイフで掻き切ってやるわい」
笑いながらそう答える。
70年、いや人類が科学の道を歩み始めてから神という存在を否定し続けて幾星霜。
黒羽協会のあの神父と近藤という男を出会った時から心中で小馬鹿にしている。
神の不在は絶対の真実であり、変えようのない事実に新羅は更に次の計画を歩み出した。
「気づかれんよう奴の計画を調べろ。
あの神父が唯一何か知っておるはずだからな、協会内と神父の自宅を徹底的に洗え。
『空も地上も青く染める』
奴のこぼした言葉では計画の1部すら想像出来んからな」
協会連中から言う所の神という存在。
それが零した一言は世界を次の段階へと進めるのだという。
しかしその計画の内容は誰にも伝えられておらず、ただ世界を巻き込んだ『何か』をするという事だけしか知らない。
「だからこそ、カゲロウの言葉に乗るべきでは。まずは日本の安全を、自身の周りを守るべきです」
「阿呆か。それでは戦いを先延ばしにするだけか、最悪世界中から日本に銃口を向けられることになる。
先だ、もっと先を見よ。
奴らの言うパスハの先、そこで日本が君臨する世界を奴らは見ているがワシが見ているのはさらにその先。
復興が進めば日本のハンデなど10年も経たずに消えよう。なれば到底近づけないようなリーチをワシらは持つべきだ」
そう言ってもう1つ指を立てる。
命令は神父の周辺調査から神と呼ばれる存在の計画を調べること。そして、もう1つ。
「奴の後ろにいる、雨宮 天。そいつを探してこちらが確保する。それでこそ、この戦争を勝利で収められる」
静かに進められる計画。
最後に新羅は隣の部下に言い聞かす。
肝に銘じておけ、そう言って。
「最後に勝利するのは、我々科学者だ」
笑う老人はまるで悪魔のようで。
隣で聞く青年は、ただ日常の終わりが着々と近づいていることにうんざりと瞼を下ろした。
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