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1章
閑話2-3 死神探偵の追従2
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芥子たちは傘を閉じ、隆二はカッパを脱ぐ。
酷い雨だ。
校舎内も湿気でジメジメしており、それがまるで今の隆二の心境を物語ってるようで、自然とため息が出てしまう。
知り合いの聴取、気まずいなんてもんじゃない。
(明日から俺はどうやって真昼と顔を会わせればいいんだよ)
そんな苦悩に頭を抱える隆二に、
「それで、なんで学校? 取り調べって言ったら署で行うものじゃ?」
芥子が疑問を投げかける。朝一、とは言っても、もう9時30分になる頃のホテルで言った目的地。
そう、ここがあの事件の犯人である須川猛と、そして千歳原真昼の通う神代学園だ。
校舎に入る前は記者共に囲まれ、入った後はやけにやつれた様子の学園長に出迎えられて、今ようやく校舎に足を踏み入れたのだ。
そこで話は元に戻る。なんでここなの、と。
「真昼が嫌がったそうです」
「心当たりが?」
「いえ、」
調書に書かれていることだから嘘ではないんだろうが、しかし俺の知る限り真昼が警察署に嫌悪感を感じる理由は無かったように思う。
母親が亡くなった時も、警察となにかあったなんて話は無かったはずだ。
歯切れの悪い隆二の答えに、
「まあいいや、別件もあるし」
と話を切り上げ、小鳥遊に振り返る。
「ワトソン君、オレンジジュースを買ってきてくれたまえ。もちろん果汁は100%だぞ」
「小鳥遊です。……はぁ、分かりました。直ぐに買ってきます」
何の命令が来るのか少しワクワクしていた小鳥遊はその内容に睨みを返すが、しかしそのジュースの重要性を小鳥遊は知っていたのだろう。ため息をつきつつ渋々買いに行った。
「じゃあ行こ室井。まずは別件の方を片付けようか」
その小鳥遊を見送ると、芥子は探偵業としての仕事をそそくさと始めていた。
そんな中、室井隆二は驚きを隠せていないのである。
(もしかして、この2人って本物の探偵なのか?)
聴取の直前であるこの場面で本物は来るだろうと予測していた隆二だったが、自分のそもそもの勘違いに気づきつつあった。
神代学園 応接室
「僕、探偵なんてアニメのような存在を見るの初めてなんですよ」
応接室にて、今日来る探偵2人と担当警官を待っている捜査二課の警官である。
PJ事件の調査後、1度本部に帰ったのだが、上からすぐ学校で待機するよう命じられた警官たち。既に調査は済んでいるし部活どころか人もあまりいない校舎で、大人二人は呆然と雨の雫を眺めていた。
そんな時、ふと1人の警官が、
「なぁ知ってるか? 死神探偵ってあだ名」
そんな噂話を口にした。
「それって今日来る子ですか?」
待つだけで退屈をしていた彼らにはもってこいの話題で軽々と口が進んだ。
「ああ、どんな謎でも解決する名探偵って自分では謳ってはいるが、周りからは死神探偵って呼ばれてんだ」
「それは、どうして?」
「それはな、」
「────犯人が死ぬからですよ」
急に響く知らない声に、そしていつの間にか入ってきている彼の姿に驚きを隠せない。
そう、昔からのことわざにあるあれ。『噂をすれば影が射す』というやつだ。
「どうも僕が突き止めた犯人は不可思議な死を迎えてましてね。ほんと僕自身不思議で仕方ないんですよ」
あはは、と空笑いする探偵は、目を細めてさらにつけ加える。
「それで、あれから何か情報出ましたか? 楽しそうにお話されてるようですけど」
「い、いえ! えっと、昨夜匿名で警察に連絡が来たのですが、須川は最近変な奴らと絡むようになってたらしいです」
睨みをきかせた芥子に震えながら、しかし警官は新たな情報を一つ出した。それが芥子の思っていた話と違っていて興味をそそられる。
「変なやつら?」
「ええ、確か名前はスズメバチ、とかなんとか」
その名前に目を少し見開く芥子。それと全く知らないその名前に小首を傾げる隆二。
「スズメバチ?」
「昔居たヤンキー集団だよ。西の縞蛇と東の虎頭蜂って言われるほど昔は大きかったグループだね。ただ数年前に抗争があって何十人と捕まって解体されたはずだけど、残ってたんだ」
「………」
虎頭蜂の存在は確かに有り得る話だ。
こういう大きな事件を起こす奴の裏には大きな組織がある。
しかし、ここで疑問が湧くのはその裏にいる組織が虎頭蜂だからだ。
虎頭蜂は昔から他グループとの抗争を主に行っていて、ただ喧嘩がしたいという印象が強い。
あの映像のように強姦や窃盗なんて話は聞かない、文字通りの『ヤンキー集団』なのだ。
縞蛇のような半グレ集団が裏にいるならまだしも、この事件で虎頭蜂が繋がるのは些か妙に感じてしまう。
また新たな謎に芥子は笑ってしまいそうだ。掘れば掘るほど出てくる謎が、玩具のように感じる。
ニヤつく顔を芥子が抑えていると、小鳥遊が帰ってきた。
「先生、買ってきまし………」
部屋に数歩入って止まる。なにか違和感を感じているのか、キョロキョロと辺りを見渡し、ある1点を見つめて止まった。
「どしたのワトソンくん?」
「静かに…………」
口元に指を添えて、ゆっくりとそこへ行く。
たどり着いたのは棚だ。棚の上には観葉植物や置き時計などがオシャレ風に置かれていて、その葉に手を伸ばした。
「探偵に対して盗み聞きなんて、よほど度胸があるんですね。
今から行きますから首を洗って待っててください。良い刑務所を知ってるんですよ。ドッグフードを潰した食事に身体を使った奉仕活動。発狂するぐらいたっぷりと味わえますからね」
ドスの効いた声。
普段の好青年を思わせる声とは印象が変わり、しかし丁寧な口調がそのままだから少しアンバランスさを感じる。
瞬間、隣の部屋からバタバタとした足音とドアを開ける音。ちょっと待てば少し遠くから悲鳴のような雄叫びが聞こえる。
「これぐらいでいいですか?」
「ほんとワトソンくんってスイッチ入ると怖いね」
「小鳥遊です。はい、オレンジジュースです」
「ん、ありがとう」
受け取った紙パックに早々とストローを刺して摂取する。ストローを口に含んだまま、
「それで警察官さん、本当に情報はそれだけですか?」
そう最初にした質問を再度問う。
しかし、追加の情報はもう無いのだろう、警官たちは困ったような顔つきになる。
「では、もう1つ情報を。あの子がやっていたゲームご存知ですか?」
「あの子って、須川 猛ですよね。いえ、報告書に名前はあったと思いますが、私たちはあまりゲームをやりませんので……」
「おや、知らないんですか? 結構有名なゲームなんですよ。『島に降ろされた諸君達は100人の中から唯一の生き残りをかけて争うのだ!』っていうキャッチフレーズのゲーム。僕も結構やり込んでますし」
そこで会話が途切れる。
芥子は「もう分かるよね?」みたいな顔つきで警官たちの答えを待っているのだが、今の会話の意味すら彼らには分からない。
「だからなんですか? 俺たち警察は事件解決のためにここに来てるんです。ゲームの話をしたいから来てるんじゃないんですよ」
そう言うのは先程死神探偵の名を出した方の警官だ。最初はバツの悪そうな顔をしていたが、見た目中学生の彼がゲームの話をし始めたことで我慢の限界だったのだろう。
すこし馬鹿にするような態度を入れつつ不満を放つが、それに芥子はため息をついた。
「じゃあ、なんで気づかないのさ。ワトソンくん、やっぱり僕の言い方じゃ分かりづらいかい?」
「小鳥遊です。ええ、先生の言い方は1年間一緒にいないと理解できないものがあります」
「室井も?」
「えーと……風太がゲーム大好きってのは伝わったっす」
親指を立ててGoodとするが、そんなこと言いたいんじゃない、と芥子に呆れられる。
じゃあ1から10まで言うか、と芥子は話し出した。
「この子がしていたゲームは『Battle Island』。
通称Biと呼ばれるオンラインゲームです」
「びぃー?」
「ゲームの説明は先程と同じように島に降ろされた100人が生き残りをかけて戦う、最近流行りのバトルロワイヤルゲーム」
ゲームの名前、概略、そこまで言って1度警官を見るが、やはりまだ分からないらしい。
芥子は続ける。
「取調べの資料にも書かれてましたが、彼はここ最近の2週間このゲームを授業中にずっとしています。多ければ2時間以上も」
そこまで言うと、さて、と話を纏める方向へ切り替え、探偵は決定的な疑問を口に出す。
「おかしいと思いません? 同時に100人と繋がるオンラインゲームをそんなに出来るなんて」
そこに来て、2人の警官もようやく悟る。
「そうか、通信制限が……」
「はい、それだけやってるとどんなにお金をかけて通信料を払っていてもいつか遅延になるのではないか。そう考えるのが普通ですし、そう考えたのであればそのゲームなんてやろうにもできません」
隆二と小鳥遊が見守る中、彼の推理はどんどん展開されていく。
身振り手振りがまるで劇のように大袈裟に加えられ、糸を引くように謎を解く彼の姿に、小鳥遊は見蕩れていた。
「それなのに彼はそんなことを臆することなく事件発生直後ものうのうとプレイしていた。
つまり彼は遅延を気にしなくていい状況だったと考えられます。そして、そんな状況になるには回線に、つまりWiFiなどで繋いでいたから」
そこで2本の指を前に立てる。
「そして、WiFiに繋ぐ方法は2つほど。
1つはポケットWiFiを使うこと。しかし、それは逮捕時の持ち物検査で無いことは分かっている。なら方法は残り一つしかありません」
折られる中指。残った人差し指にその場の全員の視線が集まり、
「この学校のWiFi。校内LANを使った可能性が非常に高いです。そして校内LANであればWebサーバーから通信履歴を見ることも可能ですよね?」
その唯一の方法を答えた。
この情報が足り無さすぎる奇妙な事件、その数少ない手がかりになると探偵は言った。
「おい!行くぞ!」
警官2人は顔つきを本職に戻し、すぐさまサーバーの確認をしに職員室へと向かった。
しかし、その芥子の解答に1人理解できない人物がいた。室井隆二である。
「風太、そんなのが手がかりになるのか?」
「そりゃ勿論、かなり大事な情報だ。もしWebサーバーにも空箱が確認できたのであれば、真昼ちゃんと須川の空箱が同一の物と確定できるだろ」
「そうか。千年原さんのパソコンは学校の備品。当然校内LANを使ってるはず」
そこで小鳥遊が気づき、そしてその先の推理まで察した。
もし、これで確認ができたのであれば、少なくとも須川に送ったのは千年原真昼だということが確定する。
そうなると、彼女は空箱の存在を知ってるということになり、それと同時に、空箱を利用する計画を立てていた犯罪浄化執行会に、少しでも繋がっているのが判明する。
この情報だけで、分かってしまう。
彼女が助ける側の被害者なのか、追い詰めるべき敵なのか。
しかし、彼ら探偵はそれを室井隆二には言わない。
最悪の場合、彼の同行を拒否しないといけない芥子らにはこれ以上真昼の情報を隆二にはあげたくないのである。
「あれ、そういえば真昼ちゃんの聴取って何時からだっけ?」
少し重くなる空気を変えるため話題をそらした。結局、手がかりの重要性を理解できない隆二は少し首を傾げ、代わりに小鳥遊が答える。
「えーと、たしか午前10時からなんで、あと5分です。もう来ます」
千年原真昼の聴取がもう始まる。それは今日一番大事な仕事であり、そしてある男には最も肩が重くなる仕事であった。
そう、その言葉に1番反応した人物は、隆二である。
「よ、よし。覚悟は決めた! 親代わりとして、ちゃんといいアドバイスも考えてきたからな。風太、小鳥遊、俺に任せてくれ!」
「「…………室井(室井さん)はロッカーにでも隠れてて」」
胸を張り自信満々な隆二の案を、何言ってるんだこいつ、みたいな顔つきの探偵たちが一気に取り下げる。
少しの間があき、その間外の雨の存在感が異様に高まる。
おそらく数秒、探偵たちに言われた言葉を理解して、
「なんでなんすか!?自分が聴取する流れだったじゃないっすか!」
「知らないよ。知り合いが聴取の現場にいるなんて、彼女どれだけ動揺すると思ってんの」
芥子は呆れつつ続ける。
「それに、真昼ちゃんに動揺されると小鳥遊の力が使えないんだ。だから君はバレないように隠れてて」
「小鳥遊の力?」
また新たな情報に疑問符を浮かべていると急に後ろからロッカーに向けて押された。
「ほーら、さっさと入って入って」
「いや、でも待て!ここ荷物多すぎて俺じゃ入り切らねえって」
見ればそこには掃除機や箒、モップにバケツなど溢れるように入っており、大人1人が入るスペースなど残っていなかった。
「それでも入らなきゃダメでしょ。ほら押してやるから滑り込んでよ」
「人をスライムみたいに言うな! 痛い痛い痛い! 当たってる! 箒が股間に当たってるって、風太押すな!」
「何やってんですか2人とも!先生も真剣な顔して遊ばないでください!」
あと少しだ、と本気の力で押す芥子、変な所に当たる異物を避ける為身体をくねらす隆二、そしてその酷い光景からまた幻滅しつつ芥子を引き剥がそうとする小鳥遊。
大人3人(うち子供1人)がもつれ合うそれは、まるで公園でふざけ合う子供のようで。
そんな時、
ドアが鳴った。
木の良い音が3回響き、彼女、千歳原真昼の登場を知らせる。
「早く入ってください!!」
「ア゛ッッ」
それまで芥子を引き剥がそうとしていた小鳥遊は室井の肩と頭に手を当てて、思いっきり押し込み、雪崩る前にドアを一気に閉めた。
押し込んだ際、変な悲鳴が聞こえた気がするが、ドアが閉まってから室井の声は聞こえない。どうやら勘違いのようだ。
「あのー……失礼しまーす」
ドアの向こうから彼女の声が聞こえる。ノックの返答が無くて入るに入れない様子だろう。
「俺はドア開けてくるんで、先生は座っててくださ……あれ、先生?」
先生の姿が見えない。
さっきまで一緒に室井隆二を押し込んでいたはず……
「まさか……!」
嫌な予感が小鳥遊に気付かされる。
急いでロッカーを開けるとそこには……
「…………………」
白目を剥き泡を吹いている室井隆二。
そして、潰された紙パックが弾けたのだろう。オレンジジュースを頭から被り、ジト目でこちらに抗議する探偵の姿がそこにあった。
「あれ?部屋間違えてないよね?」
(早く! 早くしないと……!)
少女の不安げな声。
小鳥遊は焦るままに芥子をロッカーから引っ張る。引っ張るが……
「なんで……! 先生早く出てきてください!」
「引っかかってる! コートが何かに引っかかってて取れないんだ!」
どうやら隆二の後ろに設置されているフックに芥子のコートが引っかかっているらしい。何度引いても取れないし、引けば引くほど隆二の顔が青ざめていく。
「ああー! もう! だからそんな服止めてスタイリッシュで行きましょって言ったんですよ! そしたらこんなこともなかったですのに!」
「このコートは探偵の誇りを表してるんだ! 君のように合理性、機能性だけで物事判断してたらそのうち足元すくわれるよ!」
「探偵は合理性の塊って言ったのは先生です! しかもそのコート、ドラマかなんか見て憧れただけのミーハーの癖に!」
「あーあ言っちゃった! 僕がミーハーなら、君はそのミーハーに憧れてるミーハーのミーハーって事に気づいた方がいいよ!」
隙を与えない攻防、否、口論はしかし小鳥遊のとっさの判断で終わりを迎えた。
「すみません先生!」
それだけ言うと小鳥遊は芥子を抱え上げる。
重さをあまり感じない芥子を上手く扱ってコートの襟元を脱がすために引っ張る。
「ちょ、ちょっと何するんだ! やめ、やめなさい」
暴れるのを押さえ込み、少し抵抗を感じるもスポンッと芥子が下に抜けた。
すぐさま脱げたコートを室井隆二と共にロッカーへと閉まい溜息つく。
「な、なんてことをするんだ君は!」
顔を真っ赤にする芥子に、疑問を持つ小鳥遊。
コートを脱いだ程度で、なにをそんな赤くなってるんだ。
そう聞こうと芥子を見れば、
「なんで裸なんですか!?」
座り込んだ探偵は上半身裸で、こちらを睨んでいる。白い肌が、いつもの黒のTシャツとはギャップがあるからか酷く見慣れない。
「君がコート脱がした時に一緒に脱げたんだ! まさか小鳥遊くん、僕に裸で容疑者に会えって。なんて鬼畜な」
「違います! さっさと着てください!」
ロッカー内の芥子のコートから黒のTシャツをとり、探偵へと投げつける。
「俺対応してきますから、先生は早く着ててくださいよ!」
芥子が着ている間に小鳥遊は応接室の入口まで行き、ドアを開ける。
すると、そこには顔を真っ赤にした千年原真昼がいた。
「すみません、お待たせしました。どうぞお入りください」
汗だくな小鳥遊は無理やり笑顔を作って真昼に促す。しかし、彼女に動きはない。
「?どうしました、千歳原さん」
どうやら何かを小言で言っているようだ。耳を澄ますと、
「裸……脱が、した………す、すみません! 時間空けてから来ますので、えーと……ごゆっくり!」
猛ダッシュで逃げられた。
その言葉のワードと、彼女の顔色から何を勘違いしたのか想像できて、
「ち、違うんだ! 待って、待ってください!! 」
分け目も振らず少女は突き当たりの角を曲がって行った。何も勘違いが解けないまま。
違うんだぁぁぁ、と床へとなだれ込む小鳥遊。
「なにやってんの小鳥遊くん」
後ろから呆れた声で探偵が追い打ちをしたのであった。
酷い雨だ。
校舎内も湿気でジメジメしており、それがまるで今の隆二の心境を物語ってるようで、自然とため息が出てしまう。
知り合いの聴取、気まずいなんてもんじゃない。
(明日から俺はどうやって真昼と顔を会わせればいいんだよ)
そんな苦悩に頭を抱える隆二に、
「それで、なんで学校? 取り調べって言ったら署で行うものじゃ?」
芥子が疑問を投げかける。朝一、とは言っても、もう9時30分になる頃のホテルで言った目的地。
そう、ここがあの事件の犯人である須川猛と、そして千歳原真昼の通う神代学園だ。
校舎に入る前は記者共に囲まれ、入った後はやけにやつれた様子の学園長に出迎えられて、今ようやく校舎に足を踏み入れたのだ。
そこで話は元に戻る。なんでここなの、と。
「真昼が嫌がったそうです」
「心当たりが?」
「いえ、」
調書に書かれていることだから嘘ではないんだろうが、しかし俺の知る限り真昼が警察署に嫌悪感を感じる理由は無かったように思う。
母親が亡くなった時も、警察となにかあったなんて話は無かったはずだ。
歯切れの悪い隆二の答えに、
「まあいいや、別件もあるし」
と話を切り上げ、小鳥遊に振り返る。
「ワトソン君、オレンジジュースを買ってきてくれたまえ。もちろん果汁は100%だぞ」
「小鳥遊です。……はぁ、分かりました。直ぐに買ってきます」
何の命令が来るのか少しワクワクしていた小鳥遊はその内容に睨みを返すが、しかしそのジュースの重要性を小鳥遊は知っていたのだろう。ため息をつきつつ渋々買いに行った。
「じゃあ行こ室井。まずは別件の方を片付けようか」
その小鳥遊を見送ると、芥子は探偵業としての仕事をそそくさと始めていた。
そんな中、室井隆二は驚きを隠せていないのである。
(もしかして、この2人って本物の探偵なのか?)
聴取の直前であるこの場面で本物は来るだろうと予測していた隆二だったが、自分のそもそもの勘違いに気づきつつあった。
神代学園 応接室
「僕、探偵なんてアニメのような存在を見るの初めてなんですよ」
応接室にて、今日来る探偵2人と担当警官を待っている捜査二課の警官である。
PJ事件の調査後、1度本部に帰ったのだが、上からすぐ学校で待機するよう命じられた警官たち。既に調査は済んでいるし部活どころか人もあまりいない校舎で、大人二人は呆然と雨の雫を眺めていた。
そんな時、ふと1人の警官が、
「なぁ知ってるか? 死神探偵ってあだ名」
そんな噂話を口にした。
「それって今日来る子ですか?」
待つだけで退屈をしていた彼らにはもってこいの話題で軽々と口が進んだ。
「ああ、どんな謎でも解決する名探偵って自分では謳ってはいるが、周りからは死神探偵って呼ばれてんだ」
「それは、どうして?」
「それはな、」
「────犯人が死ぬからですよ」
急に響く知らない声に、そしていつの間にか入ってきている彼の姿に驚きを隠せない。
そう、昔からのことわざにあるあれ。『噂をすれば影が射す』というやつだ。
「どうも僕が突き止めた犯人は不可思議な死を迎えてましてね。ほんと僕自身不思議で仕方ないんですよ」
あはは、と空笑いする探偵は、目を細めてさらにつけ加える。
「それで、あれから何か情報出ましたか? 楽しそうにお話されてるようですけど」
「い、いえ! えっと、昨夜匿名で警察に連絡が来たのですが、須川は最近変な奴らと絡むようになってたらしいです」
睨みをきかせた芥子に震えながら、しかし警官は新たな情報を一つ出した。それが芥子の思っていた話と違っていて興味をそそられる。
「変なやつら?」
「ええ、確か名前はスズメバチ、とかなんとか」
その名前に目を少し見開く芥子。それと全く知らないその名前に小首を傾げる隆二。
「スズメバチ?」
「昔居たヤンキー集団だよ。西の縞蛇と東の虎頭蜂って言われるほど昔は大きかったグループだね。ただ数年前に抗争があって何十人と捕まって解体されたはずだけど、残ってたんだ」
「………」
虎頭蜂の存在は確かに有り得る話だ。
こういう大きな事件を起こす奴の裏には大きな組織がある。
しかし、ここで疑問が湧くのはその裏にいる組織が虎頭蜂だからだ。
虎頭蜂は昔から他グループとの抗争を主に行っていて、ただ喧嘩がしたいという印象が強い。
あの映像のように強姦や窃盗なんて話は聞かない、文字通りの『ヤンキー集団』なのだ。
縞蛇のような半グレ集団が裏にいるならまだしも、この事件で虎頭蜂が繋がるのは些か妙に感じてしまう。
また新たな謎に芥子は笑ってしまいそうだ。掘れば掘るほど出てくる謎が、玩具のように感じる。
ニヤつく顔を芥子が抑えていると、小鳥遊が帰ってきた。
「先生、買ってきまし………」
部屋に数歩入って止まる。なにか違和感を感じているのか、キョロキョロと辺りを見渡し、ある1点を見つめて止まった。
「どしたのワトソンくん?」
「静かに…………」
口元に指を添えて、ゆっくりとそこへ行く。
たどり着いたのは棚だ。棚の上には観葉植物や置き時計などがオシャレ風に置かれていて、その葉に手を伸ばした。
「探偵に対して盗み聞きなんて、よほど度胸があるんですね。
今から行きますから首を洗って待っててください。良い刑務所を知ってるんですよ。ドッグフードを潰した食事に身体を使った奉仕活動。発狂するぐらいたっぷりと味わえますからね」
ドスの効いた声。
普段の好青年を思わせる声とは印象が変わり、しかし丁寧な口調がそのままだから少しアンバランスさを感じる。
瞬間、隣の部屋からバタバタとした足音とドアを開ける音。ちょっと待てば少し遠くから悲鳴のような雄叫びが聞こえる。
「これぐらいでいいですか?」
「ほんとワトソンくんってスイッチ入ると怖いね」
「小鳥遊です。はい、オレンジジュースです」
「ん、ありがとう」
受け取った紙パックに早々とストローを刺して摂取する。ストローを口に含んだまま、
「それで警察官さん、本当に情報はそれだけですか?」
そう最初にした質問を再度問う。
しかし、追加の情報はもう無いのだろう、警官たちは困ったような顔つきになる。
「では、もう1つ情報を。あの子がやっていたゲームご存知ですか?」
「あの子って、須川 猛ですよね。いえ、報告書に名前はあったと思いますが、私たちはあまりゲームをやりませんので……」
「おや、知らないんですか? 結構有名なゲームなんですよ。『島に降ろされた諸君達は100人の中から唯一の生き残りをかけて争うのだ!』っていうキャッチフレーズのゲーム。僕も結構やり込んでますし」
そこで会話が途切れる。
芥子は「もう分かるよね?」みたいな顔つきで警官たちの答えを待っているのだが、今の会話の意味すら彼らには分からない。
「だからなんですか? 俺たち警察は事件解決のためにここに来てるんです。ゲームの話をしたいから来てるんじゃないんですよ」
そう言うのは先程死神探偵の名を出した方の警官だ。最初はバツの悪そうな顔をしていたが、見た目中学生の彼がゲームの話をし始めたことで我慢の限界だったのだろう。
すこし馬鹿にするような態度を入れつつ不満を放つが、それに芥子はため息をついた。
「じゃあ、なんで気づかないのさ。ワトソンくん、やっぱり僕の言い方じゃ分かりづらいかい?」
「小鳥遊です。ええ、先生の言い方は1年間一緒にいないと理解できないものがあります」
「室井も?」
「えーと……風太がゲーム大好きってのは伝わったっす」
親指を立ててGoodとするが、そんなこと言いたいんじゃない、と芥子に呆れられる。
じゃあ1から10まで言うか、と芥子は話し出した。
「この子がしていたゲームは『Battle Island』。
通称Biと呼ばれるオンラインゲームです」
「びぃー?」
「ゲームの説明は先程と同じように島に降ろされた100人が生き残りをかけて戦う、最近流行りのバトルロワイヤルゲーム」
ゲームの名前、概略、そこまで言って1度警官を見るが、やはりまだ分からないらしい。
芥子は続ける。
「取調べの資料にも書かれてましたが、彼はここ最近の2週間このゲームを授業中にずっとしています。多ければ2時間以上も」
そこまで言うと、さて、と話を纏める方向へ切り替え、探偵は決定的な疑問を口に出す。
「おかしいと思いません? 同時に100人と繋がるオンラインゲームをそんなに出来るなんて」
そこに来て、2人の警官もようやく悟る。
「そうか、通信制限が……」
「はい、それだけやってるとどんなにお金をかけて通信料を払っていてもいつか遅延になるのではないか。そう考えるのが普通ですし、そう考えたのであればそのゲームなんてやろうにもできません」
隆二と小鳥遊が見守る中、彼の推理はどんどん展開されていく。
身振り手振りがまるで劇のように大袈裟に加えられ、糸を引くように謎を解く彼の姿に、小鳥遊は見蕩れていた。
「それなのに彼はそんなことを臆することなく事件発生直後ものうのうとプレイしていた。
つまり彼は遅延を気にしなくていい状況だったと考えられます。そして、そんな状況になるには回線に、つまりWiFiなどで繋いでいたから」
そこで2本の指を前に立てる。
「そして、WiFiに繋ぐ方法は2つほど。
1つはポケットWiFiを使うこと。しかし、それは逮捕時の持ち物検査で無いことは分かっている。なら方法は残り一つしかありません」
折られる中指。残った人差し指にその場の全員の視線が集まり、
「この学校のWiFi。校内LANを使った可能性が非常に高いです。そして校内LANであればWebサーバーから通信履歴を見ることも可能ですよね?」
その唯一の方法を答えた。
この情報が足り無さすぎる奇妙な事件、その数少ない手がかりになると探偵は言った。
「おい!行くぞ!」
警官2人は顔つきを本職に戻し、すぐさまサーバーの確認をしに職員室へと向かった。
しかし、その芥子の解答に1人理解できない人物がいた。室井隆二である。
「風太、そんなのが手がかりになるのか?」
「そりゃ勿論、かなり大事な情報だ。もしWebサーバーにも空箱が確認できたのであれば、真昼ちゃんと須川の空箱が同一の物と確定できるだろ」
「そうか。千年原さんのパソコンは学校の備品。当然校内LANを使ってるはず」
そこで小鳥遊が気づき、そしてその先の推理まで察した。
もし、これで確認ができたのであれば、少なくとも須川に送ったのは千年原真昼だということが確定する。
そうなると、彼女は空箱の存在を知ってるということになり、それと同時に、空箱を利用する計画を立てていた犯罪浄化執行会に、少しでも繋がっているのが判明する。
この情報だけで、分かってしまう。
彼女が助ける側の被害者なのか、追い詰めるべき敵なのか。
しかし、彼ら探偵はそれを室井隆二には言わない。
最悪の場合、彼の同行を拒否しないといけない芥子らにはこれ以上真昼の情報を隆二にはあげたくないのである。
「あれ、そういえば真昼ちゃんの聴取って何時からだっけ?」
少し重くなる空気を変えるため話題をそらした。結局、手がかりの重要性を理解できない隆二は少し首を傾げ、代わりに小鳥遊が答える。
「えーと、たしか午前10時からなんで、あと5分です。もう来ます」
千年原真昼の聴取がもう始まる。それは今日一番大事な仕事であり、そしてある男には最も肩が重くなる仕事であった。
そう、その言葉に1番反応した人物は、隆二である。
「よ、よし。覚悟は決めた! 親代わりとして、ちゃんといいアドバイスも考えてきたからな。風太、小鳥遊、俺に任せてくれ!」
「「…………室井(室井さん)はロッカーにでも隠れてて」」
胸を張り自信満々な隆二の案を、何言ってるんだこいつ、みたいな顔つきの探偵たちが一気に取り下げる。
少しの間があき、その間外の雨の存在感が異様に高まる。
おそらく数秒、探偵たちに言われた言葉を理解して、
「なんでなんすか!?自分が聴取する流れだったじゃないっすか!」
「知らないよ。知り合いが聴取の現場にいるなんて、彼女どれだけ動揺すると思ってんの」
芥子は呆れつつ続ける。
「それに、真昼ちゃんに動揺されると小鳥遊の力が使えないんだ。だから君はバレないように隠れてて」
「小鳥遊の力?」
また新たな情報に疑問符を浮かべていると急に後ろからロッカーに向けて押された。
「ほーら、さっさと入って入って」
「いや、でも待て!ここ荷物多すぎて俺じゃ入り切らねえって」
見ればそこには掃除機や箒、モップにバケツなど溢れるように入っており、大人1人が入るスペースなど残っていなかった。
「それでも入らなきゃダメでしょ。ほら押してやるから滑り込んでよ」
「人をスライムみたいに言うな! 痛い痛い痛い! 当たってる! 箒が股間に当たってるって、風太押すな!」
「何やってんですか2人とも!先生も真剣な顔して遊ばないでください!」
あと少しだ、と本気の力で押す芥子、変な所に当たる異物を避ける為身体をくねらす隆二、そしてその酷い光景からまた幻滅しつつ芥子を引き剥がそうとする小鳥遊。
大人3人(うち子供1人)がもつれ合うそれは、まるで公園でふざけ合う子供のようで。
そんな時、
ドアが鳴った。
木の良い音が3回響き、彼女、千歳原真昼の登場を知らせる。
「早く入ってください!!」
「ア゛ッッ」
それまで芥子を引き剥がそうとしていた小鳥遊は室井の肩と頭に手を当てて、思いっきり押し込み、雪崩る前にドアを一気に閉めた。
押し込んだ際、変な悲鳴が聞こえた気がするが、ドアが閉まってから室井の声は聞こえない。どうやら勘違いのようだ。
「あのー……失礼しまーす」
ドアの向こうから彼女の声が聞こえる。ノックの返答が無くて入るに入れない様子だろう。
「俺はドア開けてくるんで、先生は座っててくださ……あれ、先生?」
先生の姿が見えない。
さっきまで一緒に室井隆二を押し込んでいたはず……
「まさか……!」
嫌な予感が小鳥遊に気付かされる。
急いでロッカーを開けるとそこには……
「…………………」
白目を剥き泡を吹いている室井隆二。
そして、潰された紙パックが弾けたのだろう。オレンジジュースを頭から被り、ジト目でこちらに抗議する探偵の姿がそこにあった。
「あれ?部屋間違えてないよね?」
(早く! 早くしないと……!)
少女の不安げな声。
小鳥遊は焦るままに芥子をロッカーから引っ張る。引っ張るが……
「なんで……! 先生早く出てきてください!」
「引っかかってる! コートが何かに引っかかってて取れないんだ!」
どうやら隆二の後ろに設置されているフックに芥子のコートが引っかかっているらしい。何度引いても取れないし、引けば引くほど隆二の顔が青ざめていく。
「ああー! もう! だからそんな服止めてスタイリッシュで行きましょって言ったんですよ! そしたらこんなこともなかったですのに!」
「このコートは探偵の誇りを表してるんだ! 君のように合理性、機能性だけで物事判断してたらそのうち足元すくわれるよ!」
「探偵は合理性の塊って言ったのは先生です! しかもそのコート、ドラマかなんか見て憧れただけのミーハーの癖に!」
「あーあ言っちゃった! 僕がミーハーなら、君はそのミーハーに憧れてるミーハーのミーハーって事に気づいた方がいいよ!」
隙を与えない攻防、否、口論はしかし小鳥遊のとっさの判断で終わりを迎えた。
「すみません先生!」
それだけ言うと小鳥遊は芥子を抱え上げる。
重さをあまり感じない芥子を上手く扱ってコートの襟元を脱がすために引っ張る。
「ちょ、ちょっと何するんだ! やめ、やめなさい」
暴れるのを押さえ込み、少し抵抗を感じるもスポンッと芥子が下に抜けた。
すぐさま脱げたコートを室井隆二と共にロッカーへと閉まい溜息つく。
「な、なんてことをするんだ君は!」
顔を真っ赤にする芥子に、疑問を持つ小鳥遊。
コートを脱いだ程度で、なにをそんな赤くなってるんだ。
そう聞こうと芥子を見れば、
「なんで裸なんですか!?」
座り込んだ探偵は上半身裸で、こちらを睨んでいる。白い肌が、いつもの黒のTシャツとはギャップがあるからか酷く見慣れない。
「君がコート脱がした時に一緒に脱げたんだ! まさか小鳥遊くん、僕に裸で容疑者に会えって。なんて鬼畜な」
「違います! さっさと着てください!」
ロッカー内の芥子のコートから黒のTシャツをとり、探偵へと投げつける。
「俺対応してきますから、先生は早く着ててくださいよ!」
芥子が着ている間に小鳥遊は応接室の入口まで行き、ドアを開ける。
すると、そこには顔を真っ赤にした千年原真昼がいた。
「すみません、お待たせしました。どうぞお入りください」
汗だくな小鳥遊は無理やり笑顔を作って真昼に促す。しかし、彼女に動きはない。
「?どうしました、千歳原さん」
どうやら何かを小言で言っているようだ。耳を澄ますと、
「裸……脱が、した………す、すみません! 時間空けてから来ますので、えーと……ごゆっくり!」
猛ダッシュで逃げられた。
その言葉のワードと、彼女の顔色から何を勘違いしたのか想像できて、
「ち、違うんだ! 待って、待ってください!! 」
分け目も振らず少女は突き当たりの角を曲がって行った。何も勘違いが解けないまま。
違うんだぁぁぁ、と床へとなだれ込む小鳥遊。
「なにやってんの小鳥遊くん」
後ろから呆れた声で探偵が追い打ちをしたのであった。
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