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1章
閑話2-2 死神探偵の追従1
しおりを挟むGW1日目
東京新宿駅。そこは駅というにはあまりに広く、また迷宮と呼ばれるほど難解な構造をしている。そして東京という日本の中心でもありGWも相まって、ここは昼夜問わず人がごった返しになっている。
ふと腕時計を見れば針は21:45を示している。
こんな時間になると家族連れはかなり少なくなり、その結果カップルばかりが目の前を通っていく。
「カップル、カップル、カップル、カップル……
そんなカップルだらけの駅構内におっさん二人が並んで壁に寄りかかっていた。
なんてむさ苦しい絵だろう」
「何がむさ苦しいって?コラ」
知らない内に口に出ていたらしい。
しかし隆二は負い目もなく言い続ける。
「何が悲しくてゴールデンウィーク初日に先輩と並んでシュークリーム食べてんすか……周りのカップル共が羨ましいっす…」
「奢られた後輩が言うセリフかそれ。女性とシュークリームなんて、仕事に警察を選んだ時点で終わりだよ諦めな」
「やっぱり仕事選びミスってたかぁぁ…」
そう嘆いている隆二を他所に蒼崎は腕時計を見る。
示す時刻は21:50だ。
「ほらしっかりしろ。確かこの時間の電車で来るって連絡だ。もう来るよ」
そう言うと残りの半分のシュークリームを急いで口に運びもごもごと隆二にも催促する。
隆二も急いで口に運び缶コーヒーで流し込むと、することも無いので目の前の右や左に流れる人の波を眺めていた。
「来たね」
蒼崎の声にふと見ると、横に流れる人混みから1つの人影がこちらに来ていた。
徐々にその姿形がはっきりと見え、それがスーツを来た男性だと分かる。
探偵協会から派遣された凄腕の探偵、そう聞かされていたものだから仰々しい爺さんを思い浮かべていた。
だが、まだ20にもなっていなさそうな青年だ。まさか上層部をいとも簡単に操れる人物がこんなに若いなんて。
目を疑っていると、さらにその姿に違和感を感じる。
その人影は少し前のめりに傾いていてリュックをお腹で抱えるように持っている。
よくよく見てみると後ろに誰かを背負っているらしい。
「お子さん…ですかね?」
「ぶッ……」
隆二の呟きに吹き出す声。気になり蒼崎の方を見れば、
「そっか、そう言えば初めてか…」
「先輩?」
蒼崎の独り言は、しかし隆二には届かない。再度問うと頭を振りながら、
「いや、なんでもない。隆二、お前が担当になるんだからファーストコンタクト頑張れよ」
そう言ってくる。こういうのってお互いの知り合いが仲介人として入るんじゃないだろうか。
小首を傾げつつ近づいてくる人影へこちらから出迎える様に駆け出した。
「お疲れ様です!私、今事件の芥子先生の担当警官になりました室井隆二と言います。まさかご子息とご一緒だったとは……今からこちらで用意していたホテルに向かおうとしていたのですが、1度自宅に帰ってからにされますか?」
「……へ?」
隆二が話しかけたその男はすこし呆然とした顔から、すぐ理解したのか勢いよく顔を横に振る。
「ああいや、俺は違います! 俺は助手です! 先生は……こっちです!」
「ぐぅ……ぐぅ……」
勢いよく上半身を横にねじり見せてきたのは背中で丸まって眠っている少年だ。中学生か、もしかしたら小学生かもしれない彼は、もう春だというのに分厚そうなブラウンのコートを羽織っている。
「えーと……はい?」
困惑1色の隆二を他所に青年は少年を下ろすと、
「あの、先生! もう依頼主の所に着きましたよ! 起きてください!」
立っていながらまだうつらうつらしている少年を揺さぶる。すごい勢いで首がガクガクしているが、
「…ん…なんだって……そんなの…計画と……違う…」
まだ意識がハッキリしていないのか口から出るのは曖昧な言葉だった。
すると、その言葉にため息をついた青年はお腹に抱えていたリュックから1つの紙パックを取り出す。表には赤い果実がイラストとして描かれているそれを少年の口元へ持っていく。
「ほら先生、さっさといつも通りしてください」
「んぐっ…んぐっ…ふぅ……」
小パックの紙ジュースを飲み干し、息を着くと少年は顔を上げた。
「うん、ありがとうワトソンくん」
「小鳥遊です。こちらが今回の依頼主、捜査第二課課長蒼崎泰平様と俺たちの担当警官の室井隆二様です」
「これはこれは、恥ずかしい所を見られました」
照れ笑いを浮かべつつコートの内ポケットから名刺を取り出す。
「どうも、探偵協会から派遣されたS003の芥子風太と申します。こっちは助手の小鳥遊紡です。どうぞお見知りおきを」
手渡された名刺には探偵を表していて、しかしそれを見ても隆二はポカンとしていた。
目の前の少年は自身を探偵と称している。
未だ理解していない隆二に対して探偵と称する少年は疲れた笑みを漏らしながらもう1枚の紙を取り出す。
そこには先程の名刺と内容は変わらないものの、少年の写真が貼られていて、つまるところ本物の探偵証明書であった。
一般人であればここで理解が追いつくのだが、今回は隆二である。頭が回らず、そこでふと思いつく。
(そうか…これはテストなんだ。どんな見た目でもちゃんと探偵として扱うかどうかを試しているんだ。子供だからといって探偵として扱わないような奴、自分の担当警官にさせないつもりだろ。
どこかで遠くから見ているはずだ)
これが察しの悪い男、室井隆二の本懐であり、だから隆二はまるで劇のように演じるのであった。
「これはこれは。担当警官の室井隆二です。こちらも宜しくお願いします」
仰々しく演じ名刺を交換するように手渡す。すると、
「やあ久しぶりだね芥子に小鳥遊」
「蒼崎も元気そうだね。肩の傷はもう大丈夫かい?」
「おかげさまでな。それにしても身長伸びないねぇお前。ちゃんと食べてるのか?」
後ろで待っていた蒼崎が軽く挨拶。
仲睦まじそうに喋るその姿は完全に親戚のおじさんと子供たちだ。
そんな和気あいあいとした会話から、
「ところで、なんで担当警官蒼崎じゃないの?室井?って警官聞いたこともないけど」
グサリとした言の葉が隆二に飛んできた。
「色々事情があってな、こいつをお前に付けたい理由ができた。それに一応お前を助けた借りは残っているんだろ?」
「君には助けられた、というよりも助けられてあげたって何度も………
まあいいや、君の推薦なら間違いないだろうし情報交換さえ出来れば僕は子供だって構わないしね。よろしくね室井」
なんだかとてつもなく舐められているような。
っていうか大人に対して呼び捨て?しかも蒼崎先輩も?
こ、これも一種のテスト……なのだろうか?
様々な疑惑でグルグルになった隆二はもう考えるのをやめて芥子の出す右手と握手を交わす。
「えっと……それではもうホテルに向かう事でいいんでしょうか?」
「うん、僕らはいいよ。蒼崎も来るかい?」
「いや僕は別件の報告書出さないといけないしな、一先ず署に帰るよ。
あとは任せたよ隆二。一人でほっぽり出すが、まあ気負いせずお前なりに頑張れ」
「うす…じゃなくて、はい!ではまた明日
芥子先生、小鳥遊さんホテルまで送ります」
蒼崎の離脱は意外だった。面白い事件なら誰よりも首を突っ込みたがる先輩だと思っていたからだ。しかし、だからこそこの2人(代役?)を信頼しているのだろうか?
最寄りの駐車場へ先導する中、少し後ろから代役探偵たちの会話が聞こえてくる。
「それで、どうして新宿駅を集合場所にしたんですか?」
少し横を歩く探偵に疑問を挟む助手。
「そりゃ君、僕たちは数時間前まで死と隣り合わせのゲームをしていたんだよ。僕だって疲れてたし寝たかったのさ」
それは傍から聞けば小鳥遊の質問の答えになっていない。
しかし、小鳥遊だけはその言葉で意味は理解できた。
それはこの一年、芥子風太の元で色々と見聞きしたからだろう。芥子の言ってる事への察し能力が段違いに上がっていた。
「迷宮って呼ばれてるからどれほどと思いましたけど、期待外れでしたね」
だから小鳥遊は先生の意図を汲んで、そう言った。
それが芥子風太にとってはすこし予想外だったのだろう。一瞬呆気に取られ、
「───ようやく助手らしくなったじゃないか」
口の端を上げて笑った。
何の話をしているんだろう。
代役探偵たちの会話から何も汲み取れない悲しい隆二であった。
車内にて
「えーと、それで芥子先生でよろしいですか?」
簡単な話、呼び方の問題だ。
このテストは、如何にこの代役探偵たちを本物の探偵として扱えるかどうかに掛かっていると隆二は考えた。
つまり呼び方としては尊敬やらなんやらが感じられる『~先生』がいいと判断した、のだが、
「いや、そう呼ぶのはこの子達ぐらいだから好きなように呼べばいいよ。確か君がこの事件の僕の担当警官なんでしょ? 長くなるんだから呼びやすい名でいいよ、室井」
かなりフランクな言われ方に少し驚いてしまう。こういうテストは大袈裟なぐらいが丁度いい。遠くからでも見てわかるぐらいに探偵として信じている事が分からなければテストの意味が無いからである。
(っていうかまたコイツ俺の事呼び捨てにしやがって)
別に隆二は呼び捨て自体はどうでもいい、呼ばれ方は後輩にだって自由にしている。しかし、流石にこれだけ歳が離れていてしかも初対面で呼び捨ては舐められてる感が大きく感じる。
注意の一つでも言ってやろうと考えて、その時隆二には存在しないはずの脳細胞が閃いた。
(もしかして、これがテストのヒントなのか?そうだ、そういえば蒼崎先輩もあの代理探偵とお互いに呼び捨てで呼んでいた!)
出会った最初から不思議なほどの呼び捨て、そして模範解答のように感じる蒼崎の言動。
担当警官としてもっと親密になる努力をしないといけない、このテストの中にそんな考えが見えた。
じゃあこの呼び方の答えは『芥子』で正解だ──────
ちょっと待て、と頭を冷やす。
そんな簡単でいいのか?相手は警察上層部を動かすことも出来るほどの凄腕探偵だ。
もしここで芥子と呼べば、それは蒼崎先輩の真似をしている事になる。
あの時蒼崎先輩は言っていた。
『お前なりに頑張れよ』
それは俺と同じ呼び方をするなという先輩からの警告。
呼び捨てにして、さらに蒼崎先輩とは違う呼び方。
それは、つまり──
「じゃあ、風太ってのは……どうですかね?」
その時の車内の空気を隆二は忘れない。
春だというのに凍りつくほどの空気、隆二ほどのバカだとしても気付かされる、やらかした感。
恐る恐るバックミラーで後方の様子を伺うと、
「…………………」
小鳥遊という弟子から憎悪と悲しみとちょっと嫉妬が混ざった殺気をガラス越しに浴びせてくる。横の芥子本人は腹を抱えて肩を震わしている。
(なんて目だ……こんな目、横からコロッケ掠めとった時の澪以来だ……)
なんとか訂正しようとハンドルを握りつつ慌てていると、
「ほーら小鳥遊威嚇しない。探偵たるもの表に出していいのは笑顔だけだよ」
「………はい」
「それにとても面白いじゃないか、気に入ったよ室井隆二。
あと別に話しにくいなら敬語じゃなくても構わない、君とは長くなりそうだし」
呼び方はそれでいいよ、と軽く流され
「とりあえず、ホテルに着いたら聴取の記録と進捗を聞かしてもらえるかな?」
夜はまだまだこれからだよ?
そう小悪魔的に笑う芥子に肩が重くなるのを感じた。
ホテルにて、
ツインルーム一室、そこで隆二は蒼崎から引き継ぎされた情報と、この事件の担当者になった経緯を一通り伝える。
見れば、小鳥遊は部屋に備えていた小さめの円形机にノートパソコンを開いて情報を更にまとめ、芥子はベッドの上で紙の資料をなぞる様に眺めている。
「これで報告は以上なんすけど……やっぱり真昼は関係あるんすか?」
「んー……」
資料を眺めつつ、彼は唸る。
代理の探偵に何を期待しているのか、俺もそう思うが、やはり隆二は安心したかったのだ。
だから気休めでも何か聞ければいいと質問したのだが、答えは想像したものとは違った。
「足りないんだよ」
そう言って、付け加える。
「疑うにも、安心するにも情報が足りなさすぎる。ウォルズ事件とは事件の規模も手法も性格だって違う。
なんなら真逆と言ってもいい」
「テレビジャックがそんな小さな事なんすか?」
テレビジャック、簡単には言うが恐らく事件の規模なら随一ではないだろうか、と隆二は考えていた。だからこそ、真逆、と言われた意味がよく分からない。
そんな隆二の問いかけに、小鳥遊が割って入る。
「だから、それが逆なんです。
ウォルズ事件の当初は上層部にしか情報がいかないぐらい極秘裏に200億ドルという金を盗まれていた。つまり、目的は大きく手法は小さい。
しかし、今回のPJ事件はその真逆。
目的は通報っていうあまりにも小さいのに手法がデカすぎる」
「えーと……それは、つまり?」
目線を二人の間で泳がす隆二に向けて、芥子は資料から目を離し、
「真昼ちゃんが模倣犯って線がつよい」
「────ッ真昼はそんな奴じゃ!」
反射的に言ってしまった。
理由はない、ただ信じたいという隆二の感情だけで、推理してくれた探偵に言い返したのだ。
そう、と興味なさげに芥子は呟き、
「まあ多かれ少なかれ関係はあるね。利用されているのか、しているのか」
少し重くなる空気。
それは真昼が模倣犯という推理を信じたくない隆二が、しかし否定できない、とやるせなさに潰されてる証拠だ。
そんな時、芥子が気づいたように言った。
「それにしても、よくこの掲示板のこと気づいたね。事件が発生してから1時間も経って居ないんだろう?」
掲示板、それは真昼が命令され作った『なんでも相談掲示板』を指しているのだろう。
この探偵代理が初めて関心しているこの言葉に、隆二は首を傾げた。
だって、それを調べろと言ったのは他でもない芥子だったから。
「 いえ、貰った資料からは風太からの指示だったはずっすけど」
隆二の返答に目をパシパシする探偵は、もう一度資料を見て、
「ぼくが? そういったの?」
「正しくはfaxで送られたメールの内容にそう記載されています。掲示板に関わる人物を残せと」
後ろから小鳥遊が情報の補正を行うが、それでも芥子は納得できない。いや、納得できるはずがない。
「悪いが僕はそんな事を送っていない」
うわ言のように呟き、頭の中でこの違和感を暴いていく。溢れ出るいくつもの疑問を一先ず置いておき、この事件の流れを読み取る。
色々な要素は普通に過ごしていれば気づかない程度のものばかり、しかし、一つ気になれば芋づる式に違和感が掘り起こされる。
掘り返していけば、最後にようやく悟れる。
今ここにいる自分たちの存在を含めて、操られている、ということに。
そこまで思考が行きつき、あと考えるのは一つだ。
───────僕達は、いつから操られていた?
「あは、あははははは!いいね、もう謎がこんなにも散りばめられている。
見たかい小鳥遊くん、どうやらこの事件ははるか遠くにいた僕達でさえ掌で踊らせることの出来る何者かがいるってことさ」
行き着いた推理に、口角が上がるのを抑えられない。
自分の意思、自分の選択、その全てが実は裏から操られていることに気づいて、芥子は喜んでいた。
こんな楽しい事件に関われて本当に良かったと。
「じゃ、じゃあ掲示板のこと知らなかったんですか?」
「知るも何も、その頃僕たちはアイアンメイデンに閉じ込められてたし、この事件の担当になった事だって移動中に知らされたんだよ?」
真昼ちゃんとこの事件を繋ぐ大元はこのfaxからだ。
このfaxの1文から掲示板に視線を集め、そこからウォルズ事件との関連が見つかった。
つまり───────────誰かが真昼ちゃんを嵌めようとしている。
「まあ、明日実際に彼女と話すよ。そこで分かるはずだし」
この話は終わりだ、と資料を片付けた彼は、「そんな事よりも!」と話を変える。
「僕たちにはもう1つ大きな問題があるじゃないか。君はロビーで部屋の鍵を1つしか貰わなかった。ここにはベッドが二つしかない。君はどこで寝るんだい?」
「あぁ、俺は外に止めてる車の中でいいですよ。鈍感なんでどこでも寝れますし」
そもそもここのホテル代は経費として落ちないから室井隆二のポケットマネーなのだ。もしかしたらこういうのが嫌だから蒼崎先輩は俺に任したのかもしれない。
そんな経済的問題から室井隆二は車内で寝ることにしたのだが、それをどうやらこの探偵代理は好ましくないらしい。
「いやいや、そんなの申し訳ないよ。小鳥遊は僕と一緒に寝て、もう片方を君が使えばいい」
名案とばかりに言った芥子に、げんなりとした視線を送る弟子、小鳥遊である。
「なんだいその顔は。理想の探偵と一緒に寝れるんだぞ? そんなげんなりとした顔なんてせずにもっと嬉しそうな顔をしなよ」
「だって先生凄い寝相が悪いんですもん
痣が1つ2つなんて話じゃないんですからね」
また和気あいあいと言い合う2人を前に、室井隆二はただただ気になっていた。
(いつになったら、このドッキリ明かしてくれるんだろ)
やっぱり隆二は隆二であった。
1:00
「でもこんな事件直接うちに来るなんて久しぶりですね」
隣の室井隆二が寝ているのを確認して芥子に小さく問いかける。
探偵協会からの依頼には、
『事件の大きさ=会員の順位の高い人優先』
という法則は、今の歪み汚れすぎたこの業界では滅多に起こらない。
大体のパターンとしては、金銭的権力のある中堅クラスの探偵が失敗した場合のみ、尻拭いとして芥子風太に依頼される。
しかも1度失敗している前提であるため報酬も少なく、依頼主も憤慨なんてこともよくある。
話を聞くに今回の事件は3つの要素がある。
1つは東京都全域のテレビがジャックされたこと。
2つは真昼という少女のパソコンからアメリカ製薬会社で発見された通称『空箱』が見つかったこと。
そして、3つ目は千年原真昼と空箱を繋げる情報が探偵協会からのfaxで届けられたこと。
探偵協会に送った内部調査依頼も返答がないままだ。
更に、名を売るには好都合のこの事件、中堅クラスの金持ち探偵共が指くわえて見てるわけが無い。
やはりこの事件、裏で何かが起こっている。
「君の予想通りだよ。裏で何かが動いている。
でも僕らが選ばれたのはただの消去法だよ」
「消去法、ですか?」
「だってファーストは動けないし、セカンドは、まあ、あんな事になっちゃったし。あそこで僕たちが死ねばセカンドに依頼がいってるよ」
それに、と探偵は続ける。
「この事件は何か匂うんだ。もしかしたらこの間させられたゲーム、それと同じ匂いが」
「裏で操ってるのが一緒だと?」
『犯罪浄化執行会』
ゲームに称した見世物として犯罪者を殺す集団。
それが多くの犠牲を出して判明した芥子探偵事務所が追っている裏組織の名だ。
まだ末端の構成員を追い詰めた程度だが、着実に影は追っている。
「だって考えてみなよ。元々このfaxは僕たちが送るべきものだった。でも偶然が必然か、その頃はゲーム中で返信不能。代理として探偵協会の人が送ることになり、そして送ってたfaxに真昼ちゃんへの疑惑が載っていた」
「………!つまり、俺たちが返信できないようゲームに参加させられたとしたら」
「繋がっただろ?」
今まで追ってきた敵の姿が、別の事件へと変わっても追えている。その確信に芥子は喜んでいたが、小鳥遊は別の要件で頭を悩ましている。
「もし、関係があった場合、室井隆二を僕らと同行させていいんですか?」
隣の警官を再度見る。一人の少女を助ける為に頑張っている彼をみて、最悪の結末を予想してしまう。
「最悪、あの人も『ゲーム』に巻き込まれますよ」
人が簡単に死ぬ、無法を是とした狂人ゲーム。
芥子たちも何度も死ぬような目に会ってるからこそ、室井隆二を関わらせてはいけないとわかっている。
ただ、
「正義感だけじゃない分簡単には諦めてくれそうにないしね。
調査結果次第だけど、真昼ちゃんがあの組織の何かを知っているのなら」
手を銃のように曲げ、寝ている隆二に向けて、
「申し訳ないけど室井の同行は諦めてもらうよ。多少力づくでもね」
バン、と撃った。
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