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もんもんカティ
しおりを挟む強引にキスした後、グレン兄様はとってつけたように領地視察に出かけて行ってしまった。
帰ってくるのは夜遅くになるらしい。
もしかして、お兄様…逃げた?
(カティ~グレン部屋でずっとそわそわしてたよ~)
(キスできて喜んだり落ち込んだりしてたわねっ!)
(グレンは変態でヘタレなの~)
私の中のグレン兄様が妖精さん達のおかげでどんどん迷走していく。
今まであまり人間味を感じなかったグレン兄様のいろんな面を知ることができるのは嬉しいけど、少しずるをした気分になってしまう。
(みんな、お兄様のことはもう見に行ってくれなくて大丈夫よ)
頭の中でそう言うと妖精さん達は不思議そうに首を傾げていた。
(((なんで~?)))
(私ばっかりお兄様のことを知るのはフェアじゃないでしょ?)
(グレンもカティのこと監視させてるよ~)
(グレンの方が卑怯ねっ!)
(カティの監視邪魔するの~)
お兄様、やっぱりフェアじゃないって言葉は撤回致します。
妖精さん達が邪魔してくれるらしいから、もう私の情報がグレン兄様に行くことはないだろう。
昼食の時も、夕食の時も、したり顔のエクルがニヤニヤとこちらに視線を送ってくる。
正直エクルの相手ができるほど今の私は落ち着いていられなかった。
グレン兄様がシスコンだということは、妖精さん達の話を聞いて、自分の目でも確認して十分理解しているつもりだった。
しかし、正直お兄様が私をどうこうしようとするつもりは無いのだと、漠然と思い込んでいたんだ。
ベッドに沈み込み、目を瞑る。
「キス、された」
思い出して少しだけ顔が火照る。
幸せになれないって、どういう意味だろう。
グレン兄様は私を幸せにしたくないのだろうか。
散々愛していると写真に向かって告げているくせに、好きな人を幸せにしたくないなんて、どういう了見?
グレン兄様と今までもっと話をしていれば彼の気持ちを理解することができたのだろうか。
エクルのように、血の繋がりがあれば…
いや、エクルが真にお兄様を理解しているとは思えない。
やっぱり彼は誰にも見せていない本当の自分を隠し続けているのかもしれない。
「グレン兄様…」
彼の考えていることを理解出来る日がいつか来るのだろうか。
…とりあえず今は、もう何も考えたくない。
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