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隠せない馬鹿より隠す変態
しおりを挟む「次の日曜日、シュゼット伯爵家主催のダンスパーティーが開催される。グレンとカティアは準備をしておきなさい」
久しぶりに帰ってきた父は、朝食を食べながら話す。
大好物であるステーキに手をつけない様子を見るときっと昨日も飲みすぎて胃が持たれているのだろう。
父が帰っている日は恒例だが、朝からステーキなんてとてもじゃないが胃が受け付けない。
食べないなら食べないと事前に側仕えにでも伝えるといいのに、付き合わされるこみらの身にもなって欲しい。
「わかりました」
「承知しました」
無表情で返事をする私達には興味がないという風に、父はこちらを見ることも無く席を立った。
きっと二度寝するために寝室にでも行くのだろう。
実の父ながら、あの男は本当に情けない人間だと思う。
現に義理の息子であるグレン兄様に自分の職務も任せっきりで、今では領地運営から何までグレン兄様が一任していると言っても過言ではない。
「ずるいわお姉様っ!」
父がいなくなった途端、ぴいぴい騒ぎ出すのはやっぱり義妹のエクルだった。
「伯爵家のパーティーにまた一人だけ参加するのねっ」
「一人ではありません。お兄様も一緒です」
「お兄様と一緒にパーティーなんてずるい!」
グレン兄様と実の兄妹であるにも関わらず、どうしてこうも二人は似ていないのかしら。
隠せない馬鹿と隠す変態なら後者の方が幾分かましに思えてしまう。
(変態の妹はアホの子~)
(馬鹿は死ななきゃわからないのねっ!)
(一回死なせてみるの~)
(精霊さん達、死なせるのだけはやめて)
危うく殺されかけそうになる義妹。
代わりに朝食のフルーツジュースは一人だけピーマンジュースにこっそり変更され、盛大に噴き出している姿に少しだけ笑ってしまった。
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