上 下
33 / 42
港町編

VS少女

しおりを挟む
 洞窟の外から音がした。
 
 「何があったんだ?」
 
 俺たちは洞窟の外に飛び出す。

 「なっ」

 そこには森で会った少女。すなわち精霊の肉体と思しき者がいた。

 「あー!あたしの体!」
 「やっぱりそうなのか?じゃあ、早く戻ってくれ、俺達じゃもたん!」
 「ええ!」

 すると、精霊は肉体に突撃する。

 キン!

 しかし、精霊は跳ね返されてしまった。

 「おい!どうした?」
 「どうやら、あの男、外部からの侵入を防ぐ魔法をしてるみたいね。」
 「は?」
 「要は私が入ることを阻害してるのよ。」
 「どうすればいい?」
 「莫大な魔力で強硬突破するしかないわね。」
 「直ぐにできるか?」
 「無理ね。私は魔力が足りないわ。」
 
 おいおい詰んでないか?

 「あなたと、そこの少女の魔力二つを吸収すれば行けると思うわ。」
 「しかし、それでは。」

 「かまわん。」
 「スラさん?」
 「俺とスラゴンで時間を稼ぐ。どれくらい必要だ?」
 「5分でいけるわ。でもそのあと二人は意識を失うかもしれないわ。作戦が失敗したら全滅ね。それでもやる?」

 「やる(よ)(わ)プルン。」
 「あんたたち飛んだお人よしね。私なんかほっとけばいいのに。」
 「ふん、これでも勇者と聖女よ、ねえスラ?」
 「ちょっとスラミ俺は?」
 「召喚士?」

 まあ、いいや。

 「じゃあ、やりますか。」
 
 そういうと、精霊は俺とスラミから魔力を吸収していく。

 「ぐっ」

 とてつもない勢いで魔力が消えていく、一度派手にガラス製の灰皿を割り大きく傷ができ大量の出血をしたときは目がちかちかして立つのも大変だったが、同じ感覚が襲う。スラミもきつそうだ。

 「シャインポール」
 
 光の柱が精霊の肉体を覆う。目くらましの隙にスラゴンがウォーターショットで足を狙う。

 「ちょっ、あたしの体!」
 「私が治すから今は我慢して!」
 「も、もう!」

 精霊には申し訳ないが我慢してもらおう。こっちだって必死なのだ。

 精霊の体は手を上にあげる。すると、手のひらに小さな渦が生まれた。そして、精霊はこちらにそれを放ってきた。
 轟音とともに徐々に巨大になる。

 「ファイヤーポール!」

 スラさんが火柱を竜巻となったそれに放つ。竜巻の風により威力を増す火柱は、そのまま竜巻を消滅させる。そこにスラゴンが何度もスプラッシュをする。

 「これでとどめだ!ファイヤーボール!」

 ボーン!ファイヤーボールはスプラッシュにより生じた水蒸気を利用した水蒸気爆発を発生させた。それにより少女は吹き飛ばされる・・・・・・はずだった。

 「なに?」

 少女の周りには風の層が形成され少女を爆風から守っていた。

 「くそ、どうすれば……」
 「もう大丈夫よ。」

 スラさんはその声に振り替える。そこには今までとは比べ物にならない精霊がいた。魔力に満ちたその霊体は神々しくも見える。

 「ウィンドプリズン」

 少女の下降気流で地面にくぎ付けにした。その圧倒的な密度の風は少女を守る風さえも吹き飛ばしていた。

 「さぁ、私の肉体を返してもらうわよ。フェアリーブレス。」

 ヒュンと一瞬風切り音がしたと同時にパタリとその肉体は倒れた。

 「ふう、何とかなったわね。」

 むくりと肉体が立ち上がった。そして、その口調は俺たちの知る精霊だった。

 「成功したのか?」
 「何とかね。ただせっかくもらった魔力すべて消費してしまったわ。スズキたちは後ろで寝てるわよ。」
 「そうか。お前の肉体は大丈夫か?」
 「正直水蒸気爆発はビビったけど、何とかなったみたいね。せいぜい打撲程度よ。」
 「そうか。よかった。」
 
 「助けてくれてありがとね。」
 「気にするな。済まないが、俺たちも限界だ。悪いがスズキたちが目覚めるまでここでお世話になるぞ。」
 「ええ、守備は任せなさい!」

 こうして、俺が気絶している間にすべてが終わった。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートなんて願わなければよかった・・・

かぜかおる
ファンタジー
子供を助けてトラックに轢かれた私は気づいたら真っ白な空間に 自称神様という人から転生とそれにあたって一つ加護を与えると言われ チートを望んで転生してみると・・・ 悪役令嬢転生モノの、ザマァされる電波系ヒロインに転生してた!? だけど、ん?思ってたんと違う!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

召喚出来ない『召喚士』は既に召喚している~ドラゴンの王を召喚したが誰にも信用されず追放されたので、ちょっと思い知らせてやるわ~

きょろ
ファンタジー
この世界では冒険者として適性を受けた瞬間に、自身の魔力の強さによってランクが定められる。 それ以降は鍛錬や経験値によって少しは魔力値が伸びるものの、全ては最初の適性で冒険者としての運命が大きく左右される――。 主人公ルカ・リルガーデンは冒険者の中で最も低いFランクであり、召喚士の適性を受けたものの下級モンスターのスライム1体召喚出来ない無能冒険者であった。 幼馴染のグレイにパーティに入れてもらっていたルカであったが、念願のSランクパーティに上がった途端「役立たずのお前はもう要らない」と遂にパーティから追放されてしまった。 ランクはF。おまけに召喚士なのにモンスターを何も召喚出来ないと信じていた仲間達から馬鹿にされ虐げられたルカであったが、彼が伝説のモンスター……“竜神王ジークリート”を召喚していた事を誰も知らなかったのだ――。 「そっちがその気ならもういい。お前らがSランクまで上がれたのは、俺が徹底して後方からサポートしてあげていたからだけどな――」 こうして、追放されたルカはその身に宿るジークリートの力で自由に生き抜く事を決めた――。

処理中です...