現代社会でファンタジー生活!?

和蔵(わくら)

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第12話 隠れ争奪戦

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<長野県松本市の某所>

「川野総理代行、天皇陛下の救出は成功しましたな、それに皇室の方々を
全て救出するとか、貴方の今回の武功は途轍もない偉業ですよ」

「そんなにおだてても何も出ませんし、しませんよ、」

「それでは困りますな川野代行、私共の保安隊に重要情報が入ってきているんですがね、その件で、うかがわせてもらった次第です」

「古林君、そんなに急かしたら川野代行も困るよ、ゆっくり順序良く説明しないとね」

「そうですな斎藤保安監陸将、最初にお話するのは陸上自衛隊第1師団隷下になっている件ですね、それを1年後には防衛装備庁と同系列の保安庁にして貰えませんかね、今は第1師団の預かりでいいですが、保安庁を復活させてもらい、この斎藤を保安庁長官に任命してくれたら、今から話す重要な国益を有利に進めてみせましょう、それと川野代行、古林君を保安監陸将にして下さい」

「君達、制服組みは何時もそうだな、自分達の要求を当たり前の様に言い、政治家に無理難題を押し付ける」

「そう代行は言いますが、習志野駐屯地の青泉氏を逮捕拘束したのは、内の佐島君と仲村君なんですけどね、その時点では私達は内閣調査室の人間でしたが、内調の汚れ仕事を一手に引き受けていた者としては、無理難題を押し通しているつもりはありませんよ川野代行」

「ぐっ・・・今回の件では世話になったのは確かだが、だから、緊急閣議で自衛隊の人員の不足を理由に保安隊を作って、元OBの君に任せたではないか、それだけでは満足できないのかね」

「総理代行、斎藤さんに代わり説明させてもらいますと、東京都の調布市に異世界人が出現したと木更津駐屯地所属のV-22から報告が上がってきています、報告では異世界人がもたらした内容が国益になると、私共は判断し、その異世界人達を緊急で保護する事を提案したいのです」

「異世界人・・・何を言っているのかね古林君」

「その異世界人が言うには、化け物が噴出している通称ダンジョンと言う場所が劣化などで崩壊すると、ダンジョン周辺を巻き込んだ大規模な破壊が起こると言う事ですですのでダンジョンを急いで止める手立てを考えないと、首都東京は地図から無くなってしまいます」

「そんな事があるはずがない・・・君達は嘘を私に言ってるだろう」

「いえ、古林君が言った事は事実です、この写真と動画をご覧下さい」

そう言うと斎藤は、十条2尉が持ち帰った動画を川野総理代行に観せはじめていた。実際は下志津3尉が撮影した動画であるが、十条2尉が弾薬を木更津駐屯地に取りに帰った際に上官である、市ヶ谷3佐に手渡していたのである。

「信じられない、その魔石粉の威力は米軍がヴェト戦で使っていたナパーム弾に匹敵するではないか、こんな物が世界中にばら撒かれているのか」

「総理代行それだけではなく、魔石粉には無線を妨害する性質もあるようで、この物質を使えば、ドローンを無力化する言も容易になるかと存じます」

古林が話している横で斎藤は、首を縦に振り頷いていた。

「この情報は今現在知っているのは米軍と自衛隊と我々だけです、異世界人を保護する名目を作って直ぐにでも身柄を確保しなければ、我々は米軍に全てを掻っ攫われてしまいます、これを国益と言わずして何を国益と言うのでしょうか」

最後の斎藤の熱弁が川野氏を突き動かし決断を下していた。
立ち上がった川野氏は、斎藤に異世界人の保護をするにしても、どうすれば良いのかそう問いただすと斉藤は怪しげな笑みを浮かべ、釣り針に魚が掛かったと思うと、畳み掛ける様に話を進めていた。

「総理代行、保安隊の任務内容に異世界人の保護を入れて下さい、そして保護された異世界人は日本国民になると憲法で決めれば、米軍とて容易には手出しは出来ません後は在日米軍にルートがある佐島君に、在日米軍総司令に話を付けて貰えば、日本が主導で事を運べます」

日本主導と言う響きは、川野氏の頭の中で何回も何回も響き渡っており、戦後の日本における悲願みたいな物であったのだ。何をするにでも米国の顔色を窺うしか出来なく、米国の追従しかしてこなかった国にやっと米国を押さえ日本主導で、物事を進められるかもと言う期待が出来たのだ。

「本当に日本主導で事を進められるのかね、もしも騙しているのなら覚悟して貰うよ保安庁の話も無しだし、君達2人の首も挿げ替えるからね」

「総理代行、今までしてきた仕事は、政治家の貴方やその他大勢の役にたったはずです、国益に反した情報を渡した事はありません」

斎藤は川野に、そう言い放つと川野の目を真剣に見やっていた。
川野氏は斎藤の圧に負け、椅子に座り込むと、斎藤に言い放ったのだった。

「解った、この後の閣議で国益を優先させる事にする、そして保護した異世界人は日本国民とし、国で保護する事にする様に働きかける」

総理代行と呼ぶ声がすると思ったら、何時の間にか部屋に入り込んでいる人物が居たのである。
その人物は、臨時で幹事長代行になった三階氏であった。

「いけませんな、勝手に物事を決められては、緊急閣議で政治家同士で話し合ってこその議案なのに、勝手に怪しげな人物達と物事を決めるなど言語道断ですぞ」

そう三階は言い放つと、斎藤と古林を睨んでいたのだった。

「お初にお目に掛かります、私は保安隊の斎藤保安監で、こっちが古林保安監補です以後お見知りおきをお願いします」

「ふんっ、制服組が総理代行に何の様があると言うんだ、用事が終わったらならば、とっとと帰れ」

三階は斎藤と古林にきつく言い放つと、流石に川野総理代行も黙っては居られなくなり、口を挟んでいた。

「三階さん、この人達は私の客人です、部屋から出て行くのは貴方だ」

川野から言われては、三階も部屋から出て行くしかなく、苦虫を噛みつぶしたよう表情で部屋を後にしていた。

「斎藤さん、あの者は支那に情報を流しています、このまま閣議を開いては魔石粉の情報が支那に渡ってしまいます」

斎藤は古林に頷くと直ぐに川野に話し掛け出した。

「総理代行、私共は保安隊の所属になったのですが、元は内閣調査室の人間です先程の三階氏にはスパイ行為があり、十分な証拠もありましたが、大災害が起こる前だったら逮捕も出来ない人物でしたが、今ならば逮捕も可能です、三階氏を守る人物は、もう居ませんし、この際は悪い膿を全て出し尽くされてはどうでしょうか」

川野は数分間ほど考え込んだ後に、斎藤に実力行使を命じていた。斎藤は川野の言葉を確りと聞くと、直ぐに古林を見やり合図を促すと、古林は小型の携帯無線機を取り出すと、直ぐに三階の身柄を確保する様にと無線で指示を飛ばしていたのだった。

「全ては日本国が主導権を取る為だ、こんな時に身内から足を引っ張られる訳にはいかんのだよ、もしも国益に反する者が居るならば、私は強行策に出ても排除する」

川野の心が固まり、実力を持ってして日本国の為に尽くすと言う決意を聞いた、斎藤と古林は、川野に追加で現在の世界情勢も話し始めていた。

「日本国はアンデット系の化け物なのですが、アメリカは大牛の化け物が闊歩しており、日本より数は少ないとの報告です、それとイングランドはトカゲ人間が蔓延り破壊を続けているそうです、数は少ない物のトカゲ人間の外皮が厚く5.56x45mm NATO弾では歯が立たず、戦車や装甲車、それに機関銃や対物ライフルで応戦して事態の鎮圧を進めている様です、同じく欧州のフランスでは、空を飛び人間に攻撃してくる鳥人間が破壊活動を続けています、鳥人間には5.56x45mm NATO弾での攻撃も通用する様で事態の収拾も早いかと思います、スペイン・・・イタリア・・・ポーラド・・・台湾・・・ロシア・・・そして、どうでも良い隣国の支那や半島はと言うと、支那に豚の化け物が推定で1億から2億は沸いていると報告されています、台湾や日本には被害は出さないとの見方す、それと半島ですが、子鬼の大群が沸きすぎて釜山近郊に出現したダンジョンが周辺を巻き込んでの崩壊をはじめており、その被害は対馬にも及ぶ可能性があるとの報告が来ています」

斎藤は早口で川野に報告し終えると、一息付いて安堵していたが、話を聞いていた。
川野の表情は途轍もなく青ざめていたのだ。

「対馬に救援の手配は済んでいるかね、まだならば福岡、佐賀、長崎の自衛隊を出動させて対応させてくれ」

「川野総理代行、失礼ですが、我々にはそんな権限はありません」

古林は川野に冷たく言い放っていたが、それが事実だったのだから仕方が無い。

「どうにかならないのか・・・国民を救わないと・・・」

辺りを静寂と時間だけが過ぎ、虚しさだけが心の底から込み上げて来ていた。
そんな折に、古林が持っていた無線機から突如として声が鳴り響いている。

「今こそ憲法を改正して、自衛隊を自衛国防軍に昇格させれば、良いではありませんか川野閣下、国民を助ける為にと言うお題目さえあれば、誰が反対をしますか、もしも国の為に国民の為に働いている川野閣下の反対をすれば、それはもう非国民と思われても仕方ありませんよ、別に何処かの
国を侵略する気がある訳ではないし、そんな装備もお金も人材も今の日本にはありませんし、いませんよ・・・・・」

斎藤は直ぐに古林に無線機を切れと命じ、古林は指示に従い無線機の電源をきったのだが、既に大半の言いたい事は言った後だったので、切った所で手遅れであった。

「今の声に聞き覚えはあるかね斎藤君」

斎藤は尋ねられたので、正直に答えている。

「今のは元内閣調査室特殊調査室主任をしていた佐島です、申し訳ありませんまさか無線のスイッチが入ったままだとは思いもよらずに、こんな事になってしまい・・・」

「いや、彼の言ってる事は・・・案外名案だったりするかもな・・・」

川野氏は窓の外を眺めながら考えに耽って、斎藤と古林の話しかける声も聞こえていない様子であった。


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