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第7話 合流したらしたで・・・
しおりを挟む<東京都調布市の上空>
「十条2尉殿、右手のロータリーになってる場所が、調布駅なので
目の前の場所が、調布市役所跡地で間違えないですね」
下志津3尉は十条に、そう伝えると十条は頷き、市役所周辺をグルリと一周してから
着陸する場所を探していた。
だが、城砦の中にしか開けた場所は無く、仕方ないので先にS部隊にファストロープで降りる様に伝えていた。
そして、後方のキャビンで待機していた髭2尉がコックピットにやって来て、何でラペリングでは無く、ファストロープなのかと問いただしいきた。
俺は髭2尉にコックピットから地上を見せると、そこには細路地に無数の化け物の
死骸が散らばっており、城砦の入り口にはトラックが横付けされていると告げた。
「あのトラックの持ち主は、敵なのか」
髭2尉は、俺にそう尋ねてきたが、俺は不明だとだけ告げた。
そして、トラックの荷台に人影が見え隠れしてるので、それを調べて欲しい
と告げると、髭2尉も理解したいたいで、奇襲をするとだけ告げてキャビンに
向っていた。
「お前等、通りに無数の敵の屍が転がっている、抜かるなよ」
S部隊の隊員は、隊長の言葉に強張った表情になり、89式小銃のコッキングレバーを
引くと、直ぐに髭2尉から続け様に指示が飛んでいた。
「それと、不審者を確認、敵かは解らぬ状態なので、ファストロープで素早く降り
奇襲をかけて不審者を制圧する、もしも民間人ならば、危害を加えてはならない」
そして、降下ランプがグリーンに変わり、緊張した面持ちで、隊員達は降下を開始
しはじめていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、集落からタライ、洗濯板、水が汲んである桶を2個、それらをトラックの
後方の横に運ぶと、リュックから片手鍋とキャンプ用のコンロを取り出し、
お湯を沸かし始めていた。
そして、人肌に暖めたお湯にタオルを浸して、硬く絞ると荷台の中に居た秋月さんに
手渡し、大惨事の事後処理をする様にと言ったのだが、お年頃の女の子は恥ずかしい
のか、照れ隠しなのか、俺のタバコや荷物を投げつけながら、覗かないでよと俺に
言ってきたので、俺は軽い返事で「はいはい」とだけ言い残し、秋月さんが腰に
巻いていた自分の上着を洗い、昔の人は大変な事をしてたんだなと痛感していた。
俺が上着を洗い終えて、絞っていた時だった、城砦集落の周りをオスプレイが大きく
先回しながらトラックに近づいてきたのは、俺はオスプレイが近づいた事で舞い上がった塵や埃やゴミが目に入らない様に顔を覆って伏せていたら、俺の近くにロープが
降りてきたと思うと、やっと言う間に兵士が目の前に立っていた。
「動くな、貴様は何者か」
俺は兵士い誰何されて、小銃を突き付けられていたが。荷台の中に居た秋月さんには気が付いて居ない様子である。
直ぐに俺は、被災者だと言うと、住所と名前を自衛官に伝えた。
自衛官は民間人だと解ると、直ぐに銃口を下げて、俺に怪我はないかと訊ね、俺は無い
と伝えたら無線で上空に連絡を取り始めていた。
「そうです2尉、民間人を1名保護しました」
俺は、直ぐにトラックの荷台に着替えている女の子がいると伝えると、
無線で民間人は2名と繰り返しはじめていた。
そして、城砦の中に入ったのかと聞かれたので、はいと答えると自衛隊の
隊員は城砦の中は安全なのか、他に民間人はいないかと聞いてきた。
俺は正直に答えると、自衛官の方達は信じられないと言う表情に代わり、無線で
上空のオスプレイに伝え始めた。
俺は無線で連絡している自衛官の横に立っていたのだが、1人の隊員が荷台横に付いている扉を開けようとしたのが目に入り、俺は止める暇も無い間に隊員は扉を開け放つと、そこにはズボンのボタンを留めていた秋月さんの姿が、俺達の目に入ってきて
いた。
お互いに気まずい雰囲気になっていたが、秋月さんは顔が徐々に真っ赤になりだして
最後には、悲鳴をあげ裸足のまま近くに置いていたリュックや片手バックに、駆け寄り扉を開けた隊員にぶつけだしていた。
「すまない、故意ではないだ許してくれ」
隊員はそう言っていたが、秋月さんの怒りは収まらず、直ぐに俺はトラックの荷台の
扉を閉め、外から秋月さんに謝罪し、隊員のした事を許して欲しいと懇願していた。
隊員は俺の荷物が入った片手バックが顔面に当たっていたが、重たい物は全て出していたので怪我はなかった。
上空のオスプレイと連絡を取っていた隊員は、そんな事に目もくれずに淡々と任務を
こなして、オスプレイの着陸できる場所を確保する事に専念していた。
「高林さん、一緒に集落の中に入って貰っていいですか、もしも住民に攻撃されたら
攻撃しない様にと、高林さんから住民に伝えて欲しいんですよ」
俺は頷くと、秋月さんには近づかない様にと、その隊員に伝えると直ぐに隊員は
無線で他の隊員にトラックの荷台は開けない様にと伝達してくれていた。
これ以上、秋月さんを怒らせると、俺がハラハラしてしまうからだ。
そして、オスプレイは集落の真ん中にある空き地に着陸すると、中から隊長らしき
人が降りてきて、俺に挨拶をすませた後に、俺が伝えた情報を誰から聞いたのかと
訊ねてきたので、俺は学者さんの側に隊長を連れて行き、学者さんに隊長さんを
紹介したのである。
「なるほど、言ってる事が事実ならば、東京周辺は壊滅的打撃を受けると言う
事になるな、十条2尉、駐屯地のお偉方に今の事を伝えてもらいたい」
「了解だ髭2尉、お偉方が信じてくれるかは不明だが、現場を見れば嫌でも
信じて貰うしかないだろうな」
十条2尉と言う隊員は、オスプレイのコックピットに乗り込むと無線で駐屯地の
上官に連絡をしはじめていた。
そして、髭2尉と言う隊長は、俺に外の死骸の事を訊ねてきたので、正直に話すと
信じられないと言う風な顔をして、俺の肩に手をやり嘘ではないのかと
揺さぶりながら訊ねてきていた。
「タカバヤシハーワタシタチノーイノチノオンジンーナンデウソヲーイウー
ヒツヨウガーアルノー」
そう言ってくれているのは、綺麗なお姉さんの学者さんである。
そして、後ろから鬼の形相で、こちらに近づいていた秋月さんにも聴こえたのか
俺が倒したと、声を大にして隊長さんに伝えていた。
「このおじさんはね、頼りなさそうだけど、まともな武器も無いのに、化け物達を
どんどん倒していく凄い人なの、自衛隊の人が信じなくても私は、おじさんしか
信じていないの」
「私とおじさんは、昨日の朝に出会ったけど、私は何度も助けられてるの、
私を助けてくれたのはおじさんだけ、他には助けてくれた人なんって居なかったわ」
そう髭隊長の前で、声を大にして言う秋月さんだったが、目からは涙が毀れおちて
今にも大泣きしそうな程に、感情が高ぶっている様だった。
「先程の発言を撤回して謝罪をさせて欲しい、こんな状況で自分だけでも生き残れるか解らないのに、人助けをしながら怪物退治までしてのけるとか、我々特殊作戦郡の
隊員でも、そうは居ないだろう、先程は疑って申し訳ない」
俺は、隊長の言葉を頭の中で考え中であった。
特殊作戦郡あの特殊作戦郡自衛隊のエリート中のエリートの・・・
マジか・・・作戦郡の隊長から褒められてしもうた・・・
俺の頭の中は一瞬で真っ白になり、思考が停止してしまっていた。
「おじさん、何をボッーとしてるの、ちゃんと言い返してよ」
頭の中で考えていると、秋月さんの声が聞こえてきて、俺は正気に戻ったのである。
そして、秋月さんの保護を優先して欲しいと隊長に伝えると、隊長は頷き、当然だと
言う表情をしていた。
「ちょっとおじさん話が違うよ、私とおじさんの2人で奴等を倒しながら、逃げ送れた人達を救助するっていったじゃない」
秋月さんは、俺が自衛隊に彼女を保護する事を優先させた事に反発して、そう言った
ようである、そして隊長に詰め寄ると、保護何って必要なのって言い、保護を拒否
してしまったのだ。
「キミ、キミはまだ未成年だよね、未成年を危険な場所に置いて行く事は出来いない
私達と一緒に安全な場所に避難して貰うよ、これは強制だ」
隊長の言葉を聞いた秋月さんは、隊長に詰め寄っていたが直ぐに離れて、俺の後ろに
隠れると、後ろから顔を出しながら「嫌ぁー絶対に嫌ぁー」と小さな子供の様に
駄々を捏ねている。
俺は、秋月さんの頭を撫でながら、これだけ化け物を倒せば、家族の敵討ちは済んだだろうと言い、諭したが彼女は、まだ済んでないじゃないとだけ俺に聞こえる声で伝えた。
そして・・・・・
「おじさんは、敵討ちは済んだだろうって言うけど、他の家族を殺された人達で、
敵討ちをしたくても出来ない人達がいる、そんな人達の為に私はこれからも戦う」
俺は頭に手をやると、困った表情をしながら秋月さんに優しく語りかけていた。
「それを君がする必要は何処にもない、国民の仇は自衛隊の方達が必ず取って
くれるから、俺達は邪魔にならない様にしないと行けないんだ、そうしないと
自衛隊の人達が仕事が出来ないじゃないか」
「おじさんの馬鹿ぁー」
その瞬間に俺は、秋月さんの頬を平手で力をいれない様にして、駄々を捏ねる
子供にはコレが一番とばかりに躊躇なく叩いた。
「君が、もしも戦いで死んでしまったら、君を助ける為に死んだ、お母さんや
お兄さんは犬死した事になる、そこを良く考えなさい」
秋月さんは泣き崩れ、俺が言っている意味を理解したのだろう、家族の名を
呼びながら泣いている。
暴力は良くないが、命の掛かった状況で我侭など言われても・・・俺1人ならば
我侭も聞けたが、此処まで人数が増えたらどうにもならない・・・
このまま、義勇兵まがいな事をしても、遅かれ早かれ何時かは死ぬだろう、
そうなっては、彼女を助けた家族は本当に犬死だ。
大人が付いているんだから、上手く幕引きをさせてあげないと、それが大人の
義務である。
これが彼女の為だ・・・これで良いんだ・・・俺を恨みたければ恨めばいい
君はまだ若いのだから、これからの長い人生で何とでもなるはずだ。
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