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第2話 過去と現在

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白い光が辺り一面に広がって、何も見える物はなかった。
そんな白い世界が、広がる世界に小さな薄気味が悪い色の
空間がある。
その空間には、呼吸をするのも辛そうな女性と、もう1人は
手に尖った杭を持っている男性だ。
この場面は覚えがあった。
俺がゾンビになりそうな女性の最後を看取った時の場面だ。

夢から覚め辺りを見渡すと、昨夜と同じで屋根裏部屋の薄暗い
闇の中だったが、外からの光が壁の隙間から薄っすらと室内に
差し込み室内を少しだけだが、照らして明るくしていたのだ。

そして、女性の骸も屋根裏部屋の隅にあった。
布越しに女性の体の上に手を当てたのだが、女性からは冷たい
感覚しか感じ取れないでいた。
これが女性が望んだ事とだと思っても、俺は・・・俺は・・・
とんでもない事をしでかしてしまったんだ。

日本の法律ならば、俺のした事は死体損壊・遺棄罪の罪になる。
でも此処は、どう見ても日本ではない、だが、俺は日本人なの
だ。
平和な世界で育ち暮らしてきた俺には、昨日から起こった事が
どうしても信じられないでいた。
ゾンビを殺した事も、女性の死体を損壊させたのも倫理的に
大問題なのだ。

もしもゾンビではなく、あれが病気の人で俺に助けを求めていた
としたら・・・
俺は人殺しをしてしまった事になる。
正当防衛だとしても、相手が死んでしまっては過剰防衛になるの
だから、やっぱり俺は人殺しなのだ。

ここは素直に自首をするのが一番賢明な判断ではないだろうか?
この近くに警察や自衛隊・・・いや此処は日本ではないのだから
軍隊と言った方が正しいだろう。
警察や軍隊に事情を説明して、俺がしてしまった罪を償うしか
ないだろう。

そうと決まれば、この屋根裏部屋から下に降りて、警察などを
探す他ない。
屋根裏部屋に上げた梯子を降ろすと、静かに下の階に降りようと
した時だった。

「ぐがぁぁぁぁぁぁぁ」

急に外から遠吠えみたいに声が響いてきていた。
その声に俺は体をビックリさせてしまい、もう少しで梯子から足を
踏み外すところだった。
声の方角の壁の隙間から外を覗くと、外の様子が少しだけだが見え
何が起こってるかを確認する事くらいは出来ていた。

そこで見た光景とは・・・

ゾンビらしき人物が3人と年配の男性が見え、ゾンビらしき3人が
男性を襲い今にも地面に押し倒しそにしていた。
男性はゾンビに首や腕などを噛み付かれて、痛くて苦悶の表情で
悲鳴をあげている。

俺は急いで梯子を降りると、女性から渡された剣を腰ベルト付きの
鞘から抜き放ち剣を構えて、辺りを警戒しながら外の様子を確認し
3人・・・いや・・・もう3体のゾンビと言った方が良いだろう。
あれは死人だ。海外ドラマや映画で観たゾンビその物だ。
人を食う習慣が、こちらの世界にあるとは考えにくい。
日本で生活していた時の常識は、此処では通用しないようだ。

日本の様に行動して、もしも男性を助けに行ったとすると、俺も
あのゾンビの餌食になるだろう。
だとすると、男性を見捨てるのが俺に取っては一番いいのだが、
でも、助けを求めている人を見捨てるのは、倫理的に間違っている
のだ。

「俺はどっちをしたいんだ!?」

思わず叫んでしまったが、助けたい気持ちと逃げ出してしまいたい
気持ちが交差していて、中々考えが決まらない事に業を煮やして
しまい。
叫んでしまったのだ。
助けるならば早くしないと、男性は完全に手遅れになってしまう。
だが、助けたとしても男性の命は長くは無いのはあきらかだ。
それでも、俺は・・・俺は・・・

扉を勢いよく開ける音と、俺の精一杯の咆哮が辺りに響き渡り
男性の悲鳴だけに集中していたゾンビ3体の内の1体が、
俺の方に顔を向け唸りをあげだした。
そして、
俺に気が付いたゾンビが1体だけ、俺に向かってゆっくりとした
足取りで向かってきている。

俺もゾンビの唸り声に負けずと、腹の底から声を張り上げて声を
だし、勇気を振り絞ってゾンビに向かって行く。

右肩から袈裟懸けに斬り付けたのだが、頭部を潰さないとゾンビ
は動きを止めず、そのまま俺に向かって手を伸ばしてくる。
震える手で剣を握り締めながら、ゾンビの伸ばした手を振り払い
そして、剣を頭の高さから更に上に上げてから、振り下ろして
ゾンビの脳天へと剣の刃を食い込ませる事に成功させた。
それでゾンビの1体を処理できたのだ。

残るは二体だが、二体とも男性の腕や足に歯を立てている。
俺に意識を移す前に2体とも処理できれば良いのだが、そんなに
都合よくはいかなかった。

足を噛んでいたゾンビの背後から頭に剣を振り下ろして倒すと
流石に残りのゾンビは、俺を攻撃しようと向かってきた。
3体目ともなると、手の震えも少しだけだが収まってきていた。

ゾンビが正面から向かってきたので、俺は横に避けてすれ違い
様にゾンビの手を剣で斬り、よろけて倒れこむとゾンビが
立ち上がらない内に背後から頭部へ剣を深く叩き込み止めを
さしたのだった。

辺りを見渡すと、そこには動くゾンビはいなくなっており
男性が苦しそうに息をしながら、俺に何かを訴えていた。
男性に近づくと男性も女性と一緒で、俺に頭部へ剣をさして
欲しいと懇願していたと思う。

思うとは、ジェスチャーだけが理解でき男性が言っていた
言語は俺には理解が出来なかったからである。
男性は、肩から下げていた鞄から矢を何本も取り出すと
男性の傍らに転がっていた小型のボウガンを手で指している。

もしかして、このボウガンを俺に使えと言っているのかも知れ
ないが、言語を理解できない俺には頷く事しかできなかった。
そうしている内に、男性の意識が消え、口や鼻に手を当てても
息をしてない事を確認すると、俺は静かに男性の顳顬こめかみ
剣を刺して男性のを守ったのだった。

誰も死んでから歩き周りたい人何って居ないだろう。
それも人を襲い、生きた人間の肉を食べたいとは思わない。
俺はいつの間にか涙を流しながら、空を見上げていた。

「こんな世界、大嫌いだ~~~」

泣きながらでも俺は、やる事をやっている。
男性の手荷物から使える物を取り出して、男性が持っていた鞄に
詰め込み、男性が使っていた皮の胸当てと皮の篭手を取り外して
自分に装備したのだった。

男性には悪いが、足もスリッパではこれからの行動に支障をきたす
ので、男性が履いていた靴を拝借させてもらった。
男性の靴はサイズが大きかったが、爪先に布を詰める事で何とか
履けるようになっていた。

一旦、民家に戻ると寝室にあったシーツとロープを取ってから、
男性の亡骸の下に戻ってきた。
そして
男性をシーツで覆うとロープで確りと結び、民家の近くまで運んで
きた。
何をするかと言うと、女性の亡骸と一緒に墓に埋葬しようと思ったか
らである。

民家の横にある納屋にスコップを探しに行き中に入ると、納屋の中で
微かにだが、すすり泣く声が聞こえた気がした。
納屋は馬小屋を併用されているのだが、扉は確りした作りになっており
ゾンビが叩いたとしても、少々では壊れはしない作りだったのだ。

「誰か居るのか?」

馬もはゾンビに食われてないので、1頭だけだが居た。
もしかすると、馬の鳴き声だったかも知れない。
そんな事を思ってスコップを探し始めたのだが、納屋の置くから
今度は明らかに鈍い音が響いてきた。

納屋の二階から天井を突き破って降ってきたのは・・・・・


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