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第118話 謝罪と先生
しおりを挟む俺は、イルマを返す様に男に頼んだのだが、男は金だけ
では足りないと言い出していたのだ。男の身内に手を出
したのは事実だが、向こうから先に手を出した事も伝え
ていたのに、こちらが悪いとばかりに、謝罪を要求され
たのだった!
「こっちが先に手を出したのは謝ろう!だがな、此処ま
でする必要は無いはずだ。何故ここまで俺達の仲間にし
てくれたんだ?」
男が言いたかったのは、遣り過ぎて仲間の男達が気絶し
てしまっている事を言っているのだろう!だが、此方は
1人だったし、向こうは2人掛かりで襲ってくれば、誰
でも手加減など出来ないはずだ。それなのに、男は理不
尽な事を言ってきている。
俺は男に、2対1で戦うならば両方を気絶させるしか勝つ
方法はないと言っても、男は頑として俺の言い分を認めな
かったのだ。こうなれば話し合いは平行線を辿ってしまう
事になる。
「そっちも誠意を見せてくれれば、話は早いんだがな!
俺等は誠意を見せたよな?ならば次は、其方の番なんじゃ
ないかな?」
つまり.......男が言いたかったのは、お金を余分に出せば
イルマを返して、尚且つ暴力を振るった事も無かった事に
してやろうと言いたいのだろう?
俺は気が長い方では無いのだ。寧ろ気が短い方に入る人種
である。此処まで言われてしまったのである。俺の堪忍袋
の尾も切れ掛かっているのだ。
俺は腰の刀に手を掛けると、何時でも抜ける様に身構える
のだが、それを悟った男達は、奥から用心棒を呼び出した
のだった。
「先生!先生!早く来てくださいよ!」
男達に呼ばれて遣って来たのは、大柄で片目を剣で斬られて
潰されている男だった。足運びも中々の物であったのだ。
体付きも良く筋肉が、満遍なく付いていて鍛え上げられた
体付きであった。
「何だ?どうした?俺が出る様な事でも起きたのか?」
用心棒の男は、面倒臭いのか嫌々奥から出てくると、男達に
何事かを訊ねていたのだ。
「先生、此の男が俺達の仲間をのしてしまったんですよ!
そして、俺が奴に誠意を見せろと言ったら、奴は剣を抜く
仕草をしましてね。それで、先生を呼ばせて貰ったと言う
次第ですよ。」
「ふむ、おい!そこの男!コイツが言ってる事は本当なのか?」
用心棒の男は、行き成り俺に真実かどうかを訊いて来たのだった。
俺は予想外な事に、少しだけだが驚き返答が、少し遅れてしまった!
その男の仲間をのしたのは事実だが、俺は最初にのした男達には事情
を伝えたのに、向こうが話を訊かずに襲い掛かって来たんだ。それで
已む無く、そこに転がってる男達を伸した。それを其方の男が、借金
だけでは無く慰謝料も払えと言い出したんだ。何で襲われた方が謝罪
と慰謝料を要求されなければならない?どう考えても可笑しな話であ
るだろう!
「確かに!可笑しな話ではあるが、こいつ等は町のゴロツキだぞ!
話が通じると思うか?金になると思ったら、とことん絞り取る事
しか考えてないんだ。だから、諦めて金を払えば良いのさ!」
理不尽な物言いに、俺は更に堪忍袋の尾が切れ掛かるのが解った。
もう限界だ。こんな茶番をさっさと終わらせてイルマを連れ帰る
事にしよう!
俺の目が据わると、用心棒の男も冗談を言う暇が無くなったのだろう
直ぐに剣の柄に手を掛けると、一瞬の内に剣を抜き放っていたのだ。
その動作を見るだけでも、男がどれだけの使い手かが良く解る事で、
直ぐに2人は戦闘に突入したのだった。
男は、ジリジリと間合いを詰めてきているが好成は、その場から動か
ずに居たのだ。居合いの構えを崩さずに、一撃に全てを懸ける居合い
は、こちらの世界では知る人など皆無であった。
「よう!貴様は何で、その場から動こうとはしないんだ?足が竦んで
動けないとか言うなよな?もしも、足が竦んでいるならば、今ならば
逃がして遣っても良いんだぞ?早く降参しなよ!」
用心棒の男は、剣を上段に構えたまま、ジリジリと距離を縮めて来て
いるのだが、俺は一歩も動かずに、刀の間合いに用心棒が入るのを待
っているだけだったのだ。それを向こうの用心棒は、勘違いをしだし
俺が、足が竦んで動けないと思い込んでいたのだ。
用心棒の男が、俺の間合いに入るや否や、男もまた間合いに入ったのだ
ろう、男も上段に構えた剣を振り下ろしたのだ。そして、勝負は一瞬の
間に決着が付いていた。
俺は、まず男が上段から振り下ろす剣を刀で弾き飛ばすと、直ぐに鞘に
刀を入れると、2撃目を続けざまに解き放っていた。その2撃目は男の胴
に吸い込まれるように入り、そして、男は白めを向いて卒倒していたの
だった。
男は、胸プレートを装備していたので、大怪我には為らずに居たのだが
好成の渾身の一撃を思いっきりに胴に喰らい、流石に胸プレートを着て
いたとは言え、衝撃は胸プレートを貫き用心棒の男の体に、凄い衝撃を
伝わっていたのだった。
それを観た借金取りの男達は、その戦いの凄さに度肝を抜かれてしまい
皆、腰を抜かして座り込んでいたのだった。
「先生.....目を覚まして下さいよ!お願いですよ」
借金取りの男は、用心棒を一生懸命に起こそうと、体を揺らしていたが
完全に気を失ってしまっている相手に、何をしても無理な話であったの
だった。
俺は、借金取りの男の前まで行くと、謝罪とイルマの返還を求めたのだ
った。
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