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第105話 今後の対応とお褒めの言葉
しおりを挟む旦那様、只今戻りました!
メイド姿のヘレナでは無く、全身鎧で身を固めた姿で辺境伯の
前に姿を現していたのだった。そして、彼女の手には薄っすら
と血が付いていた。その血は娘のエルナの物であった。
辺境伯はヘレナの姿を目にした途端に、驚きで顔が引きつって
しまったのだ。何故、辺境伯の顔が引きつったのかと言うと、
ヘレナの顔が、今までに見た事もない位に、怖かったからである。
「ヘレナよ、その顔と手に付いている赤い物は、やはり.....」
辺境伯がヘレナに、事の真相を聞きだそうと、おそるおそるヘレナ
に訊いたのだ。そうするとヘレナは、正直に答えたのだった。
あの貴族は、海岸で大陸の傭兵団の本隊と合流した後に、逃亡を図
ったのです。それを白の団の副団長であるエルナは、部下達と共に
阻止を図りましたが、その途中で、傭兵団の本隊に居た魔獣使いに
より重傷を負わされました。幸いにも、救護所となった精霊教会に、
来好成様とその一行が応援に駆けつけてくれたおかげで、医者不足
で、満足に重傷者も治せない状態だったのが改善され、多くの部下
を失わずに済みました。
「そうであったか!それでエルナの傷の具合は、どの様になっておる?」
魔獣使いの魔獣により、胸から腹部にかけて斜めに、切り裂かれて
おり、処置が遅ければエルナの命は無かったです。ですが、精霊様
は、私達をお見捨てになる事は、ありませんでした。
「なんと......だが、助かったのは良かったが、傷の痕が一生残るで
あろうに......エルナはまだ未婚である。エルナの将来を考えると....
やはり、儂も辛いの.....」
エルナの変わりに、話に割り込んできたのはエドヴァルドあったのだ。
彼も何時もの燕尾服ではなく、全身を鎧で固めていたのだが、それが
様になっており、すれ違ってもエドヴァルドだと気が付くのに時間が
掛かる程であった!
「旦那様、エルナも騎士として戦いに参加した身です。旦那様が気に
する事ではありません!エルナが傷を負ったのは、エルナ自身の不徳
が招いた結果なだけです!」
ンンッ!!!
エドヴァルドは最後まで話した後に、後ろから激痛が走った事に驚き
変な声を上げてしまったのだった。
旦那様、あの貴族は白の団の追跡を振り切り、島の奥地に身を隠した
模様です!直ぐに追跡隊を編成して、後を追うのが得策と存じます!
もしも、あの貴族達が島の奥地にある村を襲えば、また更なる被害が
出る事は必至です。
「合い解った!直ぐに白の団と赤の団に青の団は、各村の警備に付く
様に、そして、黒の団は全力を持って貴族を討伐せよ!」
お待ち下さい!経験豊富な黒の団が、傭兵団に当たるのは解りますが
相手の数が多すぎます!是非とも白の団の精鋭もお加え下さい!
「ヘレナよ!黒の団には、ヴィクトル副団長が居る!彼が率いている
部隊が、傭兵団などに負ける筈がなかろう!」
ですが、敵には魔獣使いに重クロスボウがあります。それ等をどう対処
すると言うのですか?重クロスボウのせいで、エルナ分隊の副分隊長で
あるアンットは、腰に矢が刺さり重傷を負ったのをお忘れですか?
「その事なのだがな、既に来殿に頼んだ物がある。先程の別れる際に、
来式銃とオレーク式銃を出来るだけ直ぐに、領主様に譲って欲しいと
お願いをして置いたのじゃ!此方から黒猫屋に取りに行けば、敵の重
クロスボウが相手であろうと、引けを取るはずがない!」
ですが、黒の団は来様の一行に動向する為に、既に島の奥地に出立し
て居るではないですか!今居る団員だけでは、傭兵団より少ない数で
戦う事になるのですよ!
「その為の来式銃とオレーク式銃じゃて!数の有利など銃の前では、
無いのと同じだ。それを可能にしたのが銃なのじゃ!」
それならば、白の団の精鋭を50人を連れて行って下さい!あの者達に
も実戦を積ませ、名実共に白の団の将来を託せる人材にしたいのです。
「解った!解ったから、胸プレートを掴むのを止めてくれんかの?
白の団の将来を託せる人材を育てるのであれば、儂としても協力を
せねばなるまい!」
エドヴァルドの言葉に満足したヘレナは、直ぐに辺境伯に許可を求め
ていたのだった。
「ヘレナが、そうしたいと言うのであれば、余がクドクド言う必要は
あるまい!くれぐれも無茶はせぬ様に部下達に徹底しておいて欲しい
儂から言う事は、それだけじゃな!」
辺境伯は、ヘレナの暴走を止められないと悟ると、直ぐにエドヴァルド
に助けを求めたのだが、エドヴァルドも無理と悟ると、仕方なくヘレナ
の好きにさせたのであった。
「旦那様、儂には今のヘレナは止められないです!」
エドヴァルドは目で、辺境伯に、そう訴えかけたのだが、辺境伯も目で
どうにかしろと、エドヴァルドに言うのだが、2人共に諦めるしか道は
なく、結局はヘレナの言う事を全面的に訊いてしまった結果に終わった
のであった。
そんな場の空気が重くなった部屋に、颯爽と遣ってきた人物が居たのだ。
その人物は、シーランド私設海軍の提督であるジャック提督、その人で
あった。
「おぉ~~っと!此れは此れは、格騎士団のトップである。お2人が勢ぞ
ろい為されて、どうしたと言うのですかな?俺?俺は会戦の報告で、屋敷
に立ち寄っただけですぞ!」
「何も訊いて居ないのに、何時もの様にペラペラ良く喋る口だな?」
エドヴァルドはジャック提督を見るなり、少し辛口な口調でジャックに
接したのであった。
「エドヴァルド殿、またそんな事をおっしゃって、実は俺が心配で心配
で、堪らなかったのではないですか?」
「ジャック提督、そちは何しに此処に来たと言ったか覚えておるか?」
辺境伯は、ジャック提督に此の場に来た意味を思い出させると、直ぐに
ジャック提督から会戦の報告を受けたのだった。
「な.....なんと!それは真か?2隻の戦闘用キャラベル級を拿捕したと!
そうなると、将来的には、その拿捕した戦闘用キャラベル級を実戦配備
する事も出来るのじゃな?」
「その通りで御座います!戦闘用キャラベル級は、河川でも使える程に
小回りが利きますが、少し残念なのは喫水深く、直ぐに浅瀬に乗り上げ
てしまう事です!」
「そうか.....それでも、ジャック提督は良く遣ってくれた!褒めて使わす」
ジャック提督は、辺境伯からお褒めの言葉を貰うと、ニコニコ顔だったが
直ぐにヘレナに捕まると、苦痛に顔を歪ませたのだった。
「痛い、痛いって!足を踏むのを止めて下さらないか!」
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