戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第98話 親子と指揮権の委譲

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シュルヴィア副長、敵は浅瀬に入ってしまったぞ!此れからどうする?
俺の意見を言った方が良いかね?それとも、シュルヴィア副長、自身で
考えて見るかね?

「はっ、提督!敵が浅瀬に入ったのは好機と考えます!何故ならば、敵
は容易に、浅瀬を出れないからです!出るルートは限られていますし!
相手は全て帆船であるのも重要です!」

ほう、どう重要だと言うのだねシュルヴィア副長?

「船底は帆船の方が、より深くなっているからです!でも、ガレー船は
船底が浅く、浅瀬でも座礁しないで進むことが出来ます!」

その通りだ!中々に勉強をしているようだな!

「この場合に取る作戦は、2つあるルートを軽ガレオン級2隻づつで封鎖
してしまい!残ったバーバリアンガレー級2隻で、敵の護衛艦である船を
沈める事が重要になってきます!」

敵の護衛艦は、戦闘用キャラベルだぞ!大砲の数もバーバリアンガレー級
よりも多く、バーバリアンガレー級が戦闘用キャラベルに勝っている点と
言えば、浅瀬で自由に戦闘が出来る点と乗組員の数だけだぞ!これをどう
遣って覆すと言うのだ?

「軽ガレオン級には浅瀬の出口付近から、援護射撃をしてもらい!残った
バーバリアンガレー級で、浅瀬を自由に進み敵を仕留めて貰います!」

浅瀬の出入り口から、浜辺付近までの距離は、大砲の射程ギリギリになる
のだぞ!援護射撃になるとは思えないが、それでも良いのか?

「敵を精神的に追い詰める事が出来ます。それだけでも、此方のバーバリ
アンガレー級の船員にすれば、有利に戦闘が進む事でしょう!」

うむ、悪くわ無い案であるな!だが、それだけでは不十分だ。でも、今の
シュルヴィア副長の考える作戦としては、70点と言う所だ!

「提督、100点を出すには、どうすれば良かったのですか?」

それは、数日先か数年先かになるかは解らないが、自分で経験を積んでか
ら考えると良い!その時に、過去を振り返ってみて、あの時の行動は本当
に良かったのか、それとも悪かったのかを考え直すと良い!

「それって.....つまりは、私に経験を積めと言っているだけでは?」

その通りだ!100点など、誰もが即決して出せる物ではないのだぞ!それを
出来る者達も世の中には居るが、俺には無理な話っである!だから、俺はな
今までの経験と照らし合わせて、より良い方法を考えるのだ。そうすれば、
少なからず100点に近い点数になると言う訳だ。

「ジャック提督、シュルヴィア副長に経験を積ませる事は重要ですが、それ
だけでは駄目ですよ!経験則も大事ですが、ちゃんとした知識も付けないと
俺みたいな艦長になってしまいますぞ!」

イデオン艦長、貴様は直感で行動する派だったよな!直感を頼るのも良いが
頼りすぎるのも良くは無い、全てを均等に使い判断する事が重要なのだ。
経験、知識、直感、この3つが揃って始めて立派な船乗りになれるのだぞ!

「それは、何時も聞いているセリフです!今更に言われなくとも解って居ま
すよ!」

それならば良いのだがな?では、艦隊に指示を出してくれシュルヴィア副長
頼んだぞ!

そう言うとジャック提督は、操舵士に船の操舵を任せると、シュルヴィア副長
の傍に向かったのだった。そして、シュルヴィア副長の肩に手を置くと、提督
は、そっと耳元で囁いていた。

失敗を恐れては行けないが、部下を無駄死にさせる事は、もっと駄目だ!
それを踏まえて、最善の判断を考えるのが、艦長や提督と言った者の勤め
なのだ。この試練を乗り越えてみせよ!

12歳の少女に、過酷な試練を言い渡すジャック提督であったが、耳元で囁いた
瞬間は、12歳の少女の父親であった。その父親としての一面を見せる瞬間にも
ジャック提督は、娘の成長を望んでいたのである!

ジャック提督は、此の戦いが終われば、陸に上がり、予てより辺境伯に頼んで
いた事を叶える事が出来るのだ!ジャック提督の頼んで居た事とは、どんな事
なのかは、本人の口から出るのを待つしかなかった。

シュルヴィア副長、敵は浜辺に上陸仕様としているぞ!小船に乗り移る瞬間を
狙うならば今しかないぞ!艦隊に指示を出さなくても良いのか?

「何時もは提督が、戦闘開始の合図を送るのに、今日に限っては、どうされた
と言うのですか?何時もと様子が変ですよ提督!」

そんな事より!攻撃開始は、どうするのだ?

「攻撃は今が絶好の好機です!私が開始の合図を送っても良いのですか?」

うむ!

「では、艦隊に手旗信号で伝えよ!撃ぇ~!」

シュルヴィア副長が、撃てと合図を送ると、シーランド私設艦隊の全艦から
一斉に砲火が放たれたのだった。瞬く間に、バーバリアンガレー級は浅瀬に
侵入を果たして進み、援護射撃をしている軽ガレオン級は、大砲の射程一杯
でも、ドンドン大砲を撃ち続けていたのだ。

奇襲攻撃を受ける形となった敵艦隊は、直ぐに護衛艦を先回させようとした
のだが、浅瀬で思うように進めずに居ると、浅瀬を自由に航行している船の
バーバリアンガレー級に、一斉射を食らってしまい、沈黙してしまったのだ。
それでも、バーバリアンガレー級は警戒を止めずに、動く物影が見えたら直
ぐに甲板に向かって大砲を打ち込んでいた。

よし!最後の閉めと行こうか!白兵戦の準備に取り掛かれ!

《へい!》

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