戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第97話 更迭と演技

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少佐、この船を預けるから、確りと戦って欲しい!解ったな?

シュルヴィア副長は、部下に直接命令を下すと、イデオン艦長を
連れて旗艦であるヴァンハネンに戻ったのであった。

「シュルヴィア副長殿よ!俺をどうする気だい?旗艦に連れて来ても
俺が何をすれば良いってんだい?まさか、提督のお守りでもしろと?」

貴様は、邪魔にならない隅にでも居ろ!私の邪魔をすれば、貴様も敵
も全て海の藻屑としてやる!解ったな?

「おぉ~怖いですな!副長殿は、何故そんなに可愛い容姿なのに、言葉
使いが荒いんだい?提督の娘さんなのに、提督に全然似てないし、だが、
提督と違う点は多々あるな!まずは、人望がある所と!それに腕っ節が
目茶強いからな!後は、謀略も戦術も提督より全て上と来ている!もう
提督はお払い箱にして、副長がシーランド私設海軍の提督になった方が
全てが丸く収まるんじゃないですかい?」

貴様、父上....提督を悪く言うと、只では済まさんぞ!腕の1本や2本で
済むと思うなよ!

「イデオンの言う通りだ!俺は引退する時期なのかも知れないな.....
今回の戦いが終わったら、艦隊はシュルヴィア副長に任せて、俺は
港で余生を過ごすとする!」

提督!何を弱気な事を言っているのですか?私は、まだ12歳なのですよ!
提督に教わる事が、山の様にあるのに私を残して引退などと、何を考えて
いるのですか?

「提督、あんた英断だぜ!そうしなよ!引退するには早いかも知れないが
後継者は、こうして立派に育っているのだ。安心して港で余生を過ごしな」

イデオン艦長、貴様と言う奴は!父上に何って事を言うのだ。許さないぞ!

そう言うとシュルヴィア副長は、イデオン艦長の襟首を掴もうとしたのだが、
だが......身長が足りなさ過ぎて、襟首に釣り下がっている様にしか見えていな
かったのだ!

「シュルヴィア副長!腕力で部下に物を言い聞かせるのは、いい加減に諦め
た方が良いですよ!何せ副長殿は、身長が小さいのですから!」

身長の事を言われたシュルヴィア副長は、顔が見る見る赤くなって行くと
終いには、腰に差している短剣を抜き放って、イデオン艦長に向けて投げ
付けていたのだった。

ビィーン!!!

「こんな事をしている暇は無いと思うんですけどね?敵さんは、どうする
んですかい?まだ気付かれてないですが、このまま提督の戦法で行くので
すか?それとも新しい案があるのですか?」

急に仕事の話に戻されたシュルヴィアは、イデオン艦長の申し出に対して
直ぐに返事をし様としたのだが、少し考え込み始めた!

このまま提督の戦法で戦えば、此方の被害は少なくて済むが、あの戦法は
沖合いであるから使える戦法である!あれから既に1時間以上は経過して
いるのだ。そろそろ島の浅瀬に差し掛かる地点である。そうすると、戦法
を変える他は無かったのだ。

やはり此処は、浅瀬に入った時に沖合いからの砲撃戦しかあるまい!
イデオン艦長は、旗艦ヴァンハネンの砲術長に臨時で任命する!直ぐに
持ち場に赴き、命令があるまで待機して置くように!解ったな?

「へいへい!合点承知!副長の傍で戦える名誉は、ヴァタネン艦長の
この俺が、頂きましたぜ!がっはははは」

縦列航行を持続したまま、敵を追尾する!進路はこのまま!帆を一杯
まで広げろ!全速力で追いかけるぞ!

《合点承知です!》

相手は、輸送用大型船が3隻に護衛が2隻の計5隻だ!護衛を如何に早く
沈めるかで、勝負の行方が決まると言える!総員心して戦えに備えよ!

「副長殿、相手の護衛艦は、戦闘用キャラベルの小型軍船だが、小回り
が利くし、大砲も中型船並に搭載できるタイプだ!気を抜くと返り討ち
にされかねないぞ!」

そんな事は、イデオン艦長に言われなくても解っている!イデオン艦長
は、早く持ち場に向かうのだ。

「シュルヴィア副長、イデオン艦長はな!副長の事を心配して気を利か
せてくれただけだ。そう邪険にするものではないぞ!」

ですが提督、あんな事を言われなくても、私は解っています!提督に
教わった事なので、忘れたりはしていません!それに、私はイデオンが
嫌いです!

「上に立つ人間が、人を好き嫌いしては駄目だぞ!人に好かれるのは良い
でも、嫌われるのは駄目だ!そして、もっと駄目な事は、部下からの信頼
を失う事だ!俺は、今まで部下の期待を裏切った事は無いが、この性格だ
し俺を嘲る者も居るかもしれない。だが、部下からの期待に答えて来たの
だ。その期待を叶えて来たから、今の俺があると言うわけだ!この性格は
どうにもならないが、部下からの期待だけは、決して裏切ってはいけない
解ったかシュルヴィア副長?」

提督は、調子が良い事を言い過ぎなのです!ですから、部下達から弄られ
てしまうのです!そして、部下達は調子が良い提督の言う事など聞かずに
勝手にしてしまうのです!

「はっはははは!シュルヴィアに痛い所を付けれてしまった!そうだな!
お調子者な俺は、部下達から弄られてしまい、それを勘違いした者からは
俺を蔑ろにしても、良いと勘違いをしてしまうのだろう!イデオン艦長は
他の艦長より、そこは解って遣ってる節があるのだがな!イデオン艦長が
馬鹿をするから、他の艦長達は俺の言う事を真面目に訊くのだ。反面教師
的な役割がイデオン艦長の役目でもあるのだぞ!」

「提督!聞こえてますよ!副長に全て言ってどうするんですか?俺が良い人
ぽく聞こえてしまうじゃないですか!止めて下さいよ!」

「イデオン艦長は、善人では無いが、良い奴ではあるな!はっはははは」

なっ.......この2人には、今の私では勝てない!

提督と1番古参な艦長は、仲が悪そうで、1番仲が良かったのだった!

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