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第91話 分隊と2つの騎士団
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「よう旦那!本隊に連絡したから、そろそろ此処を脱出するぜ!」
傭兵隊長は、仲間の傭兵に伝書鳥妖精を使い、合流場所を伝えると
共に、貴族の脱出する手筈を整えたのだった。
「よし!では儂達が安全に脱出を出来る様にするんじゃぞ!」
「安全に脱出出来るとは、俺は一言も言ってないぜ!?こんな包囲され
た状態で、無理に逃げれば敵に矢を射掛けられるのは、明らかだぞ!
それで、被害が出ない方がどうかしてるぜ!」
「そんな事は、儂が知るか!お前達には高い金を払ってるんじゃぞ!
お前達が、儂等の為に盾になれば良かろうが!」
この貴族は、自分達が助かる事しか頭にない様である。
「チッ!知るかよ!」
傭兵隊長は、貴族に聞こえない声で、貴族に対して悪態を付いていたのだ。
この貴族に対して、傭兵隊長は命を掛ける気などは、最初から無いのだ!
それもそうである。傭兵は命が合って出来る仕事なのだ。命を張ってまで
する仕事など、戦場で高い報酬が支払われる時にしか出来ない!
こんな安い契約金で、命を張っていたら命が幾つ合っても足りはしないで
あろう!傭兵隊長は、内心でそう思っていたのだ!
「包囲の外に、傭兵団の精鋭30騎が待機している。それに合図を出したら
直ぐに正面から包囲を食い破って脱出する!」
30騎の傭兵が、何故に包囲の外に居るかと言うと、この貴族がケチであるが
為に、此処の宿屋に全員を宿泊させる事はさせなかったのだ。残りの傭兵は
と言うと、近くの安宿に詰め込んで泊めていたのが、この場合には幸いして
いたのだ。
黒の団の団員は、傭兵の数が足りないのを察しており、直ぐに残りの傭兵の
姿を探して近くの宿屋を回っていた時だった。偶然が偶然を呼んでしまい!
突発的な戦闘へと発展していたのだ。
その事を傭兵隊長は知らずに居た。それを知っていたのならば、傭兵隊長は
早々に降伏していたかも知れなかったのだ。だが、今の時点では傭兵隊長は
何も知らずに居る。そして、包囲の外で仲間が待機していると思っていたの
だったが、分隊の傭兵達は、黒の団の団員達80人を相手にしていた。
30対80では、どう考えても傭兵達に不利であった。そして、傭兵達は町中で
騎乗しており、尚更に傭兵達は不利な戦いを強いられていたのだ!
「分隊長!もう駄目です。此処は降参して命だけは助けて貰いましょうよ」
分隊長に弱気な発言をした傭兵は、次の瞬間には黒の団の団員に、槍で突き
抜かれて絶命していたのだ。降伏を口にしていた傭兵を槍で貫いた黒の団の
団員達は、傭兵達の降伏などを認める気はなかったのだ。
今回の犠牲者の中に、黒の団の副団長の弟が居た事が、彼等の理性を無くさ
せていた。黒の団の団員は、副団長に皆が敬意を払っていたのだ。それだけ
副団長は団員達から好かれていた。
その副団長の身内を死に追いやった者達を生かして、このシーランド本島から
出す気は、黒の団の団員達にはなかった!
命乞いをする傭兵達は、既に斬られていた!残るは逃げる傭兵達だけである!
その数は、当初は30騎も居たが、多勢に無勢とは此の事である。黒の団の団員
達には怪我人は居る者の死人は居なかったのだ。だが、傭兵達は既に、10人程
までに減っていたのだ。
「チッ!10分位の戦闘で、半数以下に減るとは予想外だ!傭兵団の中でも俺達
は精鋭中の精鋭だぞ!それなのに敵の奴等と来たら、それぞれが手練れ揃いと
きやがった!まったく嫌になるぜ!」
黒の団は、辺境伯家の中でも1番実戦経験がある者達である。団員達は副団長
の指南を受けており、それぞれも戦場帰りと言った経験を積んでいたのだ。
そして、腕の立つ者達を仕官させている事も大きかった。
だが、腕の立つ者と言っても数は、そこまで多くは無かったのだ。仕官させた
者達と言っても、精々が10人も居なかった。残りの者達は、譜代の家臣である
者達だ。そんな彼等を鍛えたのは、実戦経験が豊富な者達であった。
技量が同じならば、数で勝る黒の団の団員達が、傭兵達に負ける筈がなく!
時が経てば経つ程、黒の団が優勢になって行ったのだった!
そんな最中に、分隊長は決断を迫られていたのだ。
「此処で逃げるか.....いや逃げても助かる見込みはないな!そうなれば残るは!
隊長と合流してから、一気に包囲を突き破るしかない」
分隊長は、決断すると直ぐに部下達を纏めていた。そして、貴族が泊まっている
宿屋を目指して馬を走らせたのだった。馬の足と人の足では、直ぐに距離が開い
てしまい、黒の団の団員達は傭兵団の分隊を見失ってしまったのだった。
「クソッ!馬の足には勝てなね!でも、あいつ等が行く先は解ってるんだ!
焦ることは無い!副団長と合流するぞ!」
《おう!》
朝が早いとは言え、町中で此処までの戦いをすれば、騒ぎにならない筈が無く
町中では、領民達が騒ぎ出していたのだ。それを沈めて回ったのが、準貴族と
準士爵の私兵騎士団である。人数は少ないが、準男爵と準士爵の護衛としてな
らば十分な数であった。そんな彼等であったが、此度の騒動で、主人を殺され
た事で、領主の辺境伯家に協力する形を取っていたのだ。
私兵騎士団は、それぞれの人数を合わせても20人前後と言った数でしかなく、
領民が騒がないように落ち着かせる事を主にした任務に付いていた。
私兵騎士団の団長は、亡くなった準男爵の長男・準士爵の長男が勤めていたのだ。
それぞれが、赤の精霊騎士団・青の精霊騎士団と名乗っており、この名は由緒あ
る名前だったのだ。精霊戦争時に辺境伯家で共に戦った騎士団であるが、今では、
予算削減に伴って分家にあたる家の者達が、騎士団を継いでいるに過ぎなかった
のだ。
「団長!向こうから騎兵が遣ってきますぞ!?」
「黒の団の者達なのか?」
傭兵隊長は、仲間の傭兵に伝書鳥妖精を使い、合流場所を伝えると
共に、貴族の脱出する手筈を整えたのだった。
「よし!では儂達が安全に脱出を出来る様にするんじゃぞ!」
「安全に脱出出来るとは、俺は一言も言ってないぜ!?こんな包囲され
た状態で、無理に逃げれば敵に矢を射掛けられるのは、明らかだぞ!
それで、被害が出ない方がどうかしてるぜ!」
「そんな事は、儂が知るか!お前達には高い金を払ってるんじゃぞ!
お前達が、儂等の為に盾になれば良かろうが!」
この貴族は、自分達が助かる事しか頭にない様である。
「チッ!知るかよ!」
傭兵隊長は、貴族に聞こえない声で、貴族に対して悪態を付いていたのだ。
この貴族に対して、傭兵隊長は命を掛ける気などは、最初から無いのだ!
それもそうである。傭兵は命が合って出来る仕事なのだ。命を張ってまで
する仕事など、戦場で高い報酬が支払われる時にしか出来ない!
こんな安い契約金で、命を張っていたら命が幾つ合っても足りはしないで
あろう!傭兵隊長は、内心でそう思っていたのだ!
「包囲の外に、傭兵団の精鋭30騎が待機している。それに合図を出したら
直ぐに正面から包囲を食い破って脱出する!」
30騎の傭兵が、何故に包囲の外に居るかと言うと、この貴族がケチであるが
為に、此処の宿屋に全員を宿泊させる事はさせなかったのだ。残りの傭兵は
と言うと、近くの安宿に詰め込んで泊めていたのが、この場合には幸いして
いたのだ。
黒の団の団員は、傭兵の数が足りないのを察しており、直ぐに残りの傭兵の
姿を探して近くの宿屋を回っていた時だった。偶然が偶然を呼んでしまい!
突発的な戦闘へと発展していたのだ。
その事を傭兵隊長は知らずに居た。それを知っていたのならば、傭兵隊長は
早々に降伏していたかも知れなかったのだ。だが、今の時点では傭兵隊長は
何も知らずに居る。そして、包囲の外で仲間が待機していると思っていたの
だったが、分隊の傭兵達は、黒の団の団員達80人を相手にしていた。
30対80では、どう考えても傭兵達に不利であった。そして、傭兵達は町中で
騎乗しており、尚更に傭兵達は不利な戦いを強いられていたのだ!
「分隊長!もう駄目です。此処は降参して命だけは助けて貰いましょうよ」
分隊長に弱気な発言をした傭兵は、次の瞬間には黒の団の団員に、槍で突き
抜かれて絶命していたのだ。降伏を口にしていた傭兵を槍で貫いた黒の団の
団員達は、傭兵達の降伏などを認める気はなかったのだ。
今回の犠牲者の中に、黒の団の副団長の弟が居た事が、彼等の理性を無くさ
せていた。黒の団の団員は、副団長に皆が敬意を払っていたのだ。それだけ
副団長は団員達から好かれていた。
その副団長の身内を死に追いやった者達を生かして、このシーランド本島から
出す気は、黒の団の団員達にはなかった!
命乞いをする傭兵達は、既に斬られていた!残るは逃げる傭兵達だけである!
その数は、当初は30騎も居たが、多勢に無勢とは此の事である。黒の団の団員
達には怪我人は居る者の死人は居なかったのだ。だが、傭兵達は既に、10人程
までに減っていたのだ。
「チッ!10分位の戦闘で、半数以下に減るとは予想外だ!傭兵団の中でも俺達
は精鋭中の精鋭だぞ!それなのに敵の奴等と来たら、それぞれが手練れ揃いと
きやがった!まったく嫌になるぜ!」
黒の団は、辺境伯家の中でも1番実戦経験がある者達である。団員達は副団長
の指南を受けており、それぞれも戦場帰りと言った経験を積んでいたのだ。
そして、腕の立つ者達を仕官させている事も大きかった。
だが、腕の立つ者と言っても数は、そこまで多くは無かったのだ。仕官させた
者達と言っても、精々が10人も居なかった。残りの者達は、譜代の家臣である
者達だ。そんな彼等を鍛えたのは、実戦経験が豊富な者達であった。
技量が同じならば、数で勝る黒の団の団員達が、傭兵達に負ける筈がなく!
時が経てば経つ程、黒の団が優勢になって行ったのだった!
そんな最中に、分隊長は決断を迫られていたのだ。
「此処で逃げるか.....いや逃げても助かる見込みはないな!そうなれば残るは!
隊長と合流してから、一気に包囲を突き破るしかない」
分隊長は、決断すると直ぐに部下達を纏めていた。そして、貴族が泊まっている
宿屋を目指して馬を走らせたのだった。馬の足と人の足では、直ぐに距離が開い
てしまい、黒の団の団員達は傭兵団の分隊を見失ってしまったのだった。
「クソッ!馬の足には勝てなね!でも、あいつ等が行く先は解ってるんだ!
焦ることは無い!副団長と合流するぞ!」
《おう!》
朝が早いとは言え、町中で此処までの戦いをすれば、騒ぎにならない筈が無く
町中では、領民達が騒ぎ出していたのだ。それを沈めて回ったのが、準貴族と
準士爵の私兵騎士団である。人数は少ないが、準男爵と準士爵の護衛としてな
らば十分な数であった。そんな彼等であったが、此度の騒動で、主人を殺され
た事で、領主の辺境伯家に協力する形を取っていたのだ。
私兵騎士団は、それぞれの人数を合わせても20人前後と言った数でしかなく、
領民が騒がないように落ち着かせる事を主にした任務に付いていた。
私兵騎士団の団長は、亡くなった準男爵の長男・準士爵の長男が勤めていたのだ。
それぞれが、赤の精霊騎士団・青の精霊騎士団と名乗っており、この名は由緒あ
る名前だったのだ。精霊戦争時に辺境伯家で共に戦った騎士団であるが、今では、
予算削減に伴って分家にあたる家の者達が、騎士団を継いでいるに過ぎなかった
のだ。
「団長!向こうから騎兵が遣ってきますぞ!?」
「黒の団の者達なのか?」
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