戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第79話 荷車と飴

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他の者達の軍事訓練は、芳乃によると建築組合と御者組合の者達だけだと
言っていたので、軍事訓練が終わるのも間もなくである。そうなれば、今
より更に忙しくなるだろう事は明白である。そうなる前に遣り残している
事を今の内に遣ってしまおうと、こうして出かけていたのだった。

インガ婆様のお店・魔道具専門店・魔法の杖に遣ってきたのは、とある
物を買う為であった。インガ婆様が使っている小型の大砲を少なくとも
20門を取り寄せて貰っていたのだ。正確には、20門も無いかもしれない
が、そこは、揃えれるだけ揃えて欲しいとお願いしていた。

なにせ、この大砲が陸地では俺達の切り札とも呼べる品物なのだ。この
大砲の火力が無ければ、シーランド銃だけで戦う羽目になるのだから、
有ると無いとでは雲泥の差があるのだ。

後は、建築組合に頼んでいる小型の荷車を取りに行けば、切り札となる
大砲も無事に入手し終える。

「好成じゃないか!今日はアレの事で来たのかい?小型の大砲だけどね
全部で15門しか手に入らなかったよ。流石に納期が短すぎてね。そこま
での生産力は無かったようだね。」

全部で15門の小型大砲を入手できただけでも、吉兆であるのだ。誰が文句
を言いますか!15門もあるだけで、どれだけの者達が助かるかは言うまで
もなかった。

「それと、大砲組合には出来上がった大砲は、造船所・ガレアスに運ぶ様に
言ってあるからね!荷物の受け取りはガレアスで、としいてくれさね!」

インガ婆様は、口は悪いが気配りが出来る人物なのだ。この様に、こちらが
頼まなくても、察して荷物を何処に運べば良いかを解っていた。俺としても
いちいち、頼まなくても思った通りの所に運んでくれるのは大助かりだった
のだ。

「それとね、私が使っている大砲も持って行きたいんじゃが、荷車を新しく
したいんだけどね、買い換えても良いかの?チラッ!」

チラッじゃないよ!何をしれっと自分の荷車を新しくしようとしてんだ!?
まぁ....代金は全て領主様に行くから、此処でインガ婆様のご機嫌を取って
置くのも1つの手かもしれないな!

建築組合に行けば、20門の大砲に使う為の荷車の余りが有りますから、
建築組合に取りに行きましょうか!

「どうせ此の後に建築組合に行くんじゃろ?ならば、私も連れて行って
くれ物は次いでじゃろ!」

インガ婆様は、1人で行くのが嫌だから俺と一緒に、建築組合に行きた
いと言っているのだろうな!俺はインガ婆様の我が侭に付き合う事にし
そのまま、2人で建築組合に出向くことになったのだ。

「これはこれは、好成さんじゃないですか!今日は、どの用件で来たの
ですかね?」

建築組合の受付で待っていたら、奥から出てきた人物は、あの棟梁監督
だったのだ。俺は少しだが、顔が引きってしまい、腰が引けていたのだ
そんな俺を見たインガ婆様は、俺の腰を思いっきり叩くと、自分の用件
を早く言えと言う風な顔をしていたのだ。

俺は急いで、棟梁監督に頼んでいた荷車の件を尋ねたのだった。
以前に依頼した20台の荷車は、出来上がってますかね?

「その件ですね!その事で急いで、お知らせせねばならない事ありまて、
此方から好成さんの方に、使いを出そうとしていた所なのです!その件
で使う予定の荷車なんですけど、20台を頼まれましたが、何せ納期がで
すね短すぎて、20台も作る事が出来ませんでした。出来上がった荷車な
んですけど、16台が限界でした。」

俺は残りの荷車は、後日にも造船所・ガレアスに運んで欲しいと頼み、
そこで、1つ追加を出したのだった。それはと言うと、荷車を1台だけ
余分に作って貰いたいと言う事であった。インガ婆様の我が侭に付き合
う形となってしまうが、これは仕方の無い1台なのだ。

「それでは、残りの5台は完成したら、造船所・ガレアスに運び込めば
宜しいのですね!?それだと、此方としても大変に助かります」

棟梁監督は、頼まれた期日までに、全部の荷車を納品できない事を気に
していた様で、俺の提案が棟梁監督の救いになったみたいだった。

それと荷車は、まだ此方にありますかね?あるのならば見せて貰う事は
できますか?

俺の無理なお願いに対して、棟梁監督は優しい顔をしながら、良いですよ
と言いながら、俺達を倉庫に案内してくれたのだった。

「此処の倉庫に荷車を収納しております。」

そう言うと、棟梁監督は重そうな倉庫の扉を開け放つと、中は薄暗かった
のだが、直ぐに魔力ライトなる魔道具のスイッチをいれると、倉庫の中は
さっきまでの暗さは無くなり、直ぐに倉庫の室内を全て照らし出していた
のだ。

「うほぉ~どれも此れも、素晴らしい荷車の出来じゃな!どれにするか
迷ってしまうさね!此れも良いの!いやいや......此れが1番の出来では
ないかの?」

「ほう!お目が高いですね!建築組合の1番の腕利きが作った荷車を
探し当てるとは、貴女様はかなりの目利きの持ち主とお見受けします」

「別に褒められても何も出んぞ!?」

そんな事を言いながら、インガ婆様はスカートのポケットから、飴玉を
取り出すと、「飴ちゃんいるかい?」っと、訊いていたのだ。

褒めたら、ちゃんと物が出るじゃないか!

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