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第77話 生産量と改良点
しおりを挟む道具雑貨店・匠に遣って来ているのだが、来式銃に取り付けるベルト用の
金具を探すのに苦労していた。秋は諦めずに金物を探し続けた結果、フック
式のベルトでも使える金物をようやく見つけ出したのだった。
「好成サマ、この金物を銃身の持つ場所と銃底に固定して取り付けても、
宜しいですかね?見た目も悪くないと思います。町の警備兵の人達が腰から
下げている剣みたく、品がある様に見せたいです」
秋が言っている警備兵の剣と言うのは、皮のベルトに剣を挿して吊り下げて
いるのだが、その事を言っているのだ。確かに警備兵の剣ベルトは、見た目
にも品があり、高級感を醸し出しているのは明らかである。秋は来式銃にも
高級感と品を出したいと言っているのだろう。
俺は高級感を出しても、所詮は戦いの道具でしかないと言うが、秋は頑とし
て聞き入れなかった。此処は俺が折れる形で、秋の言っている事をするしか
ないのだろうと思い、俺は秋の意見を聞き届けたのだった。
「静ちゃん、新しい木材に釘で固定しても、木材は割れたりしないかな?」
「んっ.....どうだろう?遣ってみないと解んないわよ!?」
秋と静は、木材に釘を刺しても大丈夫なのかと考えていたが、初めて使う木材
なのだから、遣って見ない事には何も解らないのだ。物は試しなのである!
遣ってみて駄目ならば、違う木材で再度、試して見れば良い事なのだ。
ストック式の来式銃の木材は、全てクルミの木を使った物にする事になったので
今までの使っていた木材は、取引を中止してクルミの木を今後は仕入れる事を匠
の店主さんに話をしたのだった。
「今までの木材は、オレーク式でも使っているから、木材を変えても問題は起き
はしないぞ!余った木材は全てオレーク式の材料として、黒猫屋に引き取って貰
らう事にするから、木材の事は心配するな!」
オレーク式銃と来式銃で使っている木材は、今までは一緒の木材を使っていたの
だ。この事が今回の木材の変更で、問題になる事は無く、返ってオレーク式銃の
木材の確保が容易になった事で、オレーク式銃の生産効率が上がるはずである。
今までは両方に同じ木材を使っていたから、作れる量は限られていたのだが、今回
の来式銃の木材変更で、作れる量に制限が無くなったのだ。此の事はオレーク式銃
に取っては転機とも言える事だった。
だが、来式銃も木材変更したおかげで、生産量の制限は無くなったのだ。此の事は
お互いに良い事尽くめでしかなかった。
此れまでの来式銃の改良点は、魔力球を5型から4型に変える事に始まり、望遠鏡を
照準器の部分に取り付ける事で、命中精度を上げる事に成功したのと、ストックを
取り付けた事による射撃の改善ならびに、命中精度上昇に成功するだろう。
それと、まだ試作段階だが、今の銃身より更に銃身を延ばす事で、射撃距離を延ばす事
を考えている。これに成功すれば、来式銃の命中精度は、オレーク式を軽く凌ぐ性能に
なるのだ。だが、魔力球4型にしたから、オレーク式銃みたく早い射撃速度は維持でき
ないのだった。それと、狭い室内なのでも来式銃は、オレーク式銃に劣る事が判明している。
今でも来式銃は銃身がオレーク式銃より長いのに、更に銃身を長くすれば室内での
使用などは、到底だが出来ないのだ。長物の槍で室内で戦うのと変わらないのだ。
それを考えると、室内など狭い空間で使う銃を専用で開発した方が早いだろう!
御者組合の方から、御者達が自衛で使える銃の開発を頼まれていた事を思い出した
のだが、グローブ式銃ほどの短い銃が良いと言われているので、そこも纏めてから
考えて試作品を作ってみよう!
「好成様、そろそろ黒猫屋に戻りませんと、戦の準備が進みませぬ!」
芳乃から催促されて、考えに耽っていたのだが、現実に戻される形になったのである。
色々と遣る事が多くなり過ぎていて、考えが纏まらない時が多々あったのだ。
もう少し落ち着いてから、色々と手を伸ばしても遅くは無いのだが、いかんせん!
時は待ってはくれなかった。
出来る事を同時進行で進めなければ、今の仕事量は一向に減らないのだ。もう少し
すれば、来式銃とグローブ式銃の生産量が目標に届くから、そうなれば現地に戻ってから、
ゆっくり......出来るはずも無いな!逆に現地に戻れば、今以上の仕事量に
なるだろう事は明白である!
それでも、俺はアンジェの悲しそうな横顔を忘れた訳ではない!今は忙しかろうが
辛かろうが、泣き言を居ってる場合ではない。悲しみに暮れた人々を助ける為に、
そして、自分達の将来の為に、今が踏ん張り時である!
3人共、そろそろ帰って仕事に取り掛かるぞ!寄り道なんかする暇も無いからな!
「寄り道をしたいのは、静ちゃんと秋ちゃんだけですよ!」
「まぁ!芳乃様ったら、私達だけでは無い筈ですよ!芳乃様だってホイップに
寄って見たいはずですよね?」
「芳乃サマも甘い物が大好きだものね」
「2人共、いい加減にしなさい!私は帰り道に立ち寄るだけです!」
芳乃よ.....甘い物ばっかり食べると、太ってしまうぞ!
「きっぃ!!!」
芳乃から凄い睨まれたので、俺は急いで明後日の方向を向き、素知らぬフリをしな
がら歩いていたのだった。
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