戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第71話 鶏肉と妹

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マリネを食べ終わったら、続いて天麩羅がテーブルに運ばれて来たのだった。
山菜と野菜の揚げ物と言う物が、俺的には非常に美味しかったが、静や秋には
不人気であった。

「野菜より鶏肉の天麩羅が美味しいですよ!」

秋は野菜より肉が、好きなのだろうな!俺の分の鶏肉の天麩羅も秋に分けて
あげると、秋は物凄く良い表情を浮かべながら食べるのだった。そこまで、
鶏肉の天麩羅が気に入ったのかと思ったが、元々は肉が好きなのかもしれな
な?

静も芳乃も、鶏肉の天麩羅を食べる速度は秋に負けてないな、3人はあっと
言う間に、鶏肉を食べ尽してしまったのだった。俺とか2~3切れしか食べれ
なかった始末だ。そんな中で、唯一余っていたのは芋の天麩羅だったのだ。

芋の天麩羅をツユではなく、塩を付けて食べると、これが何とも言えない味わ
いになり、何個でも食べられてしまう程に、癖になる味なのだ。3人娘達は、
まだ芋の天麩羅の味に気が付いておらず、芋だけが余っている状態だったのが
幸いしていた。3人娘に食べ尽くされる前に俺が食べ尽くしてやる!

食べ過ぎて、もう動きたくない!そんな状況になっている。だが、この後には
仕事が残っているのだから、働かなくてはならないのだ。もう宿に帰ってから
ごろごろして居たいのだが、そうも行かなかった!

俺達がマリネを食べ終わった頃に、漁師頭の頭が店に配達に来ていて、ばったり
会ってしまったのだった。

「よう!お前さん此処の店に食べに来ていたのか?此処の魚は全て俺の家の者が
収めているから、鮮度が他とは違うだろ?どれを食べても絶品だろう!」

頭の家の者が、漁で捕ってきた魚を店に出しているのだと、頭は自慢していたのだ
が、確かに此処の店で食べた魚は旨くて美味しい魚だった。自慢する気持ちは解る
これだけ旨い魚を収めているのだからな、自慢もしたくなるだろう。

「ところでよ!この前、話していた講習会の話なんだが、この後に行っても良いのか?
駄目ならば違う日にするけども、良いのならば午後に黒猫屋に行くからよ!」

勿論、答えは大丈夫だと答えた!人数が多くても問題はない!何故ならば、黒猫屋の
中庭や裏手にある広場を借りているからだ。黒猫屋の裏の広場は、大きな庄屋の
家程の広さだったのだ。それだけ広ければ、大人の男でも20人は入れる広さである
のだ。

「そうか、そんなに広い場所を確保してくれているならば、船頭達を全員連れて行っても
大丈夫そうだな?ところでよ、その後ろに居る娘さん達は、お前さんの彼女なのか?」

彼女と言うものは解らなかったが、3人共に俺の嫁になる娘達だと、頭には紹介し
たのだった。

「ちっ.....もう結婚相手がいるのかよ!もしも結婚相手が居なければ、俺の妹を紹介
してやろうと思ったのによ!居るのならばしかたね!」

おいおい!頭よ、お前さんの妹と言うと歳は何歳なんだい?頭は、どうみても30歳
以上に見えるのだが、もしかして、妹さんも30歳なのかい?

「ばか言うんじゃね!俺の末っ子の妹は、まだ19歳だ!」

何でも頭に訊いた話では、頭の妹さんには許婚が居たそうなのだが、数ヶ月前の話
になる。その許婚の相手と言うのは、違う船団の頭の息子だったそうで、その船団
が漁に出たまま帰らなかったそうなのだ。そこで頭の船団が探しに行くと、船団の
残骸が海に浮かんでおり、妹さんの許婚の息子も生存は絶望と判断されてしまった
とか言う話だ。

漁師組合と言うのは、頭だけがユニオンの組合に所属しており、船頭達は頭に雇われ
ている労働者に過ぎないのだとか、だから、許婚だった相手は頭の妹さんには、
とても良い話であったのだが、不幸な事は何時起こるか解らないのだった。

妹さんも許婚である息子の事を好いていて、結婚すればとても仲の良い夫婦になる
だろうと、周りでは話題になるくらいの中であったと言う話である。それなのに、
許婚が漁から戻らないのだ。妹さんの悲しみは人一倍強く、頭は何として妹さんに
立ち直って貰いたいと話していた。

そこで白羽の矢が立ったのが俺であったのだ。だが、俺には結婚を決めた相手が居る
と知った頭は、残念そうな顔を浮かべていたのだった。力になれなくてすまない
俺には頭の力になってやる事は出来ない!そう頭に言うと、頭も駄目もとで訊いた
だけだとか言って、話を変えたのだった。

ふっと、俺の脳裏にある人物の事が思い浮かんだのだった。嫁が欲しいのだが、
嫁に来てくれる娘が居なくて、とても困っているのだと話していた人物に心当たりが
あると頭に言うと、頭は俺の肩を掴み、逃がすまいと力強く俺を掴んで、相手の名前を
訊いたのだった。

その相手と言うのは、山奥の村に住んでいるが、家は裕福であり、権力も村ではあるのだが、
顔は普通だった。だが、性格は人情に厚くあり、叔父と叔母の遺骸を回収したいと言う従兄弟
に協力する程の人物であったのだ。その事を頭に伝えると、頭は妹を連れて黒猫屋に来ると言い
出していた。

いやいや!黒猫屋はお見合いをする場所ではないからね!?

「ばかやろう!妹の悲しい顔をこれ以上続けさせない為ならば、どんな事でもする
って決めたんだよ!だから、非常識でも馬鹿だと罵られようと構わん!」

頭って妹が大好きなんだな!もしも妹さんを泣かせる様な事をすれば、結婚相手の
命は無いかもしれない。
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